表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/655

18話 破滅への序章(ヘラクレス視点).4


 2026/06/28 改稿



 獣族と人種の子供達が、笑顔で駆け回り、力を合わせて薪割りをしている、目の前の光景を、地べたに座りながら眺めている。

 昔のラクレル村で、見た光景。

 懐かしく思う、あの頃の記憶。

 あの惨劇の後、私自身が手放し、打ち砕いてきた、獣族と人種の繋がりが、何の因果か、今目の前に存在する。


「ふんふんっ、そんちょっ、どうしの?」


 肩の上に乗っておるのは、犬人のミウ。


「うむっ……何でもないのである」


 獣族は鼻が効く。特にこの、ミウのような犬人などは、何年経とうとも、同族を手にかけた者の臭いを判別し、牙を向ける──筈なのだ。


「おかおが、ふんってなってるよ?」


 それなのに何故かこうして、私の肩に乗り、この王都に来てからの二日間、寝る時以外はこうして、くっ付いて来るのだ。


「何だね……その顔は?」


「そんちょのまねっ」


 まるで私を、慰めるかのように。私を怖くないよと、言ってくれているかのように。


「眉間に皺が出来ておるぞ?」


「そんちょといっしょ」


「むぅっ……ならばっ、こうであるなっ!」


 全力で──笑顔を作る。

 作り笑いであろうと、こうして私を慕ってくれておる、この子供達の前で、暗い顔をしておれぬからな。


「ヘラクレスさーん、薪割り手伝って下さーい」


 狐人のノーインが、呼んでいるのである。


「分かったのである。ミウよ、落ちるでないぞ」


「つかんでいるから、だいじょぶっ」


「……頭が潰れそうなのだが」


 流君曰く、この姿勢は──肩車というらしいが、獣族の子供の力で、頭を掴まれるなど、常人ならば頭蓋が砕けておるぞ。

 そうして、子供達が斧を振るい、薪を割る姿を観察していると、どうやら上手く割れないようだ。力任せに斧を、振るうだけに見える。


「ノーイン。腕に力を込め過ぎであるぞ」


「えっ? でも、こうしないと割れないですよ」


「見本を見せるのである」


 口で伝えるよりも、見せた方が早い。

 片手で斧を持ち、軽く丸太に刃を食い込ませ、そのままの状態で軽く振ると、パッコーンッ──と音を鳴らして、丸太が割れた。


「えっ……」


「力を込めずとも、斧の重さを利用すれば、このように簡単に、割れるのであるぞ」


「いや、ヘラクレスさん……僕には無理です」


 狐人のノーインならば、簡単に出来ると思うのであるが……自身がないのであろうか。


「そんちょうが、きんにくしてるっ」


「本当だっ! 俺達もやるーっ!」


「ぼくはすででわれますよおおおおおおっ!」


 駆け回っていた子供達が、次々と集まり、私を囲んでわいわいと──何とも楽しいものだ。一人だけ、規格外の子供が居るのだが……うむ、将来が楽しみな子供である。

 そうして子供達一人一人に、薪割り方法を教えつつ、再度手本として、力を込めずに斧を振り、薪を割る。


「身体に負担をかけぬように、重心、斧の重さを意識して、軽く振るだけで──ふんっ!!」


 丸太を重ねたモノを、一刀両断。若かりし頃はよくこれで、剣の修行をしたものである。

 

「むりっ!」


「きんにくがほしいのっ!」


「そんなの可笑しいですよね?」


「ふんっ! ふんっ!」


「さすがわたしのそんちょっ」


 どうやら子供達には、まだ早いようで──「ぼくはできましたああああああ──っ」あるなと思ったが、本当に素手で割っておるっ!?


「モンゴリこわぃぃぃっ」


「怖っ! モンゴリ素手って……怖っ!」


「モンゴリさんっ、おのをつかいましょ?」

 

 そんな楽しい時間を過ごして居た時、ふと何処からか──荒々しい声が聞こえてきた。


「何だ……正面からであるか──っ、そこに隠れておる者っ! 姿を現わせっ!」


 ねっとりとした殺気が、孤児院の裏手にある暗がりの奥から、ゆっくりと近付いて来る。そして、夕焼けが──その殺気を放つ者の姿を、ハッキリと私に見せた。


「なぜっ、お主がここに居る……っ、ジストン」


 剣を片手に歩いて来るのは、ラクレル村から王都へと避難した、村民の一人、ジストン。

 流君の怒りを買った者の一人で、右腕の肘から先はなく、左片目も潰れている。


「ヘラクレス様こそ……こんな所で一体何を、なさっているのですか?」


 ジストンは何故、ここにいるのか。そんな事よりもこの状況は、非常に不味い。ジストンの背後からも、数多くの殺気を感じる。


「なぜ、こんな獣風情と……仲良く?」


 ジストンの背後から、一人、また一人と、姿を現すその者達全員が、ラクレル村から避難して来た、怪我を負った村民達。その全員が──武器を携え、この私を、子供達を見ている。


