13話 皆んなで楽しくピクニック.1
木材の焼け焦げた臭いが鼻につく。
昨日の事、ニアノールさんが痣だらけで今にも死にそうなミウちゃんとメオを抱き抱え、必死の形相で戻ってきて、それを見たリティナも額に血管が浮かび上がる程に怒り狂いながらその二人に奇跡を行使。
二人の傷が癒えてハッキリと息をしている事を確認したと思ったらリティナが倒れ、俺とミルンは安全の為にニアノールさんを寝かせて番をする。
「おっ、村長、戻って来たか」
村長が疲れた顔で拳に血糊を付けながらゆっくりと歩いて来た。
なぜ全裸!?
変態筋肉お化けじゃ無いよね?
「流君か。二人は大丈夫だったか? 子供達の様子はどうだね?」
余程心配してたのか、直接見てこいよと伝えたらふらふらしながら向かい、二人の寝顔を見て、辺りから布を取り身体に巻いてそのまま倒れたって村長もかよ!?
「まあ、おつかれさん」
余程疲れていたのであろう。
ミウちゃんとメオを優しく抱えて寝ている姿は立派なおじちゃんだな。
「おとうさん…おいえやけちゃったね」
そうだなぁ…焼けちゃったよ孤児院。
まずは、皆んな疲れてるからゆっくり寝させてあげないとなぁ。ケモ耳っ子達護りながら戦って、攫われた二人を助けて、そりゃあ疲れるだろう。
「あんたも寝ろよ、影さん」
この人も早く寝て欲しいんだよ。
俺が呼びかけると暗がりから影さんが現れたよマジでその登場やめてくれビビるから!
「気付かれていたのですね…流さん、火を消して頂き誠に感謝いたします。あのまま火が拡がってはスラム全体にまで被害が及ぶ所でした」
いや、俺も意識的に魔法を使えたから何とかなっただけで、半魔王の称号無かったらきっとここら一帯大洪水で終わってたと思うから御礼の言葉はいらないよ。
「それでも、有難う御座います」
ふーむ、分かった。
御礼の言葉は受け取るけども、明日ちゃんと村長とニアノールさんとリティナに御礼言うんだぞ? 俺は火を消しただけで、ケモ耳っ子達助けたのはアイツらだからな。
「勿論です。流さんもお休みになって下さい、番ぐらいは私が致しますので」
いや、影さんが寝なさい。
ミルン、尻尾攻撃だ!
そして一緒に寝なさい!!
「わかったおとうさん!」
敬礼をしたミルンが影さんの身体に張り付き、尻尾で顔をふぁさふぁさすると…影さんがその場で膝から崩れ落ち寝息を立てた!?
「ミルン、毛布…?」
なんとあの一瞬でミルンも一緒に夢の中!?
仕方なく俺は二人を引き摺り小屋へ置き、そのまま寝ずの番をする…さて、迷惑掛けてきた奴等にどう落とし前をつけさせてやろうかと…そればかりを考えながら。
パチッパチッと焚き火の弾けさせる音を聴き、まるで今の俺の内面を現しているなと、そう思い、ゆっくりと時間が過ぎて行った。
【13話 皆んなで楽しくピクニック】
彼方からゆっくりと光が差し込む時間。
俺はその優しい光に照らされながら皆んなの朝ご飯を準備していた。
材料は山程あるし、夜中に一人時間あったし、ソース作りが捗りましたね。
鍋を用意してトマトっぽい野菜を潰して潰して潰して塩を入れ、煮込みながら水を足して、そこへレシピに書いてある香辛料を追加投入しつつ煮込んで灰を取り取り水を足して味見して灰を取り取り、ついでに野菜も入れて煮込んで煮込んで形が消えるまで煮込んでと良い時間でしたね本当に。
クソでかい鍋いっぱいのドロっとしたソースの完成です。
でもやっぱり醤油が欲しいよねぇ。
いつかどこかで会えるだろうか、お醤油様。
それじゃああとは、コカトリスの胸肉を油と共に焦げ目が出来るくらい焼いて、そこへソースを投入! 一緒に焼き焼き、一緒に焼き焼き、油とソースが合わさってヤバいお腹空いたな。先に食べようかな。
「おとうさんおはよう!!」
そう思ってたらミルンが匂いで目覚めて走って来たよ…いや、その後ろからケモ耳っ子達がこっちに走ってくる!?
