↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/712

16話 王都アストール観光.3


 2026/06/28 改稿



 ミルンの簡単貨幣講座、はーじまーるよーと頭の中で思いつつ、冒険者ギルドの隅っこに移動して、ミルン先生に教わっています。


「ラクレル村のパンは、幾らだったのかって、ちゃんと覚えてる?」


「幾らって……値段なんて、書いてなかった筈だけど。どこかに書いてたのか?」


 誰も居なくなったラクレル村で、色々と拝借した時に、見て回ってたけど──値段が書かれたモノなんて、なかった筈だ。


「ちゃんと書いてたの。パン一つ、百五十ストールで、銅貨一枚と石貨五枚なのっ」


「貨幣の単位は、ストールって言うのか」


 ジアストール王国の、王都アストールで、お金の単位はストールとか、非常に覚えやすい。それに、貨幣の数え方も、分かりやすいな。

 一の位はなく、十の位で石貨、百の位で銅貨ときたら、銀貨が千の位だろうか。


「ミルン先生。銅貨十枚だと、幾らになるんだ」


「それだと、銀貨一枚になるのっ。更に、銀貨十枚で、半金貨になるよ」


「ほうほう……半金貨? て事は、半金貨十枚だと、金貨になるって事か?」


「そうなのっ」


 それを聞いてふと──目の前に積まれた、皮袋を見る。その皮袋をそっと開けると、眩いばかりの金貨が、みっちりと詰まっている。


「……」


「どうしたの?」


「……」


 小さな皮袋が、俺の魔石を売った分。金貨二十五枚、二百五十万ストールが入っており、一気に小金持ちになりました。

 問題は、ミルンの得た額の方だ。

 金貨三百枚──三千万ストール。

 もう一度言おう──三千万ストールだ。


「……」


「お父さん?」


 俺と同じく、一文無しだったケモ耳幼女が、ほんの僅かな時間で、大金持ちになりました。効果付きの宝飾品を、売っただけでだ。


「……良かったなミルン。お肉屋さんのお肉を、全部買い占めても、問題ない程の大金だぞ」


「山ほど買うのっ! お父さんのスキルに入れておけば、腐らないっ!」


「うん、よく覚えているなぁ」


 ミルンはどうやら、自分が得たお金が、どれほどのものかを、理解してはいないようだ。恐らくだが、肉屋一軒どころか、小さなミルン村を、興せるかも知れない程の──大金。


「このお金も、空間収納に、入れておいて下さいなっ。重たくて持てないもん」


 そんな大金を、平然と預けてくるって……確かに、空間収納内に入れておけば、盗まれる心配もないけどさぁ。


「……色々と、買いに行くか」


「お肉を買うのっ!」


「ミルンはブレないねぇ」


 そうして冒険者ギルドを後にし、お肉屋さんでミルンがお肉を買い占め、八百屋さんの野菜や果物も買い占め、最早ミルン無双。俺の空間収納スキルが、ミルンの私物を"認識"する程大量に、食べ物関係を買い漁った。


「お肉っ、お肉っ、たーくさーんお肉っ!」


 そして現在──上機嫌なミルンを肩車しながら、ミルンに合いそうな服を求めて、王都をぶらぶらと散策しております。


「どうだミルン? 服屋さんは見えるか?」


「んーとね、見えないっ。けど……周りの人達が、ミルンを見ている気がするのっ」


「なんじゃそりゃ?」


 ミルンのその言葉に、一度人混みから抜け出して、ジッと立ち止まり、耳を澄ませてみると、『珍しい毛色の獣族だな』、『奴隷制度が廃止されなければ、あの獣を飼えたのに』と、中々物騒な話し声が、聞こえてきた。


「ミルン、目を閉じてなさいな」


「なにするの?」


「良いから良いから」


 肩の上のミルンが、可愛い手で目を隠した瞬間──満面の笑みを浮かべて、通行人達を見渡し、『ひっ、何よあの男っ』とご婦人方が、足早に逃げる程の"圧"を、振り撒いてやった。


「ふぅ……どうだミルン? 嫌な視線は、なくなったと思うんだけど、まだ感じるか?」


「なにしたの? 嫌な視線がなくなったっ」


「何をしたのかは、内緒だ──おっ? あれってもしかして、洋服店か?」


 人混みが散ったからか、お店の外観がハッキリと見え、一枚ガラスの奥に、なにやら高そうなドレスが飾られている。


「一般的な服じゃあ、なさそうだけど……ケモ耳ミルンの、ふわふわドレス姿か」


「ドレス?」


 ミルンはこの国の、正統な王家の血筋らしいし、ドレスの一着や二着は持っていた方が、良いのかも知れないなぁ。と言うのは建前で、俺がただ、ミルンのドレス姿が見たいだけ。


