13話 ミルンと楽しくお買い物.3
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「ヤ◯ザ顔のおっちゃん……マジで怖かったぁ」
ミルンはアレだ、怖い物知らずだよね。
もう叩かないと言ったから、大丈夫だとは思うけど、心臓に悪過ぎるわ。
「スンスンッ、あせくさいの」
「冒険者ばかりなんだから、仕方無いだろ?」
「ひだりからにおう……」
確かに臭うけど、言葉は選ぼうね。
左に座ってる人が、『えっ、臭い?』みたいな顔をして、自分の臭いを確かめてるだろ。
「う◯ちのにおいっ」
「ミルンさんや、お口チャックしなさい」
「ちゃっくって、なあに?」
それは知らないのか。
確かに今着てる服とか、チャックじゃ無くてボタンで止めてるし、見た事無いもんな。
「お口を、んーってする事だよ」
「おくちとじるっ。ちゃっくします」
「何このミルン可愛いっ」
お口を、んーってしながら閉じてるミルンも、可愛い過ぎて鼻血が出そうだ。
『次の方どうぞーっ』
「おっ、行くぞミルン。俺達の番だ」
「んーっ」
「もうお口を、開けて良いぞ?」
「ぷはぁっ」
やっぱりミルンは、癒しの天使だよ。
ケモ耳の妖精さんとも言える。
ミルンを肩車したまま、受付の椅子に座って、マジで今から問診始まらないよね?
受付のお姉さん、超美人なんです。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日は、どの様な御用件でしょうか」
「えっと…知人から、こちらのギルドで、魔石の買取をしていると教わりまして、その相談に来たのですが……」
「はい。当ギルドは魔石だけで無く、宝飾品やアイテム等の買取も、行っております」
俺は魔石しか持ってないからね。
ハイオークの魔石って、幾らになるのかな。
「それじゃあ、『空間収納』っと。この魔石の買取を、お願いしたいのですが」
「ミルンはこれをうるのっ!」
肩の上に居たミルンが、膝上に移動して、皮袋から出して来た、やたら高そうな宝飾品。
ミルンの腰に付いていた、やたやと大きな皮袋の中身が、これだった様だ。
「ミルンさんや、何でこんなん持ってんの?」
「はぎとったのっ」
剥ぎ取った……あの光おっさんの装備っ!!
そういや、最近付けて無いなと思ってたけど、まさか売る気なのか?
「お気に入りじゃ無いのか?」
「ミルンのおにくっ、たくさんかうのっ!」
流石ミルン。剥ぎ取った後に楽しんで、飽きたからお金に換えて、最後は胃袋に収めると言う錬金術ですね。
「んじゃぁ、これ全部売りたいんですけど」
「畏まりました、拝見致します」
その場で査定すんのって、プロの仕事だ。
まじまじと魔石を見て、顔色変えて、宝飾品見て、頭を捻らせて……何してんの?
「ハイオークの魔石っ、呪詛返しの指輪と……防護の腕輪……っ、本当にお売りするのですか?」
魔石よりも、指輪と腕輪に驚いてるよね。
呪詛返しに防護って、レア装備っぽいけど、ミルンは売る気満々だからな。
「売りたいのですが……どれも手に入れるのに、それなりに苦労したので、それを踏まえての価格を、希望したいですね」
ここからは交渉だな。
受付さんの反応を見る限り、貴重な物なのは間違い無いし、買取りたい雰囲気が出てる。
「大変失礼ですが、冒険者登録はお済みでしょうか。登録をしていなければ、買取価格が下がってしまいますが……」
「下がるのか。どれくらいですか?」
「一割減となります」
一割減は大きいな。
冒険者は、異世界あるあるだけど、肉体労働はパスしたいので、一割は諦めよう。
「それと、ハイオークの魔石は、直ぐ買取り出来ますが、他の二品は、ギルド長に相談してからの査定となります」
「……そのレベルの宝飾品なのか」
「効果付きの宝飾品は、貴重ですので」
あのおっさん、金持ちだったのか。
教会の人間だっけ?
悪徳宗教とかじゃ、無いだろうな。
「冒険者登録は無しで。装飾品の査定を、ギルド長へお願いしたいです」
「ぼうけんしゃに、ならないの?」
「ミルンさんや、肉体労働が嫌なんだよ」
ニートのままの方が、気楽で楽しい。
冒険者の依頼受けるのって、責任重大だろうし、俺には向いて無いと思うからね。
「畏まりました。ギルド長に、査定をお願いして参りますので、暫くお待ち下さい」
そう言って離れていく、美人の受付さん。
お尻がふりふり良いお尻?
「ミルンさんや……膝の上で立たれると、前が見えないんですけど?」
「おとうさん、めっ!」
「尻尾が当たって癒されるぅ」
可愛く怒られました。
でもね、これは仕方が無いんです。男の性と言うか、勝手に目線が泳ぐんです。
「ミルン……斧から手を離そうな?」
「まだみてるのっ」
「ここで斧なんて振り回したら、俺の胴体真っ二つになるから、駄目だあああ────っ!?」
「わるのっ!!」
膝上に立って居るミルンが、斧を手に持ちフルスイングッッッをする前に、全力で斧を掴んで、回転しない様に押さえています。
「お待たせ致しました」
「おいおい……物騒な物を、ギルド内で振り回さないでくれよ。危ないだろ?」
ようやく、受付さん戻って来たな。
村長よりも遥かに、雰囲気ヤバい奴が隣に居るけど、誰だこのおっさん。
「すまん。ちょっと娘と、戯れあってたんだ」
「かいとりっ!」
ミルンの意識が、お金に向かって助かった。
このおっさんが、ギルド長か?
