13話 ミルンと楽しくお買い物.4
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「ハイオークの魔石、金貨七十枚。呪詛返しの指輪、金貨二百枚。防護の腕輪、金貨百五十枚での買取りとなります。お確かめ下さい」
ドシャっと重たい音と共に、目の前に置かれた皮袋から覗く、光り輝く硬貨達。
「……それで、これって実際、幾らなの?」
「はい?」
「田舎から来たから、金持つの初めてなんだ」
ネリアニスさんが、何を言ってるんだろう、この男は。みたいな顔で、こっち見てるんだけど、貨幣の価値なんて知らんて。
「はじめてのっ、おかね!」
ミルンさんや、俺もだぞ。
と言う事で、ネリアニス副ギルド長による、簡単貨幣講座の開催です。
お金の単位は、ストールと言うらしい。
ジアストールだからストールって、物凄く安直な気がするけど、分かり易いから良いのか。
美味しいパン一つで、百五十ストール。銅貨一枚と、石貨五枚で買えると。
「今回の買取りって、俺は何ストールなの?」
「流さんは、七百万ストールになります」
「……マジかっ」
金貨一枚十万ストール。
銀貨一枚一万ストールで、どうやら、千ストールの貨幣は無い様だ。
銅貨一枚百ストール。
石貨一枚十ストール。
「と言う事はっ、ミルンは三千五百万ストールって事にっ!? 偉い大金だぞ……」
「おかねがたくさん!」
「ミルンさんや。お肉……店ごと買えちゃうぞ」
「おみせごと?」
簡単貨幣講座、以上になります。
それと同時に、ネリアニスさんの、ミルンの尻尾モフモフタイムも、終了となります。
「有難うネリアニスさん。今まで村で過ごしてたから、気にした事なくてさ」
「それにしては、商談に慣れているご様子でしたが……まあ良いでしょう」
あっぶねーっ、ギリギリ誤魔化せた。
違う世界から来たので、貨幣の価値を教えてぷりーずなんて、言える訳が無い。
因みに、ギルド長のゴッズは、悔しそうに裏に引っ込んで行った。
「そんじゃっ、お暇しますか」
「おにくをかうのっ」
ミルンがシュバっと、ネリアニスさんから離れて、今度は早歩きで戻って来た。
長居をする気は、無い様だな。
「えっ……もう行かれるのですか……」
ミルンは大金を手にして、御満悦な様子。
日本でも、こんな大金を一瞬でゲットだなんて、早々無いからな。
「それじゃあ、また何か有れば来ますね」
「ばいばいねりあにす」
「あっ……」
ネリアニスさんが、手をワキワキとさせながら、名残惜しそうに手を振っている。
さらば冒険者ギルド。
また何か有れば来ますねと言う言葉は、日本で言うところの社交辞令です。
「よっしゃミルンっ、色々買い漁るぜひゃっはああああああ────っ!!」
「おにくをかうのおおお──っ!!」
冒険者ギルドを出た瞬間、予想外の大金を得た喜びに、感情が爆発しちゃいました。
恥ずかしく無いぞ?
無一文から、脱出出来たからな!!
お金は勿論っ、『空間収納』にばっちり保管して、盗まれる心配も無しっ!!
「最高のスキルじゃん」
「はやくおにくっ!」
ミルンを肩車して、周りからの視線を無視しながら、王都の繁華街を歩く。
スラムでは気にしなかったが、歩いていると、通行人がジロジロ見て来るんだよなぁ。
主に、ミルンに対して。
「先ずは、肉屋を探して、香辛料やら野菜やらを買う……違うっ、最初は服だ!!」
「おにくじゃない!?」
「ミルンっ、先ずはお洋服を買おう!!」
通行人が、視線を向けて来る理由。
俺とミルンの、服の所為だ。
俺は、門兵に赤ジャージを燃やされてから、ずっと門兵風の服を着ている。ミルンは、あの村でパクっ…見つけた、見窄らしいボロ着をずっと着ている。
イコール、臭い、汚い、逃げましょうな状態な訳で、周囲の人達の服装とは、雲泥の差だ。
「服屋はどこに……っ、今なら買える!」
「おとうさんっ、あっちにいくの!」
「流石ミルン、見つけたのか!」
ミルンが指差す場所へと移動したら、『へぃらっしゃい!』ザッ、串焼きの店でした。
「ミルン違う……これは服屋じゃ無い」
「おなかすいた!」
「……分かった。買うから涎を滝にしないっ」
マー◯イオンみたいになってるけど、その量の涎が出てるのって、おかしくね?
