13話 天然混じりの恐怖のドジっ子.4
斧を手放した女が、その場で頭を抱えてる内に、下に降りて円堂を問い詰める。
「おい円堂、あの女……何?」
「何ってこの国の女帝よっ! 早く縄を解いてくれないとっ、巻き添えを食うじゃ無いっ!」
「はあっ? あんなのが女帝な訳無いだろ」
「ほんわかした茶髪の子なんでしょっ! この国の女帝っ、エルララルラ・ポーノグリトス・ノブストン以外に居ないわよっ!」
一人で来る時点で、女帝じゃ無いだろう。
だって国のトップだぜ? そんな奴が護衛も無しに、敵陣真っ只中に来る訳無いじゃん。
「それが本当なら……ノブストンの女帝は馬鹿なのか? 何で、護衛も無しに来るんだ?」
「護衛なんて付けたらっ、死んじゃうじゃないのっ! 早く縄を解きなさいよっ!」
「護衛を付けたら……死ぬ? ぺぺルーノ、俺に分る様に説明しろ」
円堂は若干テンパってるから、話にならんし煩過ぎる。と言う事で、もう一人の捕虜であるぺぺルーノに、話を聞こう。
「だだだめですわっ! 早く逃げませんとっ、巻き込まれて死にますわっ!!」
「お前もかよ。何、あの女相当ヤバいのか?」
「ヤバいですわっ! アレに比べたら……っ、翼竜と一対一で戦う方が、マシですのよっ!」
翼竜とのタイマンが、マシ?
「翼竜って、ワイバーンだよな? そんなんとタイマンした方が……マシかぁ」
「兎に角っ! 少しでも離れたいからっ、縄解いて解放しなさいよっ!」
「……門開けてみるか」
「何でよっ!?」
「私達を見殺しにする気っ!?」
だってなぁ、ボス自ら来てんのに、挨拶しない訳には、いかないだろ?
『うるちゃんの声が聞こえたっ。うるちゃーんっ、そこに居るんですかーっ』
「ほらっ、呼んでるぞ、うるちゃん」
「っ、絶対に開かないでっ。近付かれたらっ、貴方だって危ないんだからっ」
「へぇーっ……そんじゃあ上から、声をかけてみましょうかね。開けるのはそれ次第だな」
「開けないでっ!」
そんな言葉を無視しつつ、梯子を登って簡易小屋へと戻り、小窓から下を確認。
『うるちゃんの声が、聞こえたと思ったのに。誰かーっ、開けて下さーいっ』
門を開けたら、お目当てのうるちゃんとやらが、震えて座っていますよ。
「さて黒姫……アレ、女帝だってさ」
「話し声を聞いておったが、あの女子が女帝なのかや? 馬鹿力を有した、奇妙な小娘にしか見えぬがのぅ」
「それ同意な。あの馬鹿力で殴られて、俺が耐えれると思うか?」
「下の二人が殴られれば、破裂する威力ぢゃろうが、御主ならば"耐えられよう"て」
「破裂って……怖いんですけど」
円堂やペペルーノが、怖がる筈だわ。
『門を壊しちゃいますよーっ』
斧の時と同じ事言ってんじゃん。
あの馬鹿力で殴られたら、門どころか、円堂とペペルーノも一緒に、粉々になるぞ。
「面倒だなぁ。ちょい行って来るから、何かあれば、対処宜しくな」
「任せておるのぢゃぁ」
「ほっと、よっこいせっ……ふぅ」
小窓から外に出て、門の上に着地成功。
丸太をまんま使ってるから、そこそこの足場になってて、助かるわ。
「ほらーっ、叩いちゃいますよーっ」
「おーい、お嬢ちゃんやーい」
「? 今、誰かの声が……?」
うん、何で上を見ないんだい? 前後左右確認したら、上下も見るものだろう。
「下だぞーい」
「下? 小人さんですかーっ?」
「後ろだぞーい」
「後ろ? 誰も居ない? 透明人間さんですかーっ? 何の御用ですかーっ」
「上だぞーい」
「上? お空から?」
うんうん、首都側を向いたまま上を見ても、綺麗な青空が、見えるだけだぞ。
「ボソッ(皿くれ女より……地雷な気がするわぁ)」
「誰も居ない……幻聴でしょうか?」
「そのまま回れーっ、右っ!!」
「えっ? まわっ、まわあああっ!?」
上を向いたまま、何故か左向きにぐるっと回って、地面に倒れる不思議っ子。
丁度良いから、このまま聞こうか。
「痛いですぅ……シクシクっ」
「お嬢ちゃんのお名前は?」
「誰ですかーっ。私の名前は、エルララルラ・ポーノグリトス・ノブストンですよーっ」
「年齢は?」
「十歳ですーっ」
「趣味は何ですか?」
「人形作りとーっ、お散歩ですーっ」
「友達は何人居ますか?」
「友っ……うぅっ、居ないですよーっ」
何この女帝……聞いたら全部答えるとか、思った通りの、皿くれ以上にヤバい奴。しかも、何で十歳で女帝してんの?
「うるちゃんを返してぇーっ」
「うるちゃんは、貴女の友達ですか?」
「うるちゃんは、私の友達ですよーっ」
「お前今さっき、友達居ないって言ったやん」
いかんいかん。あの不思議っ子に耐え切れず、普通にツッコミを入れてしまった。
「さっきから、誰ですかーっ」
「いや気付けよっ。上に居るだろうに」
「上? 誰ですかーっ!?」
何その驚き様……お前絶対人見知りだろ。と、心の中で思うだけにしよう。
相手は十歳の小娘だし、例えミルンより背が高く、例え見事なルックスでも、ドゥシャさんに比べたら、まだまだ未熟。
「甘いわっ! 十年後にまた来るが良いっ!!」
「急に何ですかーっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「「……えっ!?」」
良しっ、俺の誘導術は、衰えていないな。
「変態……貴方もしかしてっ、うるちゃんが言っていた、変態さんですかーっ!?」
「誰が変態だゴラァッ!?」
「ひぃっ、変態退散っ!」
女はそう言うと、橋の床をバギィッと握り締め、俺目掛けての────大暴投。
うん……俺一切動いて居ないのに、バビュンと言う音だけが、横を通り過ぎて行くの。
「可笑しいなぁ……数メートルを、ここまで外すコントロールって、早々無いぞ?」
「当たれえええーっ! えいっ! えーいっ!」
「えっとぉ……頑張れーっ!」
「頑張りますーっ!」
何を頑張るんだ? そして俺は、何を応援したのだろうか……分からん。それにこのまま、橋の一部を捥ぎ捥ぎされると、いつか壊れそうで、不味い気がする。
「ほいストップっ!!」
「っ……何で当たらないんですかーっ」
「お前下、下見てみ。橋の"石を抉り取る"とか、足下危ないだろうに」
「……やっちゃったあああっ。あっ────」
「ほら、また転けちゃうぞ────ぶっ!?」
俺ならば、あの女の馬鹿力に耐えれると、黒姫は間違い無く言っていた。
耐えられる。
そう、効かないでは無く、耐えられると。
転けた女の引っ掛けた石が、勢い良く飛び跳ね、そのまま俺の腹部へ、ジャストミート。
「ぉぉぉぉぉぉっ、糞痛ってえええっ!?」
「うぅ、痛いですよーっ」
「何だ今のっ……狙ってやったのかっ?」