片目潰れてて傷痕凄いし、髭面で白髪。服越しでも分かる、引き締まった身体に、歩く音がしない隠密性。
何処ぞの傭兵だろうか?
「そうか……娘? 獣族の子供が娘とは、おかしな奴が居たもんだな」
「あん? お前今……何て言った」
このおっさん。ケモ耳幼女が娘なのは、可笑しいって言ったのか?
えっ、ミルンの事、馬鹿にしてる?
「まてっ、悪い意味で言った訳じゃ無い。その物騒な殺気を抑えろ……っ」
「殺気なんて、出してないぞ。それで、悪い意味じゃ無ければ、何だって?」
俺は、ミルンを貶す奴には容赦しない。そう言う奴を、人と見ない事にしている。
「すまなかった……言葉を間違えたな。その子を貶したので無く、獣族の子を娘と言う人種が、珍しくてな」
そう言って、頭を下げて来た。
ギルドの一番偉い人が間違いを肯定し、頭を下げた事に、俺は少し安堵する。
「成程、俺に対して可笑しな奴って事か」
それでも十分失礼だけど、ミルンを貶した訳じゃ無いなら、怒る必要も無いな。
「このケモ耳幼女は、俺の娘のミルンだ」
「ミルンなの。おとうさんっ、おこったら、めっ!」
「悪かったよ。もう怒らないからな」
「中々礼儀正しい娘じゃないか。俺は、ギルド長をしているゴッズだ。宜しくなミルン君」
「受付を担当している、ネリアニスです。ミルンさん……少しだけでも良いので……尻尾をっ…」
ギルド長だけじゃ無くて、何故か受付さんも挨拶して来た。ミルンの尻尾を見つめながの挨拶だけど……そう言う事か。
「ミルン。ネリアニスさんが、ミルンの尻尾を触りたいって言ってるけど、どうする?」
「しっぽ……」
ミルンは、ネリアニスをジッと見て、何かを考えた後、俺の膝から下りて受付に入り、そのままネリアニスさんの、膝の上に乗った。
少し驚きの光景です。
ミルンが自ら、尻尾を向けるなんて。
「さわるだけっ!」
「有難う御座いますっ……ぁぁ…柔らかい」
「そんな簡単にっ……羨ましいっ」
「ネリアニスよ、職務中だぞ。すまないなミルン君……後で説教せねばっ」
そんなギルド長の言葉を無視して、ネリアニスさんは恍惚な表情を浮かべ、ミルンの尻尾を撫でている。
「んで、宝飾品の査定は終わったのか? 実際この三点で、幾らになるんだ?」
「そうだったな。問題無い。魔石も宝飾品も買い取ろう。ハイオークの魔石が金貨五十枚。宝飾品は金貨二百枚。これでどうだ?」
うん。貨幣の価値なんて、知らんよ。なので少しだけ、吹っ掛けよう。
「嘘だろ? 安過ぎだ。希少な魔石と、このランクの宝飾品だぞ。ぼったくる気か?」
それを聞いたギルド長のゴッズが、険しい顔をして、うんうん唸っている。
「ならばっ、ハイオークの魔石が金貨二十一枚。宝飾品が金貨二百十枚でどうだ?」
まだギルド長には、余裕の顔が見える。
こちとら、社畜経験豊富な、人の顔色伺うのが日常茶飯事の、日本産まれだぞ。
「足りないよな?」
ギルド長のゴッズが、更に目頭を押さえて、うんうんと考えている。
「ぐぅっ、ハイオークの魔石が金貨五十五枚! 宝飾品が金貨二百五十枚! これなら満足だよな!?」
必死に見える顔に、まだ余裕が見える。
甘い甘い。甘過ぎるぞギルド長。
「ミルンさんや、帰えろうか。どうやら縁が、無かったようだ」
「かえる? いくの!」
ミルンが俺の声を聞き、ネリアニスさんからシュバっと離れてゆっくり歩く。
流石ミルン……俺の考えを察したな。
にしてもネリアニスさん……真っ青な顔してどれだけモフりたいの?
「ハイオークの魔石が金貨六十枚。宝飾品が金貨三百枚。こちらの金額で如何でしょう」
「んっ?」
なんと、受付である筈のネリアニスさんが、金額提示をしてきた。ギルド長のゴッズが、顔を押さえて溜息を吐いてるし、なんで?
「ネリアニスっ、何を勝手に……」
「ギルド長。副ギルド長としての、進言です。今後の事を踏まえて、多少、色を付けたと思えば、安い金額かと」
「へぇーっ、副ギルド長だったのか……ミルンさんや、もう少しだけ、ネリアニスさんにモフられて来なされ」
「わかりました!」
ゆっくり歩いて居たミルンが、シュバっとネリアニスさんの膝上に戻った。
ミルンさん、有難う。
「だってさギルド長。買取……どうするよ?」
俺はニヤニヤと、ギルド長のゴッズを見つめて、その反応を楽しむ。
「……分かった。この際だっ、ハイオークの魔石は金貨七十枚っ! 宝飾品は金貨三百五十枚! これで買い取る文句は言わせん!!」
はい商談成立しましたーっ、拍手!!
ネリアニスさんは、その金額を聞いて、『赤字ですね』とぼやきながら、ミルンの尻尾に顔を埋めていた。
「……見栄っ張りなギルド長あざっす!!」




