13話 皆んなで楽しくピクニック.2
唯一神アルテラ教の総本山であり大聖堂。
ジアストール城の直ぐ隣に華美な宝飾を施され、これ見よがしに主張する建造物。そこはに、アルテラ教の信者達が脚繁く通い、祈りを捧げる御神体があった。
その御神体を一心不乱に磨く新米女性神官。太陽が昇る前から大司教、司教の部屋を掃除して、礼拝堂を隅々まで磨き、最後に綺麗な布で御神体を優しく、去れど汚れ一つ、埃一つ残さぬ様磨き上げ、最後に特権とばかりに御神体へ語りかける。
「アルテラ様、本日も御綺麗で御座いますね」
ふと、女性神官の耳に声が聴こえた。
愚かな子ら、但し貴女は清浄なりて、直ぐに立ち去る様にと。
女性神官は辺りを見るも誰もおらず、ただ導きのままに行動する。
神が我等を見放した…いや、私に神託を下された。
すぐさま、信用のおける神官達に伝えるも、誰も聴く耳をもってはくれず、慕われている後輩を連れ急いで大聖堂を離れる。
その時、笑顔の五人組とすれ違った。その五人組は大聖堂目指してゆっくりと歩んでいたので声を掛ける。
「あっあの!」
獣族の女児を肩車した人が、何だと聞いて来た。
「今日は大聖堂に近付かない方が良いかと…」
私は理由を彼等に伝えた。
馬鹿にされるのではと思ったが、そうか伝えてくれて有難うと言われた。
それでも大聖堂へ行こうとする五人組。
「待って!? 本当に話を聞いたのですか! 大聖堂に行っては危険なのです!」
私は必死に止めた。
だけどその男の人は笑ってこう言って来た。
私の様な神官が居て良かったと。
大丈夫、危険は無いからと。
「なぜそのような事が分かるのですか!?」
私の様に神託を受けた訳じゃないのに!
「あぁ、それは、何と言うか、危険なのは大聖堂に居る奴等だからな。今から潰しに行くんだ、アルテラ教」
その言葉を最後に、彼等は大聖堂へ向かって行った。
どれ程時間が経ったのか、後輩に揺さぶられてハッとなった私が、歩み始めようとした時、轟音と共に爆風が押し寄せて来てた。
砂塵が辺り一面に吹き荒れ、眼が開けられない。私は後輩を守りながら砂塵が収まるのを待つ。そして…眼が開けられる様になり、後輩が大丈夫な事を確認して先に進もうとするが、後輩が動かない。そしてゆっくり後輩が背後を指差し口をパクパクさせている。
私は背後を振り返った。
そこにあるはずの物が無い。
王都のどこからでも見る事ができる物。
王城に匹敵する程大きく煌びやかな建造物。
大聖堂が…跡形も無く…澄んだ空だけが遠くまで続いていた。
※
何かまともそうな神官さんだったな…胸も大きかったしっミルン頭を叩かないでね。引き留めた理由が何かよく分からなかったけどもまあ、良い人には良い事が起きると言う事だろうな。
それにしても…あれが大聖堂ねぇ。
王都散策してる時にチラホラ見えてはいたけれど、なんか趣味の悪い成金の城みたいだな。
「なぁリティナ、あれがアルテラ教の本拠地で間違ってないんだよな? 何か凄い見た目派手な教会だけど?」
念の為リティナに聞いてみたが頷いている。
「そやでーあの馬鹿みたいに光っとるのが大聖堂であり、アルテラ教の本拠地や。むだに信徒から金とっとるからなぁアイツ等」
うげぇ…よく放置してたなルシィめ。
まあ其れも今日までだけどな。
「さて、流君、もう少しで到着だが、準備は良いかね」
村長! もちろん絶好調だ!
「流にーちゃん。一発でかいの頼むで!」
リティナ、もの凄いぞ!
「流さん、他の有象無象はお任せをぉ」
頼みますニアノールさん!
「おとうさん!」
どうしたミルン?
「ミルンもいっしょにたたかう!」
そうだな。
ミルンも一緒にだよな。
さてと…あっちが正面か。
デカい派手な扉だなぁ。
「それじゃあ一丁、ぶっ潰しますかね」
俺は集中する。
一度は発動した魔法、俺は出来ると確信している。
先ずは何をしたいか。
目の前の馬鹿みたいな建造物をぶっ潰す。
ならばどの様に、粉微塵に跡形も無く。
燃料は怒り、ただただ火に薪を焚べるが如く燃え続ける怒り。その怒りを眼前の物体にぶつけろ!
