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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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14話 誰の後悔後先立たず.6


 12/19 加筆修正致しました。



「ひっ、ひふっ、糞っ!!」


 魔王を滅せず、化物に身元を知られっ、獣共を誰一人として殺せずっ、何故私がこの様な目にっ!!


 ザルブは、必死の形相で走った。

 ゴミの山を抜け、廃墟を過ぎ、瓦礫の山を越えて、目的地へと走った。


「むぅーっ、やーっ!」


「メオちゃんをはなしてーっ!」


「黙れ獣がっ!!」


 二匹の獣が叫き、暴れるが、今はそんな事よりも、この国から逃げねばならない。でなければ、大神官様に殺されてしまう。


「あの化物からもっ、逃げなければっ、後少しでっ、あそこだっ!!」


 ザルブが向かった場所は、スラムと普通の民家が建ち並ぶ、境界線の廃屋。そこへ滑り込む様に入り、持っていた二人の獣を投げ、急いで鍵を閉めた。


「ひゅーっ、ひゅーっ、後は……」


 投げて倒れた獣に近付き、踏み付ける。


「けふっ!?」


「メオっ、ちゃんっ」


 逃げられない様に更に踏み付け、うずくまっている間に、地下通路の扉を確認。


「良しっ…後はここから、城壁近くの小屋に向かえばっ、逃げ切れる」


 問題は、この二匹の獣。連れて行き、道中で売り払って金にするか、このままここで、殺してしまうか。


「一匹だけ居ればっ、事足りるか」


「ぃぅっ」


「メオちゃんっ、このぉっ!!」


 獣が一匹、牙を向けて来た。

 余計に付いて来た獣で、コイツならば、嬲り殺しにしても、問題無いだろう。

 脚目掛けて、噛み付こうとして来た獣に、そのまま蹴りを打ち込む。


「ぎゃんっ!?」


「獣の如きがっ、このザルブ様に敵うとでもっ、本気で思っているのか!!」


 鈍い感触が足に伝わり、肋骨が数本折れたのか、血を吐き転がる獣。


「ミウっ…ちゃんをっ、いじめるなあああっ!」


「痛っ、貴様っ! 離せえええ──っ!!」


 小さい獣が、右足に噛み付いた。

 その姿を見て、ザルブは怒りが込み上げ、その噛み付いたままの獣を、左足で踏み付けた。


「ちぅぅぅっ」


「離せっ!! この穢れた獣がっ!!」


「やめっ…メオがっ…しんじゃう!」


 しかし、何度も何度も、踏み付けているにも関わらず、その獣は離さない。離れない。


「もう良い死ね! 貴様二人共要らぬわ!!」


 何十回踏み付けたか分からなかった。

 息が切れる程踏み付けて、ようやく獣共が、静かになった。


「暴れるからだっ。片方は残してやると言う私の慈悲を、無下にしおって……っ、こうしては居れぬ、早く逃げねば」


 地下に続く扉の鍵を開け、ザルブはほんの少し、ほんの少しだけ、安堵した。

 愚かにも、気を緩めてしまったのである。


 ヒュカ──ッと言う音と、背後から何かが壊れた音が聞こえ、何事かと振り向いた。


「えっ?」

 

 振り向いて、直ぐに気付いた。いつの間にか、天地が逆さまになっている事に。

 

「何だ────」

 

 一瞬にして、ザルブは意識を失った。


◇ ◇ ◇


「っ、ニアノール殿は子供達を診るのである! 私はこの者の止血をする!」


「分かりましたぁ」


 ニアノール殿が先行して、ミウとメオの匂いを辿り、勢いそのままに廃屋へと突入した。

 そして、見たモノ。ミウとメオが、血溜まりに倒れている姿。

 それを見た瞬間、ニアノール殿が風の如き速さで男に迫り、両脚を切断。そのまま床へと、叩き付けた。


「流石、リティナ様の護衛であるな……」

 

 床に刺さったザルブを引っこ抜き、両脚をきつく縛り、状態を確認。


「気絶しておるか……ニアノール殿! 子供達はどうであるか!」

 

「かろうじてぇ、息が有りますぅ」

 

