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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
七章 異世界とは魔人達の居る世界

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13話 古奈月ささらとエルララルラ.1



 一つだけ言いたい。

 十五年もの人生の間に、三度の自由落下とか、もしも神様が居るのなら、僕になにをさせてるんだと問い詰めて、その顔面にグーパンしたいです。

 こうっ、腰を入れて殴ります。

 僕は普通の、ごくごく平凡な女の子なのに、どうしてこんな殺伐とした世界に来てまで、縄無しバンジーをさせられているのか。

 

 一度目は、中学に入って間もない頃。僕に因縁を付け、苛めて来た十人程度の不良グループを、全員病院送りにした。その中に、少しやんちゃな人の姉妹が居て、次は五十人に囲まれ、流石に敵わずボコボコにされた後に、バイクでぶんぶん峠道からポイっとされた。


 上手く木々の上に落ちたから、多少の擦り傷で済んだけれど、本当に死ぬかと思った。そして二度目は、その直ぐ後に訪れた。


 山を延々と彷徨っていたら、川が流れていたので、『水分だああああああ!』と勢いよく飛び込んでからの──突然空に投げ出されました。

 川に飛び込んだのに、空に居たんだ。

 何がなんだか分からないのに、落ちている最中どこからかビームみたいなのが飛んで来て、何回も当たったけど、アレは本当に痛かった。


 そしてそのまま頭から、砂漠にズボっと見事に突き刺さりました。魔物が通った後のふかふかな砂漠だったお陰で、衝撃は殆どなく、ただひたすらに熱かった。

 焼きささらとか、勘弁して欲しい。

 砂漠の砂の熱さを、身を持って体験したよ。


 んで、抜け出そうとジタバタしてたら、通りかかった行商の人達が助けてくれて、レッツァマーダ魔導国まで、連れて行ってくれたんだ。

 

 お師様と出会い、同郷のアンジィや円堂さん、カリアゲとも出会い、ここがどういった場所でどういった世界なのかを、知る事が出来た。

 異世界だってさ、ビックリだよ。

 ゲームみたいに、レベルやステータスがあるから、最初の内は現実味がなかったけど、魔物と何度も戦っているうちに、これは現実なんだと、死ぬ世界なんだと理解する事が出来た。


 人の命は重いが、簡単に死ぬ世界。

 魔物に襲われて、食べられて死ぬ。

 他国と戦争になって、戦って死ぬ。

 野盗に襲われて、斬られて死ぬ。

 砂漠で迷って、干涸びて死ぬ。

 死が常に隣に居る、巫山戯た異世界だ。


 こんな異世界で、平凡な女の子である、この僕が生き抜く為には、何が必要かを考えた。考えに考えて、頭を爆発させて至った答えが──"丈夫な体と腕力を付けよう"だった。

 健康は大事だもんね。


 幸いなのか、時間はたっぷりあった。

 腕立て伏せ二千回、腹筋五千回、スクワット二千回、反復横跳びを二時間。これを一日のノルマに設定して、その合間に魔物と戦った。

 最初の内は、負けましたとも。

 悔しくて悔しくて、包帯を巻いたまま運動を続け、血反吐を吐いても動き続けて、恐竜の様な見た目の、ツイバミという魔物に勝てたのは、異世界に来て一月経った頃だった。


 気配を消して、近付く事を覚えた。

 一撃で仕留める為の、急所も見付けた。

 攻撃を受けても、傷が付かなくなった。

 お師様からも──『頼むから、僕を殴らないでくれよ? この分身が消し飛んじゃうからさ』と、ドン引きされる程鍛えに鍛え抜き、久々に鏡を見たら、自分でもドン引きした。


 細身の体なのに、筋肉が凄いのなんの。胸すら筋肉に見える程って、正直……やり過ぎた感が凄かった。普通の女の子なのにさ。

 

 そうして一年が過ぎる頃には、ツイバミをデコピンで粉々に砕き、砂漠の魔物である、巨大ミミズみたいな姿をした、ウォームビリムですら、素手で粉砕出来る様になった。

 お師様が、諦めた顔をしていた。

 ウォームビリムは柔軟な体を持ち、打撃は一切通じないとされていた──らしい。殴って粉砕出来たのだから、その話が嘘だったのだ。


 そんなこんなで、異世界で過ごして二年が経ち、日々をちょっとした運動と、お師様のお手伝いをして過ごしていたら、三度目の空の旅。

 緊急事態なのも分かる。

 円堂さんを見付けて保護したアンジィが、エルララルラに襲われてピンチみたいだし、出来る事なら助けたいと思っていた。


『煩いぞお師匠様! こっちは今っ、エルララルラの投擲に襲われているんだ! 兎留美だけでも良いから、さっさと助けろ!』


 あのいつも冷静なアンジィにしては珍しく、通信機から怒りの言葉が聞こえたけど、百パーお師様が悪いだろう。


「っ……分かった。今直ぐそっちに、古奈月ちゃんを送るから、機を見て逃げなさい」


 このお師様は、何を言っているのか。


「あの空を守る魔王が居ないのなら、この大陸に障害はないさ。ほら古奈月ちゃん、準備してって……そんな嫌な顔しなくても」


 嫌な顔というか、嫌な予感がするだけです。このお師様は、頭の大事なネジが外れている節があり、時折り馬鹿な事をするからだ。


「あのぉ、お師様? 一体何をする気なのさ?」


「未だ、世界の壁を突破する事は叶わないけれど、アンジィを起点にすれば、この程度の距離なら送れるのさ」


「起点? 送るって?」


「円堂君を元の世界に送り返す為に、研究してるんだけどね。行くよ──"送還転移"!」


 と、こんな訳ですよ。酷いと思いません? 普通の女の子を、意味不明な魔法か何かで夜空に放置とか……星空が綺麗だなぁ。

 うん、重力が仕事をし始めちゃった。

 結構地面まで距離があるなぁ。

 帰ったら絶対に、お師様を殴ろう。


「お師様の馬鹿ああああああああああああっ!」


 真下に人の姿が見える。

 何故か瓦礫を手に持ち、見事な投球フォームをしているけれど、その位置は不味いよね。

 激突コース真っしぐら。

 それでも、あのお師様がこの僕を、この夜空に送ったという事は、真下の人は敵である可能性が非常に高い。


 違ったらちゃんと、お墓を作って謝ろう。今は緊急事態なんだ。だからこそ僕は、その人の脳天目掛け、ドゴンッ──と地面に巨大なクレーターを作りながら、激突をかました。


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