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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

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20話 魔王としての一撃を.3


 2026/06/28 改稿



 現代社会において、情報は宝だ。データ化された個人情報、資産、病気の有無から、今どこに誰が居るなどと、例を挙げればキリがない。

 そしてその情報は、使い方によって、剣や槍、銃や砲、果てはミサイルと言った、破壊兵器よりも恐ろしい武器となる。

 一度悪意ある情報が広まれば、例えそれが、科学文明乏しい異世界であったとしても、早々に消える事なく、それが積み重なっていけば、国を転覆させる事だって、あり得る訳だ。

 

 冒険者ギルド緊急依頼──先日、貧民街西地区の孤児院にて、火災が発生。聖女リティナ様がそれを目撃するも、火を放った者が暴れ、聖女リティナに"傷を負わせて"逃走。

 "アルテラ教"神官、ザルブ・ポワード。

 この者を、聖女を害し、火を放った実行犯として、冒険者ギルド長、ゴッズ・ノバリの名の下に、指名手配の賞金首とする。また、この件に関わったとされる"者"の、有力な情報提供者にも、報奨金を出すものとする。

 賞金額、一千万ストール。

 情報提供料、百万ストール。


 先ずは一手──軽いジャブを打つ。


「あら、聖女様が襲われたですって」


「心配だわぁ。あの方が居られたからこそ、病に伏せていた母も、元気になったのよ」


「アルテラ教の奴らっ、聖女様の家を燃やすだなんてっ、なんて事しやがる」


 この手配書を大量に用意して、冒険者ギルドだけでなく、一般街、貧民街といった、貴族街を除く、首都アストール中に配りまくった。

 手配書の形をしてはいるが、その実、こんな事がありましたよって広める為の、"号外"ってやつだな。印象操作には最適だ。

 配っているのは誰だって? 足の速さに自信があって、小回りの効く、ケモ耳幼女ですが。


「はっ、はっ、はっ、号外なのおおおおおっ!」


 走り回るついでに、大量の手配書をばら撒き、それを見た人達は、内容に驚いた後に、更にその賞金額にも、驚くことだろう。

 貧民街の人は、字が読めない? そこはそれ、貧民街に住む院長影さんが、上手く広めてくれるとさ。


「チッ、門兵の次は、教会の奴らかよ……俺らにとって聖女様は、最後の命綱なんだぞっ」


「おいっ、北門での一件は喋るなって、城から直接ギルドに、通達があっただろ」


「はっ、知るかそんな事。俺ら冒険者にとったら、国や教会よりも、先ず聖女様だろっ」


 まだ手配書を配り始めて、半日も経っていないのに、王都を少し歩くだけでも、リティナの話が聞こえて来る。


「なんか……本物の聖女みたいじゃん。これなら次の手も、良い感じに行きそうだわ」


 一手目としては、上々の滑り出し。しかしこれで、教会に不信感を抱く者が現れたとしても、何かが起きる訳ではない。

 だからこその、二手目。

 

 冒険者ギルド緊急報告──先日配布した手配書において、聖女リティナ様が傷を負った際、それを助けた者が判明。

 その者は魔王──小々波流。

 ラクレル村の村民達を、蹂躙したと目される者であるが、元々そのラクレル村の長、村民が、"獣族奴隷解放宣言"に反した行いをした為に起こった、自業自得の出来事であった。

 火災により、聖女様は負傷したが、命に別状はなく、その魔王と目される者の働きにいたく感謝をし、ラクレル村で傷を負い、王都に避難して来た者達に対して治療を行い、魔王と目される者との、融和を望まれた為、冒険者ギルド長、ゴッズ・ノバリ立ち合いのもと、それを見届けた事を、ここに知らせるものとする。


 王都での俺の噂──恐らくは教会も絡んでいるであろう、魔王としての肩書きを利用する。

 

「はっ、はっ、はっ、二日目の号外なのおおおおおおっ! 一枚いかがですかあっ!」


「あん? 昨日も配ってたのに……」


「無料なのっ! ミルンのお金だからっ!」


「無料なら貰うが。どれどれ……はあっ!?」


 こんな感じで二日目も、ミルンは元気に駆け回り、王都中に号外をばら撒いては、自分のお金でやっているのだと、言ったらしい。

 事実、ミルンのお金なのが……凄いわ。


「魔王が魔王じゃなかったって……」


「教会で言ってたのと、違うわよね?」


「魔王が聖女様を、救ったのかぁ」


 二手目は効果抜群だ。昨日の内容の補足と、俺に対する認識。そして、アルテラ教の話と違うという事を、明確にする一手。この一手で先ず、反応を見せるのは、アルテラ教ではない。


「くくっ……さあさあ、お前はどうでるか」


 三手目を打つのは、俺達じゃない。

 下手をすれば、姪っ子であるミルンにまで、被害が及ぶところだったあの放火を、見逃せれる程、馬鹿な"女王"じゃないだろ。


 そうして三日目の朝──今日のミルンはお休みで、俺の肩にどしっと構え、うんうんと頷きながら、尻尾を振っている。


「流石女王、動きが早いな」


「ミルンのお金が、減らずにすむのっ」


「そうなんだけど……思ったよりも、減ってないからね? まだまだミルンは、お金持ちだよ」


 俺達はジッと、その光景を見ている。

 魔法がある異世界だけど、王政を敷いているだけあって、情報伝達の仕方が、古いのなんのって、新聞作れば良いのに。


「女王陛下よりのお言葉であるっ! 国の宝である聖女を害した、"アルテラ教"の罪は重く、また、それに加担した者も同罪である」


 ああいうのを触れ回る人って、なんて呼ぶんだったか……流石に思い出せないな。


「であるからして、事の詳細を明らかにし、民達が健やかに暮らせるよう、このジアストール王国女王、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールが、ここに宣言する」


 さてさて、なんて言うのかねぇ。

 

「聖女殺害未遂及び、放火の罪で、ザルブ・ポワードを王国への反逆罪っ!」


 そりゃそうだ。俺が魔法を使っていなかったら、あの火事がどこまで広がっていたのか、想像するだけでも恐ろしいわ。


「またっ、その直属の上役、大司教オーグド・ディムニへの、城への出頭を命ずっ!」


 そしてこれが、四手目の材料になる。

 残念ながら、この大声で叫ぶ兵士だと、王都全域までその情報を広げるのに、時間がかかり過ぎてしまう。


「よしよし、メモ完了っと。それじゃあミルンさんや。冒険者ギルドに行って、また大量に書いて貰うよう、お願い宜しくっ!」


「代金は、女王に請求して良い?」


「勿論だ。あの女王は、ミルンのお願いなら、なんでも聞いてくれるだろうしな」


「むふふっ、行って来るのおおおおおおっ!」


 俺のメモを握り締め、肩から飛び降りそのまま駆けて行く、ケモ耳幼女……元気だよな。


「さて、大司教とやらは、何手目で動くかねぇ」


 出来るなら、逃げ道は全て潰した上で、真正面からぶん殴りたいけど、大司教クラスの腹黒が、何の手も打たない訳がない。


「あるあるなのは、暗殺者とかを送って来て、俺を始末するとかだけど……用心はしておくか」


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