15話 皆んなで楽しくピクニック.1
12/29 加筆修正致しました。
木材の焼け焦げた臭いが、鼻に付く。
所々、小さな残り火が見えるけど、周囲は水浸しだから、燃え広がる事は無いだろう。
月が真上を過ぎたから、もう昨日になるんだろうか。起きてるから今日かな?
ニアノールさんが、瀕死のミウちゃんとメオを抱き抱え、必死の形相で戻って来た。それを見たリティナは、もう顔が般若そのもの。
額に血管が浮かび上がる程に、怒り狂いながらも、その二人に奇跡を行使。
二人の傷が癒えて、息をしている事を確認したと思ったら、リティナはそのまま倒れた。
「ニアノールさんも寝なよ。リティナ程じゃ無いけど、相当顔色悪いぞ?」
「大丈夫ですよぉ。リティナ様のお側でぇ、護衛をしなきゃですからねぇ」
「……見張りぐらいするっての。ミルンさんや、やっておしまいなさい」
「わかりました!」
ミルンはシュバっと、ニアノールさんに飛び付き、尻尾で顔をふわっと一撫ですると、ニアノールさんは膝から崩れ落ち、そのままスヤスヤ夢の中。
「流石ミルンの尻尾」
「じまんのしっぽです!」
「そいじゃ、焚火しながら村長待つか」
火種は、そこいらにある残り火だ。
暗がりの中でミルンと二人、焚火を眺める。
本来ならこんな事は、あの野営地と言うキャンプ場で、楽しくやりたかったな。
そんな事を考えていたら、ザッザッザッと、重たい足音が近付きて来た。
「おっ、村長お疲れ」
村長が疲れた顔で、拳に血糊を付けながら、ゆっくりと歩いて来たけど、何故全裸?
村長から変質者に、ジョブチェンジしたの? 若しくは、変態筋肉お化けじゃ無いよね?
「流君か。ミウやメオ、子供達の容体はどうかね。皆無事であろうな?」
「あそこの小屋で寝てるぞ。そこまで心配なら、直接見に行けば良いだろ」
「うむ……」
村長は頷くと、ふらふらしながら小屋に向かい、二人の寝顔を見て、近くに置いてあった布を取り身体に巻いて、そのまま倒れて直ぐ、寝息を立て始めた。
「……おつかれさん」
余程疲れていたのであろう。
ミウちゃんとメオを、優しく抱えて寝る姿は、孫を守る立派なおじいちゃんだ。
「みんなのおうち、なくなった……」
「そうだなぁ。半分以上燃えちゃってるし、ここにはもう住めないな……」
村長もニアノールさんも、リティナも、ケモ耳っ子達守りながら戦って、攫われた二人を助けて、そりゃあ気絶するだろう。
それと────「あんたも寝ろよ。影さん」
俺が呼びかけると、暗がりから影さんが現れた。カマをかけたんだけど、やっぱり近くに居たんだな。
「気付かれていたのですね……流さん。火を消して頂き、誠に有難う御座います。あのまま火が拡がっていたら、スラム全体にまで、被害が及んでおりました」
「……俺はスキルを、確認したかっただけだぞ。感謝なら、あそこで寝ている三人にするこったな。ケモ耳っ子達守ったの、あいつらだぞ」
「それでも……有難う御座います」
「律義なこって。あの三人にも、礼を言えよな」
「勿論です。流さんも少し、お休みになって下さい。番ぐらいは私が致しますので」
影さんの顔色は、焚火の灯りでも分かる程に悪く、若干息を切らしている。どこ行ってたのかは知らんけど、寝るのは影さんだろうに。
「ミルンっ、影さんに尻尾攻撃だ!! そしてそのまま、一緒に寝なさい!」
「わかったおとうさん!」
「っ、流さん何を────」
敬礼をしたミルンが、影さんの身体に張り付き、尻尾で顔をふぁさっと一撫ですると、影さんがその場で膝から崩れ落ち、白目になりながら夢の中。
「ミルンさんや、毛布を……」
「すぴーっ、すぴーっ、すぴーっ」
「あの一瞬でっ、ミルンも夢の中!?」
仕方なく二人を引き摺り、小屋へと運び、俺はそのまま寝ずの番をする。
「……さてっ、考える時間は沢山あるな」
迷惑を掛けてきた奴等に、どう落とし前をつけさせてやろうか。
孤児院を襲い、火を放ち、あまつさえ、ケモ耳っ子達に害を与えた奴等。
ゆらゆらと燃える焚き火を眺め、心を落ち着かせようとするが、無理な話だ。
「絶対に……っ、後悔させてやる」
遠くから、朝日が『おはよう』と顔を覗かせて、暖かな光が差し込む時間。俺は、その優しい光に照らされながら、皆んなの朝ご飯を準備していた。
「材料は山程あるし、夜中に一人時間あったし、ソース作りが捗りましたってか」
鍋を用意して、トマトっぽい野菜を潰して潰して潰して塩を入れ、煮込みながら水を足す。そこへ、レシピに書いてある香辛料を追加投入しつつ、煮込んで灰を取り取り水を足して、味見して灰を取り取り。ついでに野菜も入れて、煮込んで煮込んで形が消えるまで煮込んでと、良い時間でした。
「ドロっとしたソースの完成です! 何ヶ月分作ったんだろ……寸胴鍋がひい、ふぅ、みぃ」
ソースも良いんだけど、やっぱり、醤油が欲しいよな。いつかどこかで会えるだろうか、お醤油様。
「んで次は、コカトリスの胸肉を、焦げ目が出来るくらい焼いて、そこへソースを投入!」
一緒に焼き焼き、一緒に焼き焼き、油とソースが合わさって、お腹空いたな。こっそり先に食べようかな。
「おにぐっ! おとうさんおはよう!」
そう思ってたら、ミルンが匂いで目覚めて走って来た。いや……ミルンだけじゃ無いぞっ。その後ろから、涎を垂らしたケモ耳っ子達が、こっちに走って来る!?