 ギリギリであったか。

 子供達のもとに向かい、顔を見た。

 顔は腫れ上がり、息が浅い。


「ミウ、メオ、意識は有るか?」 


「そ…んちょ…」


「きん…にく…」


「うむっ、良く耐えたのである」


 ヘラクレスは、ミウとメオの頭を優しく撫で、怒りを顔に出さぬ様、歯を食いしばる。


「二人を急ぎ、リティナ様の所へ。私より、ニアノール殿の方が早く着く」


「分かりましたぁ。ヘラクレス様……後の処理を、お願いしますぅ」


 すまぬ。本当ならば、ニアノール殿がやりたいのであろうが、コレばかりは譲れぬ。


 ニアノール殿を見送り、息を吐く。

 私がやるべき事は、ただ一つ。

 寝ているザルブを、片手で持ち上げ、そのままザルブの顔面に拳を────撃ち付ける。


 メゴォッ────「ぎゃふっ!? がはぁっ、なっ何だ!?」


 状況が分からぬ様で有るな。これはこれで、好都合なのである。


「起きたであるな。さて、ザルブ殿。私の顔を覚えているかね」


「きっ、貴様っ! あの村に居たっ。私を離せっ、私を誰だと思っておる!!」


「ふむ、離しても良いのであるか?」


 ヘラクレスは手を離し、浮いた状態だったザルブは、そのままベチャッと、床に落ちた。


「……へ? あっ、ああああああ脚っ! 私の脚がああああああああああああ────っ!?」


 気付いてやっと、痛みが理解出来たのだろう。床にのたうち回り、ぎゃあぎゃあと叫ぶその姿見て、ヘラクレスは溜息を吐いた。


「脚っ私の脚っ、痛いっ、熱いいいいいいっ!」


 子供達は、あの様な姿でも、涙一つ流していなかったと言うのに、愚かなモノであるな。


「ザルブ殿……今回の事を、一体誰に命令されたのか、教えてはくれぬか」


「ひぃっ、ひぃっ、ひぃぃぃぃぃぃっ!!」


「答えぬのかね? 仕方あるまい」


 床に転がるザルブの首を掴み、動けない様にしつつ、その顔に拳を振り下ろす。

 何度も何度も、拳を振り下ろす。

 何度も何度も何度も、何度も何度も何度も、何度も何度も何度も何度も、拳を振り下ろす。

 瞼が腫れ、鼻が凹み、歯が全て抜け、最早誰とも分からぬ顔と、成り果てたザルブを見て、ようやく殴るのを止めた。


「なじぇ……わだじぎゃ……」


「流石、神官の装具であるな。ここ迄殴り付けても、まだ息があるとは」


「かひゅっ。わだじば……なにぼじだど……」


「スラムへの放火、孤児院への襲撃、子供達を誘拐し、更に暴行。特に放火は……このジアストールでは死罪である」


 スラムなど、燃え易い物ばかりである。瞬く間に火は拡がり、下手をすれば、穀物にまで被害を与える大罪である。


「やみぇてぇ…じにだぐ…ない…」


「ならば首謀者を言いたまえ。そうだな……流君が言った言葉を借りるなら、『楽に生きれると思うなよ』だったか。首謀者を吐くならば、殺しはしない」


「ぐぅぅぅっ……っ、じじぼ、だじだのば……だいじんがんざまだ」


「ふむ、矢張りであるな」


 アルテラ教の大神官であるか。

 分かっていた事ではあるが、この者達は、選択を誤ったのであるな。

 敵にしてはなら無い存在を、怒らせた。


「まぁ、私が言えた義理では無いであるな」


 彼を怒らせて、五体満足でここに居る。

 あんなに憎んでいた筈なのに、獣族の子供達と、笑顔で遊べて居るのだ。

 

「ザルブ殿……孤児院を襲った事で、リティナ様はその脚を、治さぬであろう。しかし、この出来事が、貴殿の転機に成る事を願う」


「いばだぁぁぁっ、ばじぃぃぃっ」


 その傷では、どの道長くは無いであろうが、残りの人生を、後悔しながら、生きて行くと良いのである。


「お互いに、馬鹿な事をした者であるなぁ」


 過去に戻れるならば、愚かな私に、何と伝えるであろうか。

 

「戻るのである……」


 ヘラクレスは、ザルブを放置したまま、廃屋から出て、孤児院へと走り出した。

 

 ここは未だ、スラムの中。ザルブが辿る末路など、目に見えている。


「楽に生きられぬか……その通りであるな」

 

 


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