表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/555

14話 誰の後悔後先立たず.5


 12/16 加筆修正致しました。



 良しっ、奴等の陽動が成功したか。今の内に潜入して、魔王の首を跳ね飛ばしてやるわ!

 ザルブはそう息巻いて、側面の壁を越え、孤児院へと侵入したものの、あの魔王の姿が見えない。

 部屋を片っ端から探したものの、影も形もない。


「糞っ、魔王が居らん……っ。まさか、どこからか情報が漏れて、逃げたのかっ」


 あの屑共を使ったのだ、後戻りは出来ぬっ。

 矢張り、この手を使うしか有るまい。

 そう言って、抱えた袋から取り出したのは、油が入った瓶と、大量の魔石。


「これを、魔王の仕業と教会に広めさせ、明確な犯罪者とすればっ、国も動かざる得まい」


 そう言いながら、一番燃えそうな孤児院の中央部に設置して、外の様子を確認する。


「やはり、族風情では、聖女の護衛を抑えてきれぬか。用は済んだのだ、早く逃げねば」


「どこへお逃げになられるので?」


 ザルブは、心臓が鷲掴みにされたかのような殺気に、通路の奥を見た。

 そこには、黒外套を身に付けた者。


「きっ、貴様何処から現れた!? いや、貴様がここの責任者かっ、魔王はどこだ!」


 そう言いながらも、ザルブは震えが止まらない。なぜなら、こちらが剣を抜いた瞬間、瞬く間に殺される事が分かるから。

 それ程の殺気。

 大量の冷や汗が、背中を濡らす。


「その顔……教会の者ですか。愚かな……」


「なっ、何故っ!?」


「教会の者だと、何故分かったか?ですか。一通り顔は、覚えておりますので」


 影がゆっくり動き出す。


「ひっ、ひひっ(死ぬっ死ぬっ死ぬっ、どうやって逃げるっ。どうやってどうやってっ!?)」

 

 ザルブの思考は、答えを導き出せない。

 しかし、生存本能が、その答え導きだした。


「死ぬうううううう────っ!?」


 魔石に魔力が籠ると、それを放り投げた。

 その魔石は、今先ほど設置したばかりの、油の瓶と大量の魔石が置かれた場所に落ち、大量の魔石が反応した瞬間────爆発。

 ザルブは、身に付けていた神官服の効果により守られるも、爆風によって、通路の端へと吹き飛ばされた。


「ぐふっ!? ぐぅぅぅっ、逃げねばっ、死にたく無いっ、逃げねばあああ──っ!!」


 痛む体を必死に起こし、本能のままザルブは走り出す。何故なら、あの様な殺気を放つ存在が、そう易々と、死ぬとは思えないからだ。


「裏口はどっちだっ、こっちか! ぐぅ、早く逃げねばっ、あの化物にっ!」


 正直言って、魔王どころの話では無い。

 あのラクレル村で見た魔王よりも、遥かに恐ろしい存在であると、本能が告げていた。


「はぁっ、はぁっ、ぐっ、何故獣が!?」


 通路を塞ぐ様に、前方から忌まわしき穢れた獣共が、真っ直ぐ走って来る。

 通常であれば、一匹ずつ仕留めて行くところをっ、今はそれどころでは無いっ!!


「どけえええ──っ! 獣共おおお──っ!!」

  

 そう言いながら、剣を抜き放ち、一番先頭を走っていた大柄な者に、その刃を振り下ろす。


 パリィンッ────「はっ?」


 頭をカチ割ったと思ったら、何故か手にしている剣が、粉々になった。そして、一瞬ではあるが、呆けてしまった。その一瞬の間に、腹に衝撃が走り、メリィッと音が鳴り、ザルブは膝を付き嘔吐した。


「うぼぇっ!? うぇっ! なっ、何がっ……」


「あいがっ、たりなぁあああ──い!!」


「ぎざまっ、えふっ、貴様がやったのか!?」


 先程の黒外套と言い、目の前の獣と言い、私にこの様な屈辱をっ!!