『肉だああああ──っ!』
『あさのかつりょくっ!』
『まってっ、わたちも!』
「眼がヤバいっ、このままだと鍋にぶつかる!」
「皆さん、おはよう御座います」
『いんちょうだっ、とまれ!』
『はしったらだめ!?』
『あるくっ、あるくっ』
影さんが、涎を垂らす暴走ケモ耳っ子達を、その一言で止めた。走る態勢のままで固まっているぞ……ケモ耳っ子達、凄く面白い。
「おはよ影さん。ノーイン、モスク、ラナス、ノリス、コルル、ラカス、モンゴリ君、メオとミウちゃんも、おはよう」
「「「おはようございます!!」」」
「みっ、耳がっ……」
皆んな元気で良かった。
特に、メオとミウちゃんは、昨日のあんなに酷い事があったのに、お腹が空いたと笑顔で言って、尻尾を振り振りしている。
「全裸だった村長も、おはよう」
ケモ耳っ子達の後ろから、村長もゆっくりと、こっちに歩いて来た。
ついでと言わんばかりに、ミウちゃんが村長の肩によじ登り、ふんぞりかえる。メオは村長の脚にしがみ付き、脚が動くたびに、メオが楽しそうに笑う。
「人気者だな村長……ぷふっ、見てて面白いぞ」
「流君。あまり茶化さないでくれたまえ」
そう言いつつも、ミウちゃんとメオを落とさない様、気を遣いながら動いている。
「孫が出来た気分は……待った分かった拳骨をしまえっ、笑顔で来るなっ!?」
ゴスッッッと脳天、ピヨピヨひよこが回って痛いっ! ミルンバリアが無いから、俺の頭にダイレクトじゃん。
「ほんまアンタら、朝から元気やなぁ」
「皆さん、おはよう御座いますぅ」
「痛っ、リティナ、ニアノールさんも、おはよう。朝御飯用意してるから、一緒に食べよう」
昨日、晩御飯食べてないから、お腹に溜まり、身体に良いコカトリスの胸肉、特製ソースをたっぷりとで御座います!
「わたしはおいしくないよっ!?」
今日の朝ご飯のメニューを伝えたら、コルルが謎突っ込みを入れて来た。
「コルルは食べないのか?」
「たべないとはいってないっ!」
何を言ってるのか……謎っ子コルル。
いただきますをして、朝ご飯を食べている最中、村長から、この件の首謀者の名を聞いた。
どうやって聞き出したかは……いいか。
じゃあそれを踏まえて、どうするか。因みに俺は、教会をぶっ潰そうかなと思ってる。
孤児院に火を放ち、ケモ耳っ子を痛めつけた奴の、総本山じゃん。
だから潰す。
俺一人でも潰すし、潰せる。
「と言う事で、教会をどうにかしようと思うんだけど、なんか意見あるか?」
「私は賛成だ。以前の己を否定する言葉だが、私はそれでも、奴等を許せぬ」
全裸だった村長は、未だ怒りが収まらないのか、筋肉が時折肥大してる。物凄く気持ち悪いと言うか、何その筋肉?
「ウチも賛成や。教会から聖女認定されとるけど、家族を襲って、ウチの居場所潰しおった馬鹿共なんて、もうしらんわ」
戦力にはならへんけどなと笑うが、眼の奥底から、ヤバげな気配が出てますよ。
「私も賛成しますぅ。リティナ様を危険な目に合わせてぇ、生きている価値の無い物だとぉ、思いますのでぇ」
うん、薄切りか細切れか……ガチギレしてるじゃん。相手の冥福は祈らないぞ。
「私は……賛成ですが、一緒には行けません」
「そりゃぁ影さんは、ケモ耳っ子達守らないと駄目だからな。身を隠せる場所とか無いの?」
「闇ギルドに匿って貰います」
「不穏な響きだな……大丈夫なのか?」
「今の闇ギルドのボスは、古い知人ですので、大丈夫だと思います」
ボスが知人って、影さん何者なんだよ。
「ミルンはどうする?」
俺は確認の為に、ミルンに尋ねた。そのミルンは、いつの間にか斧を握っており、高らかに宣言した。
「わるいこっ、せんめつ!!」
「良しっ、決まりだな」
俺は立ち上がり、屈伸運動をした後に、ミルンを肩にセットオンっ!!
「そんじゃっ、ミルン、村長、リティナ、ニアノールさん……楽しいピクニックにでも、行くとしますか」
俺は笑みを濃くしながら、宣言した。
「……魔王の笑みやな」
「怖いですよぉっ」
「気持ちの悪い、笑みをするで無いぞ」
「おとうさん! おかおへんっ!」
四人とも、酷くないかい?




