↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
七章 異世界とは魔人達の居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

694/722

13話 古奈月ささらとエルララルラ.2


 僕の体重は、四十五キログラム。落下した高さは雲の下辺りだったから、大体高度二千メートルと仮定しよう。

 高度、速度、重量、頑丈な体。

 この四つの要素が加わって、それをそのまま人に当てたなら、一体どれ程の衝撃になるか。そんなの落ちた側も、当たった側も、確実に即死レベルの衝撃になるだろう。

 

「あいたたっ、姿勢しくじって頭からとかっ、たん瘤出来たらどうするんだよ」


 しかしここは異世界で、常識は通じない。


「頭がぐわんぐわんしますぅ。急に何ですかぁーっ、退いて下さいよぉーっ」


 正直驚いた。空から自由落下して、下に居た人に激突した時、その人は僕と同じぐらい体が硬く、ペシャンコになるどころか、落下の衝撃がそのまま地面に逃げたのだ。


「いや、何で死んでないの」


「驚きはしましたよぉ? 退いて下さいよぉ、うるちゃんを追うんですからぁ」


「うる、ちゃん?」


 その言葉を聞いて、理解した。以前円堂さんの通信機から、漏れ聞こえて来た言葉。円堂さんの悲鳴と、うるちゃんと言う不気味な声。


「えっと……貴女が暴力の化身の異名を持つ、女帝エルララルラで、間違いないですか?」


 今現在、僕は倒れた女の背に跨る様にして、マウントを取っている状態だ。返答次第によってはこのまま、後頭部をぶん殴る。


「女帝は死にましたぁ。今はただのぉ、エルララルラなんですよぉ。貴女は誰ですかぁ?」


 確定──こいつが、この女が、円堂さんを捕らえていたぶり、さっきまでアンジィを襲っていた、エルララルラに間違いない。

 自然と拳に力が入る。

 

「僕は古奈月ささらって言います。円堂さんの仲間だと言えば、分かりますか?」

 

「うるちゃんは、私だけの物ですよぉ。だからぁ、仲間なんて居なくても良いんですぅ」


「はいはい、そうですかっ!!」


 エルララルラの後頭部目掛けて、勢い良く拳を振り下ろすと、ゴズンッ──と地面から異様な音が鳴り響いた。

 エルララルラは無傷のまま。

 下の地面だけが、陥没している。

 

「うぅ、おでこがジンジンしますぅ。何でこんな事するんですかぁ? 私は貴女にぃ、何もしてないですよねぇ?」


 このエルララルラという女、どこか変だ。いや、変なのは噂で聞いていたけど、その噂の女とこの女が一致しない。


「アンジィが、通信機で言っていた通りですか」


「退いて下さいよぉ。どうして貴女は、そんなに重たいんですかぁ? 動けませんよぉ」


「僕が退いたら、暴れるでしょうに」


 これなら落下する時に、もっと勢いを付けるべきでしたね。まさか僕の力でも、エルララルラにダメージを与えられないなんて。


「打撃が駄目となると──これはどうです!」


「むぐぅっ!?」


 背中に乗ったままからの、裸絞め。


「苦しいっ、ですよぅっ」


「アンジィの全力を防ぎ、僕の打撃が通じなくても、力と頑丈さは負けませんからねっ!」


「ぬむうううううっ」


 エルララルラは、暴力の化身の二つ名を持ってはいるが、体術に関しては素人。首を絞めている僕の腕を掴む力は、確かに異常だけど、振り解かれる程ではない。


「このままっ! 落ちろおおおおおおおおっ!」


「放じでっでぇっ、言っでるでじょぉっ!」


「なっ、嘘でしょ!?」


 僕のスキル、"過重"を受けているのに、絞められながらも立てるとかっ、本当に化物だよねこの女。アンジィが倒せない訳だよ。


「でもっ、立たせる訳ないだろ!」


 背中はこっちが取っている。だからこそ即座に足を絡めて重心を崩し、「あぅっ!?」とエルララルラを地面に釘付けにする。


「ふっ、ふっ、苦じぃでずぅ」


「完璧に決まってるのにっ、まだ落ちないとかあっ! 首の筋肉まで化物なのかなあっ!」


「ばなじっ、でえええええええええっ!!」


「んなっ!? 子供過ぎるでしょ!」


 それは、幼い子が駄々を捏ねる時に使う、両手足を振り回すだけの、なんて事のない動き。しかしそれを、この暴力の化身が行ったなら、どうなってしまうのか。

 