 痛みと怒りで我に返り、ハッキリと、状況を整理する事が出来た。


「神官たる私にっ、このようなぁっ!!」


 大柄な者を見る。

 穢れた獣の耳や尻尾は無く、人種に見えるが、先程の拳の威力は常軌を逸している。戦えば、無駄に時間を取られ、あの化物に追い付かれるだろう。


「こうなればっ」


 どれか捕まえて、盾として使い、何が何でも逃げねば。どれが一番弱い……穢れた獣共は、例え子供であっても、油断出来ん。


「あの獣だっ!」


 そう言って直ぐに駆け出す。

 目指すはっ、一番小さい獣!!

 先頭の大柄な者に、剣の柄を投げ、『あいいいっ!』と叫びながら迫る拳を避け、他の獣共が慌てている間に、小さい獣の首を掴み、そのまま走り抜けた。


「メオちゃん!?」


 走り抜けたと思ったのに、どうやってか、同じ大きさの獣が、無理矢理しがみ付いて来た。


「メオちゃんをはなして!」


「ミウちゃんだめよ! にげて!」


「くっ、嗚呼煩いっ!! このまま二匹共盾っ、代わりにしてやるわっ!!」

 

 そう言って、意識を前に向けた時、前方から、炎の中を掻き分ける様にして、全裸の筋肉が、凄い形相で走って来ていた。


「ひぃっ!?」


 最早安全確認なんてしていられないと、窓に体当たりをかまして、外へと飛び出す。その手に、獣二匹を掴んだまま。


「私は死なないっ、死んでたまるかあああああああああああ────っ!!」


◇ ◇ ◇


 ヘラクレスはそれを見た。

 男が窓を突き破って行った際、その手にメオとミウを掴んでいる事を。


 リティナは、炎が燃え盛る屋敷の中で、必死に子供達を探していた。そして見た、メオとミウを掴み逃げる、男の姿を。


 ニアノールは安堵してしまった。

 炎の中、無事なリティナの姿を見付け、子供達も無事であると、思い込んでしまった。


 影は油断していた。

 役目を退き、十年と少しの安息の日々は、確実に影の牙を削いでいた。


 ヘラクレスの大声が、孤児院に響き渡る。


 

「院長どのおおお────っ!! 正面広場に避難をおおおおおお────っ!!」



 ヘラクレスは、七名もの子供達を抱え、全力で屋敷を駆け抜け、広場に飛び出した。

 リティナ、ニアノール、影と、皆一応に広場へと集まり、子供達を見た。


「リティナ様は子供達の治療を!! あの族は私が追うのであるっ!!」


「ミウとメオをっ、許せないですぅ」


 二人は目を血走らせ、男が逃げた方向へ、全力で駆け出した。


「リティ。急いで子供達を、離れの小屋へ。ここでは火に近過ぎて、危ないです」


「っ、わーとる! モンゴリ、ノーイン、ラカス、お前らなら立てるやろ! シャキッとせい!!」


「げほっ、ですね。年長者がへばってたらっ、この子達の兄として、失格です!」


「この火は俺の悪戯じゃないぞぉっ」


「ぼくはっ、げんきでっす! みんなをはこぶの、てつだうよおおおっ! ぶふっ」


 そうやって、全員で幼少組を担ぎ、なんとか小屋まで来た瞬間、ノーイン、ラカス、モンゴリまでも、一斉に気絶した。


「先ずは、小さい餓鬼からやっ。ウチが傷痕の残さん様っ、治したるからな……頼むからっ、元気になってくれやぁっ」


 リティナは奇跡を行使する。

 死に至る外傷をも、一瞬で癒す奇跡ではあるが、例外が存在する。

 火傷や凍傷には、その効果が減衰するのだ。

 だからこそ、何度も、何度も、何度も、休む事無く、必死に奇跡を行使する。


「リティ。私は火を消す為に、人を呼んできますので、決してここを、離れてはいけませんよ。このままでは、スラム全体に広がりますっ」


「分かったわ。餓鬼共は任せろや」


 影はそれを聞き、その場から消えた。

 それを見届けたリティナは、更に奇跡を行使し続ける。誰一人、死なせない様に。


『っ、何だこれ……』


 リティナは、声がした方に目線を向けると、流とミルンが立っていた。

 リティナは悔やみ、涙を流しながら、流に事情を説明した後、自らの奇跡とは別格の奇跡を、目にする事となる。


『……俺、びしょ濡れじゃん』


『あめっ、ひどいのぉぉぉっ!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