眼がヤバいこのままだと鍋にぶつかる!?
「皆さんおはよう御座います」
影さんがケモ耳っ子達をその一言で止めた。
走る態勢のまま固まっているぞケモ耳っ子達よ凄い面白い。
「おはよ影さん。ノーイン、モスク、ラナス、ノリス、コルル、ラカス、モンゴリ君、メオとミウちゃんも、おはよう」
「「「おはようございます!!」」」
皆んな元気で良かった。
特にメオとミウちゃんは昨日のあんなに酷い事があったのに、お腹空いたと笑顔で言って尻尾を振り振りしている。
「全裸だった村長もおはよう」
ケモ耳っ子達のあとに村長もゆっくりと起き、こっちに歩いて来た。ついでと言わんばかりにミウちゃんが村長の肩に昇りふんぞりかえる。しかもメオが村長の脚にしがみ付き、脚が動くたびにメオが楽しそうに笑う。ははっ、もうそこがミウちゃんの居る当たり前の場所になってるし、メオの新しい場所も出来たじゃないか。
「おはよう流君。あまり茶化さないでくれたまえ!」
そう言いつつもミウちゃんとメオを落とさない様気を遣いながら動いているん…待った分かった拳骨をしまえ笑顔でくるな!?
「ほんまアンタら朝から元気やなぁ」
「おはよう御座います皆さん」
おっリティナ、ニアノールさんもおはよう。
一緒に朝ご飯食べよう用意してるからさ。
昨日、晩御飯食べてないからさ、お腹に溜まり、身体に良いコカトリスの胸肉、特製ソース和えで御座います! と今日の朝ご飯のメニューを伝えたら、コルルが「わたしはおいしくないよ!」と謎突っ込みを入れて来たのでコルルは食べないのかと聞くと「たべます!」と答えて来た。謎っ子だな。
朝のいただきますをして朝ご飯を食べている最中、俺は村長からこの件の首謀者の名を聞いた。
どうやって聞き出したかは…いいか。
じゃあそれを踏まえてどうするか、因みに俺はまず教会をぶっ潰そうかなと思ってます。だってザルブって言う神官だっけ? 孤児院に火を付け、ケモ耳っ子を攫い痛めつける様な屑の総本山じゃん。
だから潰す。俺一人でも潰すし潰せる。
「私は賛成だ流君。以前の己を否定する言葉だが、私はそれでも奴等を許せぬ」
全裸だった村長は未だ怒りが湧き出ており、筋肉が時折肥大していた。
「ウチも賛成や。教会から聖女認定されとるけど、家族を襲って、ウチの居場所潰しおった馬鹿共はもうしらんわ」
戦力にはならへんけどなと笑うが、眼の奥底からヤバげな気配をだしている。
「私も賛成しますね。リティナ様を危険な目に合わせて、生きている価値の無い物だと思いますのでぇ」
うん、薄切りか細切れか、相手の冥福は祈らないけどな。
「私は…賛成ですが一緒には行けません」
そりゃあ影さんは子供達を安全な場所で護って貰わないと…どこか当てはあるのか? スラムの闇ギルドで匿って貰う!? 危なく無いの? あぁお知り合いね、じゃあ安心か。
「ミルンはどうする?」
俺は確認の為にミルンに尋ねた。
ミルンは斧を持って高らかに言う。
「せんめつ!!」
よしっ決まりだな。
それじゃあミルン、村長、リティナ、ニアノールさん。
俺は笑みを浮かべーーー
「楽しいピクニックにでも行こうじゃ無いか」
ーーー皆んなに宣言した。