13話 天然混じりの恐怖のドジっ子.1
四月十日、朝七時。
橋の向こう側には、未だ手当てを受ける者や、悲鳴を上げる者が多く、こっちを気にする余裕が無い……いや、あれは違うな。
「掘り掘り掘りっ。こんな感じでどう?」
「良い感じの穴だ。おーい、黒姫。ここに丸太を差し込んでくれ」
「我、またコレかのぅ」
余裕が無いと言うよりも、黒姫のでぶドラモードを恐れて、目を逸らしてるのだろう。
この気に乗じて、こちら側の橋の手前に、昔ながらの開閉式の門を、建造中。
「これぐらいは、簡単だな」
「お父さんは、何もして無いよ?」
「ミルンさんや。俺は現場監督だからね? 見るのがお仕事なんだ」
作ったミニ砦を、空間収納を使って、そのまんま橋の手前に設置。そこにロープの巻き上げ機を取り付けて、人力で回せば、橋の門が開く仕組みだ。
巻き上げ機は、何処から出したって?
ドールに作って貰いました。図面も勿論、ドールに書いて貰いました。
「資材と重機に、使える職人が居ると、チート過ぎる早さで終わるな」
「流や、終わったら酒を貰うぞえ」
「分かってるよ。酒と肴だな」
「ミルンはお肉を所望しますっ」
「燃料の充填を所望します」
ファンガーデンに帰ったら、ちゃんとボーナスを出さないと、後が怖いわ。
勿論ドールにも、給金は発生する。
立場上メイド扱いだし、給金を渡さないと、他のメイド達に示しが付かない。
「あとは……お前らをどうすかだな」
「解放しなさいよっ! 私はノブストンじゃ無くてっ、レッツァマーダ所属なのよっ!」
「私もレッツァマーダに亡命するわっ」
「こかっ、治療をっ……」
「あばぶぅっ……玉がっ」
「だいぢょぉぉぉっ」
「ぶふっ、はぎぞぅ」
円堂、ぺぺルーノ、ノブストンの守備兵四人の処遇を、どうすべきか。
「守備兵四人は要らんか。黒姫、投擲構えっ!」
「ミルンにやられた者は、治さんで良いのかや? 股間を押さえて、苦しそうじゃが?」
「命が有るだけマシだろ。狙いはあそこの、治療テント上かな」
「仕方無いのぅ」
でぶドラ黒姫による、大遠投。
丁度良いクッションも出てるし、黒姫のコントロールなら、死にはしないだろう。
「ほれ御主ら、国へ帰れるのじゃ」
「えっ、たっ助け────」
「いやああああああ────」
「だいぢょおおおおおお────」
「おろろろろろっ────」
大遠投の筈が、何で下投げ?
丁度良い感じに川の上を跳ねて、向こうのテントに突っ込んだから、同じ事か。
「ちゃんと防護の魔法を、かけてやったわ。死んでは困るのじゃろう?」
「流石黒姫、伊達に魔龍と呼ばれてないな」
「はっ? 魔龍ですってっ!?」
「うおっ、何だよ円堂。急に声上げるなよ」
「そんな事どうでも良いのよっ! 貴方今っ、あのドラゴンを魔龍って言ったわねっ!」
何こいつ? 前にちゃんと、説明しただろうに、これ見て気付いて無かったの?
「円堂お前……黒姫を何だと、思ってたんだ?」
「どう見てもっ、人化出来るドラゴンじゃないっ! 龍って言ったら胴長でしょっ!」
「あぁーっ、それは俺も思ってたわ。でもな、本当にあのでぶドラが、魔龍なんだよ」
「嘘よっ……まさか、実在していたなんて……」
この円堂の反応は、何だろうな。怖がっていると言うよりも、単純に驚いてるのか?
「まあ、気にせんで良いか。おーい、ミルンさんやーい。次のお仕事だぞーい」
「はーいっ。今行くのーっ」
「ふむ、次は何をするのじゃ?」
「えっとな、地面に図を書くから、ちょっと待ってくれよ。ここをこうして、こうか?」
橋の門の形は作ったので、後はドールに任せておけば、良い感じにするだろう。
じゃあ俺達は、何をするのか。
こっち側に柱を立てて、掘りを作り、後方に残るノブストン兵達を、首都へと帰さない。
「堀は俺が作るから、穴掘りと丸太刺しは、ミルンと黒姫に任せるぞ」
「かしこまっ!」
「どれ程丸太を敷き詰めるのじゃ?」
「結構有るぞ。"空間収納"っと、これ全部だ」
五百本以上はあるだろうか?
ちゃんと植林して、ミユンの力で爆速成長させた木材だから、結構太いのよ。
「今回は、雑で良いからな。どうせまた、アッジスノードの奴等にやらせるし」
「成程のぅ。下準備と言う訳かや」
「その通りだ。こちら側に残ってる、ノブストン兵に対しても、有効だろうしな」
円堂とペペルーノを見張るだけなら、知覚でどうとでもなるし、黒姫も居る。ダブル知覚をやっておけば、逃げられないだろう。
「ほいっ、行動開始だ」
「穴掘るのーっ!」
「早く酒が、飲みたいものじゃ」
そうして、えいさほいさと簡易の柵や、ガチ目の掘りを作り上げ、午後三時のおやつ時。
「……俺の速力と、空間収納を併用したら、凄え早くに終わってしまうとか」
ミルンと黒姫は、柵作りの真っ最中。
穴掘りを手伝うか? いや、下手に手伝えば、ミルンが拗ねちゃうから、駄目だな。
「それなら、ドールの方を手伝って……もう殆ど完成してるから、意味無いか」
それじゃあ、休憩も兼ねて、お茶菓子の用意でもしようかねぇ。
そう思い、簡易小屋へと戻って、空間収納から取り出したるは、炊いて入れておいた、ほかほかの白米。
「これを土鍋に入れて、潰して捏ねるっ! 潰して捏ねるっ! 捏ね捏ねしまくるっ!」
そこに貴重な砂糖を少々、魚醤も少しでさらに捏ねて、丸めたら完成だ。
「甘じょっぱ団子だな。どれどれ……やっぱ、餅米じゃ無いから、弾力がイマイチか」
これでも普通に、美味しいけどな。
「んしょっ、んしょっ、匂いがするのっ」
「やっぱ梯子は使わないのね……」
「お団子っ! ミルンにも下さいなっ!」
「勿論だとも。ほれっ、ミルンの分」
「頂きますっ! もちゅもちゅ……旨しっ」
黒姫の分は、来たら渡すか。
どうやら、ミルンの穴掘り作業は終わった様だな。遠くで黒姫だけ、ひたすら丸太を、地面に刺してるわ。
『ちょっとーっ! 私達の分は無いのーっ!』
「……カツ丼が良いかーっ?」
『言い訳無いでしょっ!? 意地悪しないで、持って来なさいよーっ!』
「チッ、煩い奴だなぁ。ミルンさんや、食べ終わったらで良いから、下のアイツらにも、これを持って行って欲しい」
「もちゅもちゅ、んぐっ、かしこまっ」
これで少しは、静かになって欲しいもんだわ。




