22話 進撃乱戦あいつはどこに.2
2026/06/28 改稿
背後に付いて来ていた人達は、門の中には入れて貰えず、しぶしぶ俺達の五人だけで、司教名乗った爺さんに、案内をされている。
「こちらが、"教皇様"が植えられた、ミルトルトの木で御座います。この木から採れる樹液は、貴重な薬の材料となるのですよ」
うん、観光客じゃないっての……いや、俺とミルンは元々、王都観光しに来ただけだから、間違ってはいないのか。
「あちらの花も、教皇様が大層気に入っておられ、祈りのない日などは、よくお手入れをなされておられるのです」
にしてもこの爺さん。さっきからずっと教皇様教皇様と、何アピールしてるの? アレか、俺達は教皇派とでも、言いたいのか。
「えっと、ゼンビル司教だっけ? さっさと、オーグドって大司教の所に、案内してくれ。こちとら我慢の限界は、とうに過ぎてるんだ」
村長の顔には、血管が浮かび上がり、リティナはポキポキと骨を鳴らして、ニアノールさんはナイフを握っている。そしてミルンは──「暴れるのっ、走り回るのっ」と、俺の肩の上から、飛び出さんばかりに興奮中。
「っ……これは、失礼致しました」
「お前ら教会が、一枚岩じゃない事ぐらい分かるっての。俺達の目的は、ザルブに指示を出していた、"大司教"だけだ」
もしもあのザルブの放火に、教皇が関わっているのならば、話は変わってくるだろうが、先ずは大司教をぶん殴る。
「教皇様、枢機卿様は、遠方にて視察を行なっており、この度の一件には、関わっていない事を、先にお伝えしたく……」
「頭には入れておこう。んで、その一件を引き起こした奴は、あの建物にいるのか?」
城と見紛う程の、巨大な建造物。恐らくはあれが、アルテラ教の教会……あの感じだと、大聖堂がしっくりくるな。
「あの者は、大勢の民衆を引き連れた、聖女様が来たとしり、自らの拠点へと逃げたのです。まったく、愚かな男で御座いますよ」
「拠点? 自宅って事か?」
「いいえ。ああ、丁度ここからなら、見える位置かと。大聖堂の奥をご覧下され」
目の前には、巨大な大聖堂。そして、その左側の小道を、真っ直ぐと見ていくと──教会の敷地内なのに、なぜか砦らしきモノが見える。
「……」
「あの者は、腐っても大貴族の、血縁に御座いますからな。前王の時代にあんな物を建て、好き勝手やっておるのですよ」
「……成程ね」
この爺さんが、こうも俺達をすんなりと、教会の敷地内に入れた理由が、なんとなくだけど分かってきた。
「あんたにとっての"邪魔者"を、潰せってか?」
「……そう思って頂いても、結構で御座います」
派閥間争いに、利用する気満々じゃん。この爺さんが、オーグドっていう大司教じゃないだろうな……結構腹黒い爺さんだぞ。
「流にーちゃん。その爺さんは、大司教やないで。大司教は、オークみたいな見た目やねん」
「おいコラっ、お前何喋ってんの」
「ここまで来たら、もうええやろ。おいコラ爺さん……ウチは本気でキレとんねん。教会の者やったら、そん意味分かるやろ」
聖女リティナが、本気で怒る事の意味。俺にはまったく分からんが、司教の爺さんの顔が、サ──っと青褪めている。
「なあリティナ、どういう事だ?」
「なんや流にーちゃん、気付かんか? この国で唯一、致命傷の傷を負うても治せるのが、この聖女である、リティナ様やで」
「ああ……そういえば、そうか」
俺はまだ、見た事はないが、傷を治したりする魔法か、それに似た何かは有るのだろうが、瀕死の重症までは治せない。しかしリティナは、それすらも治す。切断された腕まで生やす程の、規格外の力の持ち主だ。
「本当なら、教会が敵に回したくない奴、ナンバーワンの存在じゃん」
「ほんまやで。もしウチの家族を襲ったんが、アルテラ教の総意やったら……」
リティナの顔が怖い。特殊メイクが落ちてきており、怒りの顔と合わさって、見た事のない生物になっている。
「司教とやら。大司教は間違いなく、あの砦に居るのだな? 嘘ではなかろうな……」
「逃げているところを、この目で見ましたので、間違いないかと」
「うむっ。であれば、流君。あの砦の中に入り、証拠とやらを探すのであるぞ」
どうやら村長も、我慢の限界のようだ。ミウとメオを拐った奴の親玉が、あの砦のに居るのだから、そりゃそうなるわ。
「……もしかしてだけど、大司教の動きが遅かったのって、爺さんが何かしたのか?」
「さあ……どうでしょうな」
やっぱりこの爺さん、腹黒だなぁ。
冒険者ギルドにビラ作成して、ミルンに配らせたり、あーだこーだしたけども、妨害らしい妨害を、全く受けなかった。
いくらリティナが、この王都で絶大な人気を得ているとしても、上手く行き過ぎてるんだ。気味が悪いとまでは言わないが、なんかスッキリしないんだよなぁ。
「まっ、大司教潰してスッキリすれば、俺的には他がどうだろうと、気にしないけどな」
「あの砦に攻める?」
「そうだぞミルン。大司教を捕まえるついでに、証拠作……証拠も探さないとな」
遠くに見える、砦を眺める。
「なあ爺さん。あそこの砦に、兵士とかは居たりするのか? そこんとこ聞きたいんだけど」
「大司教の雇った者達が、常駐しております。数までは……把握出来ておりません」
「私兵が居るのかぁ」
左を見ると、リティナが目をギラつかせ、ニアノールさんは、ナイフを握って満面の笑みを浮かべ、右を見ると、村長が筋肉を膨らませて、白い歯を見せている。
「んしょっ、暴れて良い?」
肩から下りたミルンは、斧をブンブンとスイングしながら、尻尾を振り振りヤル気満々。
「ふむふむ……」
元騎士団副団長の、筋肉ヘラクレス。
関西風やさぐれ聖女の、リティナ。
暗殺系猫耳メイドの、ニアノールさん。
肉食系ケモ耳幼女の、ミルン。
特にケモ耳ミルンの背後には、この国の女王が付いているという、素敵なオマケ付き。
「そして、意味不明な魔法を撃てる、中年男の俺ですよっと……俺だけ普通のおっさんじゃん」
「お父さんお父さん」
「なんだミルン?」
「冗談は匂いだけにするのっ」
それは暗に、俺の体臭がヤバいって言ってるのかな? 中年なんだから勘弁して欲しいというか、そこまで言うのなら、なんでミルンは、俺の匂いを嗅ぎまくっているのだろうか。
「よしっ……行こうか」
「お父さんが拗ねたっ」