「その物騒な物を、仕舞うのだ。ここは王都の孤児院であるぞ……ラクレル村ではないのだ」


 何とか抑えようとするが、ジリジリとにじり寄る様に、村民達は近付いて来る。


「獣はっ、狩らなきゃですよね? ヘラクレスさまぁあああああ──っ!!」


「俺達を裏切ってっ、魔王に付いたのかっ!」


「このっ、裏切り者おおおおおっ!」


 彼らの目は、狂っていた。


「あの時、アンタが負けなきゃ……俺達はこんな苦労する事はっ、無かったんだっ!」 


「獣を殺せっ! 皮を剥げっ! 一匹たりとも逃すなああああああっ!!」


「娘はなあっ、目を焼かれたんだっ!」


 以前の私の様に──いや、それ以上の狂気に身を委ね、まるで何かに、操られでもしているかのように──狂っていた。


「まさか……"幻覚薬"っ、不味いのである!?」


「アルテラ教に栄光あれえええええええっ!!」


 唯一、村民でない顔も知らぬ者が、声を上げたと同時に──躊躇いもなく一斉に、襲いかかって来た。


「子供達よ! 早く建物の中へ行くのだっ!!」


 子供達を急ぎ、建物の中へ誘導するも、肩から降りていたミウが──「まずは一匹いいいいいいいいい!」──動けずにいた。

 剣を振り下ろしているのは、ジストン。

 その瞳には、最早狂気しか、感じない。

 その握る剣が、振り下ろされ、「ぬぐぅっ」ミウを庇った私の背中を、切り裂いた。


「そんちょっ!?」


「ぐぅぅぅっ、馬鹿者があああああああっ!!」


 痛みを堪え──あらん限りの力でもって、その場で腕を振り、刃を振り下ろした姿勢のままのジストンを、「ごげぇっ!?」と吹き飛ばす。

 今の感触だと、肋骨は折れ、内臓は潰れ、もう二度と、まともには動けぬであろう一撃。


「そんちょっ、だいじょうぶ?」


 ミウを泣かせてしまった。私が村民だからと躊躇した所為で、危うくこの子を、死なせてしまうところであった。


「大丈夫である。こんなもの、擦り傷にもならぬ……ミウは、怪我をしておらぬな?」


「してないっ」

 

「ならば良しっ」


 実際、スキルを使う余裕がなかった為、致命傷ではないが、それなりにダメージは負った。だがそれだけだ。この程度の傷なぞ、戦を駆けていた時ならば、当たり前に負っていた。


「ミウ。皆んなと一緒に建物に入って、院長の所へ、避難するのである」


 今の私の力を見た所為か、他の村民は剣を構えるも、震えたまま固まっている。


「いやぁっ」


 首を横に振るミウ。そんなミウの頭に手をのせ、優しく撫でて、笑顔で伝える。


「私は大丈夫だから、他の子達と待っていて欲しいのである。大丈夫であるぞ……私はこの見た目通り、強いのであるっ」


 白い歯を見せ、力コブを作り、足早に近付いて来たノーインへ、ミウを託す。


「そんちょっ! まわしてーっ、えがお!」


 唐突にミウが──マッスルポーズをした。だからこそ全力で、犯した過去の罪と、向き合わねばならない。逃げる事は、許されない。


「ふんっ、笑顔っ!!」


 ミウが孤児院へ避難するのを、しっかりと見届けて、ゆっくりと村民へ向き直る。過去の私を見るような、狂気に満ちた顔。

 そうさせたのは──この私だ。

 獣族を率先して、殺してきたのは、このヘラクレスであり、村民達は、従っていただけ。だからこそこれは、私の罪でもあるのだ。

 それでも私は──守りたい。

 ここの子供達を、守らねばならぬ。


「っ……そうであるか。あの時の流君は、この様な気持ちだったのだな」


 私はもう、迷わぬ。


「例え、ラクレル村の村民達だったとしてもっ」

 

 二度と、同じ過ちを繰り返さぬ。


「私の愚かな行いの、結果だとしても……」


 この者達にも、罪を重ねさせぬ。


「子供達にっ、危害を加える事は許さん!」


 自らの無力を嘆き、二度と使わぬと誓った、この力でもって、子供達を守るのだ。


「限界突破ああああああ────っ!!」


 着ていた服が弾け飛び、全身の筋肉が血管を浮かせながら、盛り上がる。それはさながら、オーガの如し──異形。


「村民達よ……死にたくなければ逃げよっ!!」


 あの時──流君と殺し合った時ですら、このスキルを使う事をしなかった。


「ひっ、ひあああああああああっ!!」


 南の戦城で、悪鬼のヘラクレスと呼ばれるに至った由縁であり、ステータスを二倍にさせ、肉体の限界を取り払うスキル。


「にっ、逃げろおおおおおおっ! 化物だあああああああ────ぎゅぷっ!?」


 向かって来る者は、腕を握り潰し、脚を砕き、振り回して投げ捨てる。

 殺しはしない。が、ジストンと同じく、二度と動けぬ程度には、壊し尽くす。その刃が、子供達に行かぬように、徹底的にと。

 その蹂躙は──瞬く間に終わった。


「ふぅぅぅ、ぐふっ……はぁ、はぁっ、矢張り、反動がデカいであるなっ……」


 周囲からは呻き声が聞こえるが、誰一人として死んではおらず、そしてその者達は、誰一人殺してはいない。


「聖女様に治して貰うよう、頼まねば。この者達に薬を盛ったのは……っ、服を着ねばな」


 背中の痛みを堪えながら、孤児院へと入ろうとしたその時──「がっ!?」突然の突風に体が浮き上がり、そのまま地面を転がった。


「ぬぅっ……痛っ、何が」


 直ぐに腰を上げ、何が起きたのかを確認しようと顔を上げて──ソレを見た。真っ赤な炎が、孤児院を包み込んでく、その光景を。


「なっ……何だこれはっ! いかぬっ、子供達よおおおおおおおおお──っ!!」


 傷の痛みも忘れて、ただ私は全力で、孤児院へと──炎の中へと飛び込んで行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