13話 天然混じりの恐怖のドジっ子.2
四月十一日、午前八時を、お知らせします。
今日の俺は、くそ暇なのよ。掘りを作る作業を、もっとゆっくりやれば良かった。
「ノブストンの奴等、動きを見せないな」
「肯定。索敵範囲内には、非戦闘員しか確認出来ません。膠着状態と断定」
「だよなぁ……敵さんの数も、思ったより少なかったし、各地にばらけてるのかね」
「あの規模の都市ですと、数万単位の兵員が居る可能性、大。油断は禁物かと」
「へいへい、油断しませんよ」
暇すぎて、こうして簡易小屋から、向こうの首都を監視してるんだけど、何も来ないのよ。
「ここから見ても間違い無く、ジアストールの首都よりか大きいのに、攻めて来ないとか」
それに、通信機なんて持ってるのなら、他の領地に応援要請をして、俺達を包囲する事なんて、簡単な事だろうに。
「待てよ……通信機があっても、即応援に来れる様な、移動手段が無いのか」
「マッスルホース型のゴーレムを使った、移動手段のみと推測。迅号と同型機の起動は、確認されておりません」
「やっぱり、同型機ってあるんだな。迅号よりも、性能は上なのか?」
「否。迅号のロースペックモデルのみ、増産されておりました」
統括機がそう言うのなら、間違いは無いな。となると、ドールの姉妹機達も、ロースペックモデルになるのかね?
「流。ノブストン側に動き有り」
「おっ、ようやく動くか。万の軍勢で攻めて来るか、それとも、交渉人を出して来るか……」
「楽しんでますね」
「こう言うのは、楽しまないとだ」
川向こうを観察すると、どうやら一人でこっちに向かって来ている。が、交渉人にしては、やたやと重武装。あれ、フルプレートじゃね?
「……よろけてんなぁ」
「肯定。転けましたね」
「……踠いてんぞ?」
「肯定。鎧の重量過多で、起き上がれない模様」
「うわぁ……這いずって来てる」
朝から恐怖映像ですか? フルプレートを着込んだ、ゾンビか何かだろうか。
「背中に戦斧を確認。解析……ミスリル製と断定。高級素材にて、奪取を推奨」
「あの這いずってる奴が、橋まで来れたら、空間収納で貰う事にしよう」
ミスリルの斧なんて、超貴重品じゃん。
武装して来てるって事は、敵対の意思が有るって事だし、有難く頂戴してやろう。
そう決めて待つ事、一時間。
「……力尽きてんじゃん」
「肯定。あと数メートルで橋にも関わらず、体力が尽きた模様」
「んっ? また誰か出て来たな。騎馬が三騎?」
その騎馬達は、フルプレートに近付いて直ぐ、その足に縄を括り付け、そのままズルズルと首都へ、引っ張って行った。
「……えっ? 今の何?」
「鎧の者を、回収しに来ただけと推測」
「うんんんっ?」
動きを見せたと思ったら、何かのコント?
「フルプレートの奴は、何がしたかったの?」
「不明」
「……朝飯食べるか」
「燃料の充填を、お願い致します」
朝飯は軽く、パンと紅茶にしようかね。
「んしょっ、んしょっ、朝の運動終わりっ」
「お帰りミルン。黒姫はどうした?」
「もう来るのっ。ご飯を下さいなっ」
ミルンは朝からガッツリ派だから、作り置きのカツ丼を、朝食にしよう。
「のぢゃぁ、疲れたかやぁ……」
「お疲れさん。簡易の柵、結構出来上がってるじゃん。流石でぶドラ」
「早う終わらせてっ、酒が飲みたいのぢゃっ」
「さいですか。黒姫はパンとご飯、どっちにするよ? ご飯ならカツ丼だけど?」
「パンで良いのぢゃぁ」
「はいよ」
空間収納から、カツ丼、ファンガーデン特製、ふわふわパンを四つと、紅茶セットを取り出し、ささっと淹れたら、準備完了。
「じゅるっ、毎食お肉は最高なのっ」
「カツ丼に飽きないのに、ビックリだよ……そんじゃあ手を合わせて、頂きます」
「いただきますっ!」
「頂くのぢゃぁ」
「流。燃料の充填を────」
ドールが言い終わる前に、左手で水晶の顔面を掴み、右手でパンを頬張る。
慣れたもんですよ。
「それじゃあ、食べながらで良いから聞いてくれ。今日の予定だけど、ミルンとドールに、お願いしたい事がある」
「ムゴムゴっ、なあに?」
「燃料充填率……八十七パーセント……」
「迅号を使って、アッジスノードに居る、王様かデンバー副団長。それと、迅号に乗れるだけの兵を、ここまで連れて来て欲しい」
迅号なら、往復二時間。
兵の準備をしたとしても、三時間程度。
「ミルンが操縦しても良い?」
「速さ重視だから、許可します。けど、人を跳ね飛ばしたりは、駄目だからな」
「かしこまっ! ムゴゴゴゴゴゴんぐっ、ご馳走様でしたっ! ドール早くっ!」
「燃料充填率……九十パーセント……」
そんなに急いでも、充填スピードは変わらんからね。可愛い尻尾がローリング。やる気満々、目が本気のミルンさんです。
「にしても、さっきの鎧の奴……なんだったんだ?」




