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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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14話 誰の後悔後先立たず.2


 12/14 加筆修正致しました。



 闇ギルドのボスらしき者に、首根っこを掴まれまま、屋敷の奥へ奥へと、入って行く。


「(ここがっ、闇ギルド……っ)」


 至る所に、ギルドの構成員が徘徊しており、こちらに目を向けるなり、跪き、頭を垂れる。

 諍いの真っ只中だろうと、拷問の途中だろうと、このボスの視界に入ったなら、皆一応に跪き、頭を垂れる。

 この男は、それ程までに、恐ろしい存在。


 ザルブは、東の地に普及していると言う、畳と言われる床が敷かれた部屋に通され、座らされた。

 何故、ブーツを脱がなければならないのか。

 しかし、『脱がねば足を切り落とす』と脅されれば、脱ぐしかあるまい。


「そんじゃぁのぉ。改めて、儂がここのボスをやっちょる、ヤナギと言うもんや。宜しくのぉ、神官さん」


 口元は笑っているが、目は笑っていない。

 下手な事を言えば、私はどうなるのか……想像出来ない訳が無い。


「わっわわ私はっ、アルテラ教神官っ、ザルブ・ポワードである」


「ザルブさんねぇ。それでぇ、今日は何の用ですかのぅ。三つの事除いてぇ、儂らはなんでもするけぇ」


「話が早くて助かるっ。闇ギルドに依頼したい内容が────」

 

 出来うる限りの事を話した。

 大神官様の事を、口に出してはならないが、ラクレル村での出来事や、そこから避難して来た者達の話を、嘘を混ぜ、より残酷な出来事だったかの様に説明した。


「以上だっ。貴様達に依頼したいのは、魔王を滅する事と、関わった者全ての処分だ……」


 特にっ、私の邪魔をしたあの筋肉とっ、穢らわしい獣の娘は、生かしておかぬ。


「魔王のぉ……なぁザルブさん。その魔王とぉ、獣族の子供がぁ一緒に居たんは、事実で間違い無いんじゃなぁ」


「間違い無いっ!! あの穢れた獣がっ、私が家の家宝を盗みおったのだっ! あの犬畜生の小娘がっ、忌々しいっ!!」


「そうかぁ……犬人の小娘ねぇ」


 ザルブは、顎に手を当てて、何やら考え事をしているヤナギを見る。

 先程の異様な圧。

 それこそ、高ランクの冒険者達が、子供に思えてしまう程の、威圧感。

 この者ならば、あの筋肉の塊を屠る事など、容易い事であろう。

 

「のぅザルブさん」


「何だ……」


「すまんがぁ、こん依頼は受けられへんなぁ。儂の矜持にぃ、反するけぇのぉ」


「はっ?」


 今っ、この男……何を言った?

 えっ、闇ギルドが、依頼を断ったのか?

 何故……何故断るのだっ!


「何故断るっ!? 報酬なら言い値で支払う! 欲しい物が有ればっ、何でも差し出そうっ! 頼むっ、私には後が無いのだっ!!」


「儂の矜持にぃ、反する言うたやろぅ」


「きょっ矜持!?」


「ザルブさん。このぉスラムにもなぁ、決まり事っちゅーもんがあってなぁ」


「スラムに……決まり事だと」


「一つ、孤児院の院長センセには逆らうな。二つ、子供にゃあ手ぇ出すな。まぁコレは、犯罪者を覗きってぇ注釈がつくけぇのぉ」


「っ、馬鹿なっ、貴様等は無法者だろっ……」


「そして最後の三つ目、自分の直感を信じろ。是等を守れんかったら、このスラムじゃぁ、生きて行く事は出来へんからのぅ」


 むっ、無法者の屑共が……っ、冒険者ギルドも、闇ギルドも、私の依頼を断るのかっ。


「以上じゃのぉ。おお誰か、客人のお帰りじゃけぇ、正面まで案内しちゃれ」


「待てっ! まだ話をっ!」


「なぁ、ザルブさん。爺からの忠告じゃぁ。そん魔王に手ぇ出したらぁ、間違い無く……あんたら皆んなぁ、終わるでぇのぉ」

 

 ヤナギのその言葉を最後に、知らぬ間に背後に居た者に首を掴まれ、そのまま闇ギルドから追い出された。


「ふっ、巫山戯るなぁっ! 何が闇ギルドだ! あの孤児院の院長が何だっ! 獣の餓鬼を殺すのにっ、何を躊躇うっ!!」


 喚き散らし、崩れかけの家屋に剣を振り、石を蹴り飛ばし、大地を叩く。


「ぐぅぅぅっ、こうなればっ」


 ザルブ・ポワードは、止めると言う手段を、思い付く事すら出来ない程に、追い詰められていたのである。


◇ ◇ ◇


 女王、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールは、未だ寝室にて引き籠り、あーでも無いこーでも無いと、流を城へ呼ぶ計画を練っていた。


 扉前で、あの煩いリズムを繰り出していた、馬鹿大臣の気配も無く、ある意味休日である。


「女王陛下。至急、お伝えしたい事が御座いまして、お休み中のところ、失礼致します」


 其処へ、この密室へとどうやって入って来たのか、影が姿を現した。

 この影は、流の居場所を把握する為に尾行させていた、影の一人である。


「影自ら表にでてくるとは、珍しい事もあったものじゃな。いつもなら呼ばんと、出て来ん癖にのぅ。何の用じゃ?」


 そう、この影はジアストールの暗部であり、女王となる前から、ルルシアヌに付き従っているが、呼ばないと出て来ず、呼んで命令した事が終わると、直ぐに居なくなる。


 小さい頃に、一人が寂しくて呼んで見たが、命令が無ければ直ぐ居なくなる。


「はっ、報告させて頂きます」


 孤児院の院長が、流に伝えた事。

 ミルンが何者か。

 あの場で影が見聞きした事全てを、女王、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールは聞いた。


「矢張り、そうであったか……兄様と獣族の子供。私の姪、ミルンであるか」


 あの正門で会った少女。

 黄金に輝く眼を見た瞬間、なぜか愛おしくなり、後ろから抱き締めてしまった少女。


「……兄様っ」

 

 感傷には浸れぬよ。儂は女王なのじゃから。

 しかし、こうして話を聞いていると、意味が分からぬ事がある。

 ミルンの母の事を、流は母さんと言った?

 歳も合わぬし、見た目も違うのに?


「女王陛下。流さんより、言伝がございます」


「何を言ってきたのじゃ?」


 影が珍しく、笑みを浮かべている。

 そんなに楽しい事かの?

 ふむふむ…………成程のぅ。


「中々に、面白い事を考えるな魔王め。良いじゃろう。孤児院の院長へ、儂からの言葉を伝えよ」


「畏まりました。直ぐにお伝え致します」



 影はそう言うと頭を下げ、ゆっくりと扉に向かうと、ドバンッと開け放った。


「何をやっとるか影っ!?」


「陛下あああ──っ!! やっとっ、扉が開いたああああああああ──っ!!」


 大臣が、待ってましたと言わんばかりに、書類の山を持って、寝室へと侵入して来た。


「謀ったなっ、影えええ────っ!?」


 女王の束の間の休日が、終わりを告げた。





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