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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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13話 天然混じりの恐怖のドジっ子.3



 ミルンとドールを見送って、久々に黒姫と二人きり。簡易小屋からノブストンの首都を、監視し続けております。


「また来たな……これで何回目だよ」


「我が見るのは、三回目ぢゃのう」


「と言う事は、最初のを含めて四回か」


 そう、あの気味の悪いフルプレートが、十五分おきに現れて、橋の手前で力尽きて直ぐ、騎兵に引っ張られて帰ってんの。


「学習しない馬鹿なのか、ただただ執念深いのか。どっちにしても、怖すぎるわぁ」


「ふむ……背は流より、頭ひとつ低いのぅ。あの感じぢゃと、女子(おなご)やも知れぬ」


「ここからでも、身長分かるのか?」


「御主、我を誰ぢゃと思うとるかや。あの首都の城壁の上に出とる、城の窓近くの花瓶も、ハッキリと見えるのぢゃぞ」


「すっげえ視力だな。スキル無しで見えんの?」


「スキルを使うまでも無いのぢゃ」


 この黒姫、出会った時のあの残念さが、嘘に思える程の、チートっぷりだわ。


「そういや、完全回復した黒姫なら、リシュエルより強いんだっけ?」


「急になんぢゃ?」


「ふと思っただけだ。以前リシュエルと戦った時は、互角だっただろ?」


「ふむ、そうぢゃの。リシュエル程度ならば、今の我でも楽勝なのぢゃ」


 それなのに、この大陸の魔王を警戒するって事は、リシュエル以上に厄介なのか? 本当にこの世界って、化物だらけなのな。


「その顔……何を考えておるのか、丸分かりなのぢゃ。以前にも言うたが、この地の魔王と我とでは、相性が悪いだけぢゃぞ」


「空飛んだら、ズドンだっけ?」


「そうなのぢゃ。そしてそれは、同じく空を飛ぶリシュエルにも、当て嵌まるのぢゃ」


「相性が悪いだけで、殴り合いをしたら、リシュエルが勝つと?」


「然り。ぢゃから魔王は、姿を見せぬのぢゃ」


 以前にも言ってたな。引き籠り根暗体質で、近付いたら即逃げる魔王って。


「っと、あのフルプレート、どうなった?」


「どうやら今回は、橋まで来たようぢゃな」


「新記録達成じゃん。あのまま、こっちの門前まで来てくれれば、空間収納射程圏内で、ミスリルの斧を頂戴出来るぜっ」


「……盗賊かや?」


「違うぞ黒姫。今は戦の真っ最中なんだし、あの斧は戦利品だろ?」


 簡易小屋で茶を飲みながら、「頑張れ頑張れ」と、這って来るフルプレートを応援していると、また騎兵達が迫って来た。


「あいつら、ずっと同じ事繰り返す気か?」


「それはそれで、面白いのぢゃ」


「でも、今回は力尽きず、フルプレートの奴も頑張ってんじゃん。こっちに来たら来たで、戦斧没収するけどもさ」


「流は鬼畜ぢゃのぅ」


「あっ、橋の中央で力尽きやがった……ギリ空間収納外とか、面白く無えーっ」


 騎兵達も到着して、また持って帰るのかね?

 そう思っていたら、今までと違った。

 騎兵達はその場で、フルプレートをガチャガチャと回収し、中身だけ放置して、そのまま王都へと、帰って行ったでは無いか。


「……どゆこと?」


「ほれっ、我の言うた通り、女子(おなご)だったであろう。我の眼力は確かなのぢゃっ」


「あっうん、凄い凄い。でも今は、そんな事よりも、アレよアレ。放置されてんじゃん」


「放置プレイかのぅ?」


「その言葉、ミルンの前で使うなよ。おっ、流石に軽くなったから、立ち上がったな」


 にしても何で、あの騎兵達は、フルプレートの鎧だけ回収したのか。ミスリルの戦斧は、持たせたままじゃん。

 

「流や、彼奴が来たぞぇ」


「ようやくか……何の用件かねぇ」


 そっと、フルプレートでは無くなった、誰かさんを見下ろして、確認する。


『ここを開けて下さーいっ。私は、エルララルラ・ポーノグリトス・ノブストン。大国ノブストンの、女帝なんですよーっ』


「なあ黒姫」


「なんぢゃ?」


「アレ、女帝って言ってんだけど」


「その様ぢゃの」


『開けないとっ、この門壊しちゃいますよーっ』


 物騒な事を言っているが、さっきまで散々騎兵に引っ張られて、帰っていた奴が、何を言ってるのだろうか。


『うるちゃんを、返してーっ』


 女はそう言うと、背負っていた戦斧を手に持ち、本気で門を壊す気の様だ。


「うるちゃんって、誰だ?」


「知らぬのぢゃ」


「うるちゃんうるちゃん……円堂?」


 下で括られたまま、大人しくしている円堂に、顔を覗かせて聞いてみる。


「おーい、自称大魔法使い様や」


「何よ……」


「太々しい態度乙っ。お前の事を、うるちゃん呼びする奴に、心当たりはあるか?」


「えっ……うっ、うるちゃん……まさかっ、あの子が来てるのっ!?」


 急に円堂の奴が、顔面蒼白状態です。あの反応は、知り合いが来た嬉しさと言うよりも、恐怖の大魔王が来たって感じだな。


「茶髪ロングの背が低い、ほんわかした喋り方の奴だったぞ。今門前まで来てる」


「っ、絶対に門を開けないでっ! あの子が来てるのならっ、障害物が無いと危険だわっ!」


「んんっ? 門を開ける気は無いけど、そんなに怖い奴なのか?」


「怖い……で済めば、どれ程楽かっ……」


 意味が分からない。あの女のどこに、そんなにも恐怖する理由が、あるのだろうか。


「流や、彼奴が動きだしたのぢゃ」


「ほいほいっと」


『本当にっ、壊しちゃいますからねーっ』


「ミスリルの斧だから、門ぐらい壊せるだろうけど、斧がデカ過ぎて、上手く持てて無いじゃん。あれじゃ、マトモに振れんだろ」


「そうぢゃの」


『もうっ、知りませんからああああああっ!』


 女は斧を振りかぶり、そのままスポット斧が抜け、振りかぶった勢いそのままに、ヒュゴッ────と首都へ一直線。


「んっ?」


「のぢゃっ?」


 ミスリルの斧が、首都の城壁上部に穿たれた瞬間、スゴオオオオオオンッと、大きな爆砕音が、鼓膜を震わせた。


「えーっと、んんっ!?」


「城壁が、抉れとるのぢゃぁ」


『あれっ、斧は? あっ……またやっちゃったっ!? 修繕費がっ、大臣に怒られちゃうっ』


 またやっちゃったって、あの女、何回も城壁を壊してるって事なの? て言うか、今の光景は何なの? 斧がヒュゴッて……。


「円堂をっ、問い詰めねば……」



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