13話 皆んなで楽しくピクニック.4
ガリ細神官おっちゃんを残して、砦内に侵入したものの大司教が見つからない。
それにしても外から見たら小さかったけど結構広い砦だ…無駄に部屋も多いし。
「なかなかみつからない」
そうだよなぁ…そもそも大司教って奴の顔も知らないし、片っ端から部屋開けて金目の物とかは回収してるけど、やっぱり一番上か地下かどっちかだよなぁ、全部粉微塵にしようかな。
「流君、それだと意味が無いぞ!」
分かってるよ村長。
ちゃんと大司教に直接ミルンの股間撲滅パンチを御見舞いしなきゃだな。
「そうです流さん。細切れにしないとぉ」
「細切れはあかんよニア。せめて輪切やな!」
いや、言ってる事同じだからね二人とも? あとミルンさんや、俺の肩の上で斧を振るのをやめなさい。俺の頭上で風が吹いてて恐いからね。
ぼやきながら進んでいるとなんか…凄い開けた部屋に来た。王城で言うなら謁見室だろうか。目線の先には一段高くなった場所に、趣味の悪いなんか高そうな宝石が山程あしらわれた豪奢な椅子があり、誰も居ない。
あぁ緊張して膀胱がっ急に!?
「なんかめっちゃ尿意がきてるな。トイレどこにあるんだ…?」
「おとうさんあっち! もらしちゃだめー」
おおミルン有難うな。
趣味の悪い椅子がある右奥、そこにトイレであろう小さめの扉があったぞ良し良し。
「ちょっと行ってくるからミルンは降りて、村長、ニアノールさんは周囲の警戒をしつつ、誰か来たら呼んでくれ」
「ウチは無いの?」
リティナは一人漫才で!
「なんでやねん!?」
「わかったおとうさん!」
やっぱり敬礼みたいなポーズ…最近よくするけど、どこで覚えたのかは知らないが了解って事だな行って来る!
俺は小走りでトイレらしき扉へ向かい、勢いよくトイレーっと開けるとそこに。
プギィイと鼻を鳴らし、顔は大きく、眼がデカい。そこから汗か脂か分から無い程の汁を溢し、身体は脂肪豊かな贅肉の肥満を超えた大肥満。肥え太った体には二本の太い脚が生え、その眼が驚きにこっちを見た!?
見つめ合う一人と一匹。
その一瞬の間に永遠の時を感じながら、豚野郎が口を開らきーーー
「ボイリングウォーターアアアアアアアアア!」
「なんだ貴さまぎゅあああああああああ!?」
ーーーきかけて、とっさに昔テレビで観た漫才コントの熱湯風呂が頭をよぎり、それを魔法で出すと…風呂じゃない。
うん。便座から熱湯が噴き出してジェット噴射されて尻に当たる事を想像してみたら良いと思うよ…誰に説明しているんだ?
「プゴぎゃああああああああああああああ!?」
うわぁ、熱湯が尻に当たって体浮いてるよ。
おっミルン見てみろ豚野郎が飛んでるぞ。
「ピギャぁああああああああああああああ!?」
この豚野郎…豚?
なんで服着てるんだ? 無駄に高そうな。
人か? いやどうみても豚野郎だよなぁ。
えっミルンこれが人だって? 違うだろ? 臭いが人…臭い?
「ああああぁ……」
あっ死んだ。
いや、気絶したのか? 水圧弱くなってきたな。
ゆっくりと飛行機の着陸みたいに降りて来て、はいそのまま便座へ着陸成功しましたー。
「ぶっ…ギッギザまらっなっんブィッ…」
おっ生きてた、人だったのかすまんすまん。
「お前こそ誰だよ豚野郎。ここに大司教が居るって来たんだが?」
「わったしがっ…だいっしきょぅだフゴッ」
えっマジ!? やった皆んな! 見つけたぞ糞野郎を! そうか、お前が大司教か…良し。
「ボイリングウォーターアアアアアアアアア!」
「プギィイイィェなじぇだぁあああああああああああ!?」
はははっ! また豚野郎が熱湯で浮いてるぞ!
「ゆでぶたさん?」
そうだね茹で豚だね。
スープにしたら不味そうだけどなぁ。
豚骨スープかぁ…食べてないなぁ。
おっ、降りて来たな…。
「やっめっブゴっじりがっじりがぁあ」
うげぇ…汚ねぇよ漏れてんじゃん。
しょうがない…勘弁して。
「ボイリングウォーターアアアアアアアアア!」
「プギぎぃいいいいいいいああああああああ!?」
あと二十回程でコレは止めよう。
次は何をしようかな? 顔面サンドバッグ?
※
おいっ…起きろ豚野郎! 駄目だ完全にのびているな。
「ミルン! 豚野郎に股間撲滅パンチ(斧バージョン)だ!」
「わかった。うんしょっ、うーん…えい!」
グチィッて、良い音鳴ったな。
「ぎゃああああおぼぇえええええええ!?」
うわっ吐きやがったこの豚野郎!?
股間押さえて白目剥いて泡吹いてるな。
村長も股間押さえて遠目に見てるし。
「それじゃあ仕上げに、この立派な椅子に座らせて、お腹に肉と描いて、準備万端いつでもいけるな」
ニアノールさーん出番ですよー。
「なぜぇ…わたっ…しにこのよぅ…な…」
やっと起きたか豚野郎。
それで、なぜ私にこの様な事をするのかって? お前マジで言ってるんだなぁ…そうか、そうか。分からないかーそうかぁ…ふざけっーーー
「ふざけるなぁあああああああああああああああああああああああああああああ!」
ーーー俺は怒りが頂点に達し、身体から殺意が溢れ出て来て豚野郎の頭を掴み、眼と眼をあわせる。
「お前がぁ、俺を魔王とよんでぇ、家族をぉ、危険にさらしてぇ、何をしてきたのかなぁ。因果応報自業自得、ほら、俺の眼を見ろ、どんな眼をしてる、どんな眼だ」
豚野郎は、ただただ震え、歯を鳴らし、失禁して、俺の眼を見ている。その眼に映る俺の顔は、魔王というよりも、悪魔と言った方がただしいのであろう。
「流にーちゃん…完璧に魔王やな」
リティナお黙りなさい!
「流さん、私まだ細切れにしていませんよぉ」
だって…これ以上はねぇ…外出てからね?
あぁ、また豚野郎気絶してるよ。それじゃあ、この豚野郎引き摺って、帰るとしようかミルン。
「かえってごはん!」
筋肉村長その煮豚運ぶの宜しくな! 重たそうだし! 俺は運ぶの嫌だ。
「流君、君は…いや、もう何も言うまい」
そう言って村長は煮豚の足を持ち、引き摺りながら…時折り煮豚を踏み付けながら、歩いて行った。
それじゃあ…帰ろっか。