息を大きく吸ってぇええええっ。
「お前らが! 俺を魔王と言うのなら! 有難く! その報いをうけやがれぇ! 宣戦布告だこの馬鹿共がぁあああああああああああああああああ!」
その魔法は、ミルンのボロ小屋を一瞬で塵に変えた魔法。範囲指定された場所へ浄化の光を降らせ対象を殲滅する属性魔法の最上位ーーー
ーーーファイヤオブジャッジメントーーー
大聖堂の上空に小さな火の玉が見えた。俺は懐かしい気持ちでゆっくりとその火の玉に手を伸ばして握る。その瞬間、眼前の建物全体を覆うように巨大な光の柱が降り立ち、轟音と共に大聖堂が粉微塵になっていった。
※
粉塵が晴れ、埃まみれの砂だらけになりがらも、俺は笑いが止まらなかった。だって気持ち良いからね。
「ふひっ…ぶひゃっひゃっひゃ! 見てみろ皆んな! 空がこんなにも広く感じるぞ!」
「ぺっぺっ流にーちゃん何いまの魔法っあとそれウチの笑い方や真似すんなや!?」
「おとうさん…ミルンのおいえ」
「凄いぞ流君! こんな魔法は見た事がない!」
「流さん…やっぱり魔王ですかぁ?」
そんな事を言いながら余韻に浸っていると、魔法範囲外だった小さい教会から神官達が慌てて出てくる出てくるゴキですか?
「大聖堂が…我等の御神体が…」
「おおアルテラ神よ!?」
「何があったっ…大聖堂はどこに…?」
「どうなっておるさっきの爆発は何だ!?」
ぞろぞろと大聖堂があった場所をみて現実を受け入れられない様だな。
良々、ならば始めようか?
「貴様らぁあ! 大聖堂を消したのは俺だぁあああ! お望み通り魔王自ら来てやったぞぉおおお!」
それを聞き皆一様に俺の顔を見る。
魔王だと魔王がなぜ大司教様は逃げろ戦うぞ無理だ殺される等々聴こえてますからね。
「俺の望みはただ一つ、大司教を連れて来い! さすれば俺は君達に手をださん! 逆らうのなら大聖堂と同じく塵に変えてやるから覚悟して考えろ! 十秒以内だ!!」
十!
魔王だと嘘に決まっている。
だがしかし大聖堂が!?
九!
大司教様はどちらに!?
いや我等であやつめを!
八!
待たれよそこの者話を聞け!
御神体はどこに!?
七!
どうすれば良いどうすれば!?
落ち着けどうせハッタリだ!
六!
我等で一斉にかかれば。
無理だ大聖堂を塵に変えた奴だぞ!?
五!
いや、やるぞ私わ!
俺もだ!
四!
儂はにげるぞ死にたくない!?
逃げるのかアルテラ教の神官が!
三!
魔王殿少し話を!
大司教様はどこにいらっしゃる!?
二!
あの眼を見ろ本気だ!?
無理だ逃げるしかない!
一!
大司教様はここには居ない!?
ならば何処へ!?
零!!
「それじゃあ皆んな、殲滅しようか!」
戦意のある奴だけだけどね? まあ、大聖堂に誰かいたらさっきの魔法で消炭になっちゃってると思うけどそれは知らん。
「「「大司教様の元へご案内致しますぅ!」」」
おっ…何か全員土下座して…。
十秒過ぎてるけど……一人向かってきたな武器は棍棒か?
「この背教者がぁあああああっぶふぅ!?」
向かって来る最中に痩せた神官服を着たおっさんがボディブローって仲間じゃないのかよ。
「申し訳ございません。先程、ルトリアがここへ来て、皆逃げる様にと必死に申しておりましたので…それを聞かずに我々は残っておりました。だが大聖堂はこの有様、ルトリアの言う事が正しければ…逆らっても命はありますまいて」
成程。さっきの胸でか神官ルトリアって言うのねハイハイじゃあどうするのさ?
「どうぞこちらへ。大司教様は…外へ歩けぬお姿故、
大司教様の元へご案内致します」
何だ? 歩けないって病人かなぁ…それなら仕方ないか、なら向かうとしますかね。