「ぐるじぃんでずよおおおおおおおおっ!!」


「ぐっ、この馬鹿力があっ! 暴れるなってのおおおおおおおおおおおおっ!」


 僕が落ちた衝撃で作られたクレーターが、エルララルラの駄々っ子で更に広がっていき、地面に亀裂までもが作られていく。

 このままだと不味い。

 力で負けてないと思っていたのに、エルララルラのこの力ときたら、少しでも気を抜くと、絞めている腕が解かれてしまう。


「うるじゃあああああああああんっ!」


「このっ! どうすればっ!」


 暴れ狂うエルララルラの首を絞め、どう落としたものかと思考を巡らせていたその時──「そのまま押さえていろ!」と誰かの声が聞こえ、クレーターの上に目を向けると、知らない女性が飛び込んで来た。


「んがあっ!?」


 その女性が、エルララルラの口に何かを突っ込むと、徐々に暴れる力が弱くなり、「ぐっ、ゔるっ…ぢゃ……」と、そのまま動かなくなった。


「っ……死んだ?」


「即効性の致死毒なのだが……死んではいないようだな」


「致死毒なのに?」


 ゆっくりとエルララルラの首から腕を放し、その顔を見ると──確かに。静かな呼吸と共に、胸もゆっくりと動いている。


「たっ、助かったぁぁぁ……」


 あと少し暴れられていたら、絞めが解かれ、最悪殴り合いの消耗戦になっていた。こんな化物となんて、殴り合いたくない。


「この女、私が村に来て直ぐに、突然襲って来たのだが……何者なのだ?」


「アレス様! ご無事ですか!」


 この二人は一体誰だろうか。一人は、お師様と似たエルフっぽい人で、もう一人は、どこからどう見ても子供に見える。


「うぅん……この女は、ここから南にある国の女帝で、エルララルラって言う化物です」


「女帝? この化物は女帝なのか?」


「一応ですけどね……っとそうだ、さっきは助かりました。お陰で命拾いしましたよ」


 この人が居なければ、こうも簡単に意識を奪う事が出来なかったし、先ずは感謝しないと。

 

「構わん。降り掛かった火の粉に、対処したまでだ。場所の確認も出来たしな」


「アレス様。どうやら相当、北に来ていたようですね。このまま北上しますか?」


「このまま北に行くと、僕が住んでいるレッツァマーダに行けますよ。と言っても、一月ほど歩く必要がありますけどね」


 アレスというエルフは、腕を組んで何かを考え込んでいるけど、この二人はどこから来たんだ? エルララルラを知らないから、ノブストンの者ではないし、その更に南にある、アッジスノード王国からだろうか。


「ふむ……一つ尋ねても良いか」


「良いですよ」


「サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティという男の名に、聞き覚えはないか?」


 サハっ、長い名前だなぁ。そんなに長い名前の人なんて、実在するのか? アレスの目は本気みたいだし、ちゃんと答えておこうかな。


「これでも、国の幹部的な役職だから、色々と知ってるけどさ。そんなに名前が長い人なんて、聞いた事がないよ」


「そうか……情報感謝する。私達はもう行くが、そこの女をどうするつもりだ? 剣で斬っても傷一つ付かない奴だぞ」


「寝ている間に、色々と試しますよ」


 首の筋肉が異常過ぎて、絞める事も折る事も出来なかった。それでもまだ、手脚の関節は試していないし、折れるなら折っておきたい。


「念の為、これを持っておけ。影のっ……私特製の毒薬だ。そこの女の顔色が、白っぽくなった時点で、再度飲ませると良い」


「助かります……レッツァマーダ魔導国に来て頂ければ、この御礼は必ずしますので」


「ああ。その時は、世話になろう」


「失礼致します」


 そう言って二人は、東に向かって歩いて行ってしまった。出来れば北に進んで、国に来て欲しかったんだけど……仕方ないか。


「それじゃあ僕は、これの対処だね」


 もしも関節すら折れなければ、毒を飲ませつつ、ノブストンへと連れて行くしかない。殺せる手段がないとか、意味が分からないや。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。