12話 誰の後悔後先立たず.10
王都繁華街で買い物を済ませた俺とミルンは王都をゆっくりと見て周りつつ孤児院へ帰っている最中である。途中、広場があったので試しに空間収納から木の板を出して円盤に加工。それでミルンと遊ぼうとしたら。
「ミルン、これは投げて遊ぶ物なんだ。試しに投げるからミルンも投げ返してくれな」
そう言って軽くなげるとーミルンが「まてー!」と全力で追いかけてジャンプして空中で口でキャッチ!? それを咥えたまま走って戻ってくる。
木の円盤が唾液でベタベタ。
「おとうさん! もういっかい! もういっかいやって!」
そう言われ今度は強めに投げるも「わーい!」とミルンはそれを追いかけてまたジャンプして咥える。その姿はケモ耳幼女が野生を取り返したかの如く…ではなく何か違うなぁ。
尻尾を振り回し、木の円盤を咥えてはしゃぐケモ耳幼女ミルン。
「まあ、可愛いから良いけども、何か違う」
それでも、もう一回を十回程おねだりされたらやるしか無いだろう。だって可愛い娘だもの!!
そんな時間を過ごしてから空が暗くなってきたのでミルンを肩車してゆっくりと帰る。
王都繁華街から影さんに言われた道を辿ってスラムへ入り、ふと、遠くから煙が出ており、火の手が上がっているのが見えた。
「火事か? こんな燃えやすいボロ屋ばかりだと危ないな」
「あっち、みんながいるところにちかい!」
えっマジか?
何か嫌な予感がするな…ちょっと急ぐか。
「ミルン、降りてくれ走るぞ!」
「わかった!」
俺達は全力で地を蹴るっ何か足軽!?
ステータスを最近見てなかったけど凄く身体が軽く、ミルンには及ば無いがギリついて行けている。
ボロ屋を抜け、瓦礫の山を超え、ゴミ捨て場を過ぎた先、そこには…孤児院が火に包まれて真っ赤に燃えていた。
なんだ…なぜ孤児院が…皆んな!?
「おぉおおい! 誰かいないのかぁあああ!!」
とりあえず声を出し呼びかけるが返答が無い。
「おとうさんあっち!」
ミルンが何かを察知したのか俺は端にあった小屋へ向かうとーーー
「リティナ!?」
ーーー聖女リティナが額に汗を流して子供達に手を当て、スキルだろうか? 子供達の火傷が少しづつ治っている。
「あぁ…流にーちゃん」
眼が虚で隈が出来ており、今にも倒れそうに程憔悴しきっている。
「何があった? 子供達は無事なのか…影さんや他の皆んなはどこにいるんだ?」
リティナはゆっくりと、だが子供達からは手を離さずに答える。
「院長は火を消すために人を呼びに言っとる…ヘラクレスとニアは…」
「どうした、村長とニアノールさんはどこに?」
リティナの眼から涙が落ち、治療している子供達を見た。
ノーイン、モスク、ラナス、ノリス、コルル、ラカス、モンゴリ君…ケモ耳っ子が足り無い。
「ミウちゃんとメオは…どこに居る?」
ウチが居ながら、ウチが居ながらスマンと言い続け、声が震え、嗚咽をあげる。
「うゔっ、攫わてっしもたっ。ウチがっ居たのに! ヘラグレズっニアが追いがけどるっ」
俺はその言葉を聞き、だが、今ミルンやリティナや傷付いたケモ耳っ子達の前でぶち撒ける訳にはいか無いと何とか心を落ち着かせ、まずは、と燃え盛る孤児院を前にする。
「おとうさんっミルンもてつだう!」
「お、そうか有難うなミルン」
そう言って俺の肩によじ登り頭を撫でてくるし、やばい凄い落ち着くな…さすが癒しのミルン。
ふぅー良し。
ステータスのスキル欄、称号欄を確認。
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
小々波 流の固有魔法
全属性魔法中級まで使用可
使用回数制限無し
心の揺らぎにより範囲威力増減
INT 150より制御可
レベルアップ時INT成長を妨害
・半魔王
基本魔法制御解放
心の揺らぎにより範囲威力増減の効果を抑制
特定の魔物好感度上昇
レベルアップ時 INT成長を妨害
この異世界に来て間も無い頃、水が飲みたいと切に願いウォーターと唱えたら滝の様な水が降って来た。
豚野郎には、恐怖が優ってたのか水が圧縮され額を撃ち抜いた。
ミルンの小屋はよくわからない内によく分からない魔法が発動して粉微塵に。
ラクレル村では地球で見聞きしたゲームの魔法をイメージして、それが発動した。
野営地でミルン達を狙っていた奴等には、多少威力は落ちたが制御してミディアムに出来た。
正門城壁の上で、門兵が使った魔法を怒りに任せて詠唱したら発動しかけた。
俺の固有魔法。
全属性中級まで使用可…これは誰を比較にした中級なのか…今、考える事じゃ無いな。
謂わゆる、意思と想像と感情の合致により俺の固有魔法は発動する。なら、想像しろ…怒りを糧に、目の前の炎を消す為の魔法。
大地を潤し、時に全てを流し去る。
天からの恵みのその言葉共にー。
「発動しろ、旱天慈雨!!」
俺のスキルや称号が反応している事が分かる。
身体が熱くなり、その熱がゆっくりと消え去る瞬間、ポッ、ポッ、ポッと雨がゆっくりと降り始め、瞬く間にザァザァと降り注ぎ、燃え盛る孤児院の火を鎮めていく。
それは、人の身で扱う事の出来ない魔法。
天候操作。
「なんやそれ…流にーちゃん…アンタ…」
リティナは雨が天井を打つ音を聴きながら思った。
それは神の奇跡だと。
ピンポンパンポーン(上がり調)
レベルが1上がりました(神(笑))
ピンポンパンポーン(下がり調)