「店主、幾らだ?」
『串焼き五本で、六百ストールになりやす!』
「はいよ銅貨六枚ね……ほい」
『毎度っ、また来てくだせぇね!』
ミルンの嗅覚って、本当に凄いよね。
人混みの中、串焼きの匂いを嗅ぎ分けて、こうして来れるんだから。
少し離れてミルンを下ろし、人混みを見ながらの、実食タイムです。
「ムゴムゴッ」
「ミルンさんや、美味しいかい?」
「ムーっ!」
「俺に一本くれるのか? それじゃ、頂きますよと…むぐむぐっ……っ!?」
このタレの甘じょっぱい感じっ、醤油程濃くは無いが、肉に合う様に調整されておりっ、この異世界に来て初めて出逢うっ、しっかりとした味付け肉っ!!
「うっっっめええええええ────っ!!」
ミルンが、串焼きを口に入れたまま、固まって泣いている程に、旨過ぎる。
「モゴモゴっ、ぐすっ……モゴモゴっ」
泣きながら食べるのを再開したな。
尻尾がぶんぶんローリングしてるし、嬉し泣きする程って……欲しいな、タレ。
「良しミルンっ! さっきの串焼き屋から、タレの情報を貰いに戻ろう!」
「モゴ──っ!」
ミルンの目が、燃えています。
「おーいっ! 串焼き屋のおっちゃーっん!」
『ありゃ? さっきの兄さんと、嬢ちゃんでないですかぁ。どうしたんで?』
「その串焼きのタレの配合……教えて?」
『いや兄さん無茶ですわ。このタレは、ワテの秘伝ですから、譲れませんて』
「ミルンの餌食となるか、今直ぐ教えるか、二つに一つだぞ? なあミルン?」
「おにぐぅぅぅっ、じゅるっ……」
ミルンさんや、店主を喰う気なの?
流石にそこまでしちゃうと、お尋ね者になるから、大人しくしてような?
『っ……どうしても言うならぁ、五十万ストールでぇ、レシピは渡しますけど……兄さん達払えないでしょ?」
おっ、見た目で判断しやがったな。
ボロを着ててもっ、今の俺にはお金が有るから、超余裕で払えますねっ!!
「はい金貨五枚。確かに渡したぞ! レシピを早く出せレシピ!!」
「おにぐぅぅぅっ、じゅるっ……」
串焼き屋のおっちゃんは、唖然としつつも、言ってしまったからにはと、追加で商売には使わないように厳命され、自家用だと力説して納得して貰い、レシピをゲットしました!!
「やったなミルンっ! これで美味しいお肉が、いつでも食べれるぞっ!」
「おにぐぅ、おにぐぅ、おいしいおにぐぅ!」
俺とミルンはその場で踊り、串焼き屋のおっちゃんに、営業妨害するなと怒られ、その場を後にしました。
有難う串焼き屋のおっちゃん。
いつかまた、買いに来るからね。
そして直ぐ様、ミルンを肩車セットインっ!
「……今度こそ、服屋を探すとしますか」
「おとうさん。あそこ、おようふくいっぱい」
あそこって、何処なのミルンさん。
俺には見えないから、また指差しで、誘導係をお願いします。
「ミルンの振り振りスカート姿……っ、楽しみだっ!!」