「ただそれだけなんだっ!」


「お父さんがまた可笑しくなったのっ!?」


「良しミルン。ドレスを買おう、そうしよう」


「そのお顔は気持ち悪いのっ!」


 気持ち悪いと言われ、心に傷を負いながらも、お洋服店に向け一直線──そこまま扉に手をかけて、ワクワク気分でお店に入ると、「あらぁ、いらっしゃい。可愛い女の子ねぇ」と、異世界に来て幾度目かの、衝撃を受けた。


「なっ……マジかっ」


 見るからに、美味しいクッキーを焼いてくれそうな、絵に描いた様なお婆ちゃんが、お店の奥の椅子に、ゆったりと座っていた。


「すんすんっ……んしょっ、んしょっ」


「どうしたミル────っ!?」


 突然肩から降りたミルンが──お婆ちゃんに向かって行き、そのまま膝の上に乗って、丸まってしまった。


「あらぁ、今日はどうしたの?」


「良い匂い……お洋服下さいなぁ」


「ふふっ、買いに来てくれたのねぇ」


 初対面の人に、あんなにも懐くミルンを見るのは、初めての事だ。しかも、膝の上に乗るとか……お婆ちゃんって、凄げぇ。


「貴方が、この子の保護……違うわねぇ、お父さんって感じだわぁ」


 前言撤回っ。凄げぇを通り越して、怖ぇ。眼力と言うのか、人を見る目がヤバ過ぎる。


「……」


「ふふっ、警戒しなくても、大丈夫よぉ。人を見るのが趣味だから、何もしないわぁ」


「余計怖いなぁ……そのミルンに合うドレスを、買いに来たんだけど」


「あらあら、嬉しいわぁ。それなら先ずは、ミルンちゃんの寸法を、調べないとねぇ」


 お婆ちゃんはそう言うと、膝の上で丸まっているミルンを見て──目の錯覚だろうか。椅子に座っていた筈のお婆ちゃんが、六人に分身したかのように見えた。


「……はっ?」


 目を擦って確認すると──ミルンを膝に乗せたまま、お婆ちゃんは、椅子に座っている。

 

「そこのお父さん。この三着なら、ミルンちゃんに合うだろうから、着せてみるかい?」


「……いつ準備したの?」


「何か言ったかい? 歳なのか、耳が遠くなってしまってねぇ。もう一度、言っておくれ」


 それは暗に、聞くんじゃないという、脅しなのだろうか……このお婆ちゃん、一体何者なんだよ。ただのお婆ちゃんじゃあないだろ。


「なんだかねぇ。このミルンちゃんの瞳を見ていると、幼い頃の、殿下を思い出すねぇ……」


 このお婆ちゃん、王族の関係者なの? この国の殿下って事は、亡くなったミルンの、パパさんだよな。


「お婆ちゃん、あんた一体……いや、なんでもない。その服を見させてもらうよ」


「良いよ、見ておくれぇ」


 殿下が、ミルンのパパが、亡くなっている事を知っているのは、俺、院長影さんに、女王であるあいつと、ミルンだけだ。ここで下手に口を開くと、不味い気がする。


「……っ、この服はっ!?」


 テーブルの上には、ミルンサイズのお洋服が三着。そのどれもが見事な縫製で、職人技を感じる、正にオーダーメイドの逸品。

 そして、今から始まるのは、着せ替えミルンの、オンリーファッションショー。


「腕を上げてねぇ」


「どうぞっ!」


 お婆ちゃんの手により、ボロ着だったミルンの姿が、一瞬にして──変身した。


「……また残像出てんじゃん」


 先ずは、ボーイッシュミルン。

 男の子用のズボンに穴を開け、ミルンの尻尾が振り振りと、自由に回転出来る仕様。フワッ広がるシャツの袖口には、ヒラヒラの布が折り込まれ、女の子らしさも忘れない、見事な作りとなっている。


「これなら走れるのっ!」


 次は、お姫様風ミルン。

 薄いピンクの布地には、細かい模様が編み込まれ、その胸元には、可愛いリボンが付いている。腰からフワリと広がるそのスカートは、薄い布地が、緩やかな波を描いて、ミルンを優しく包んでいるかのようだ。これぞ、お姫様といえる、見事なドレスだろう。


「ふわふわぁ」


 最後に、ワンピース姿のミルン。

 ワンピースといえども、侮るなかれ。一枚布を細断して縫い合わせ、裏地にも同様の布を使い、軽やかな印象を与えつつも、耐久性と実用性を兼ね備えた、見事なお洋服。

 そして、なにより……なによりもだ。ワンピースの背中の部分に、天使の羽根の装飾が施され、ケモ耳幼女の天使御降臨っ!!


「お父さんっ! ミルンに似合ってる?」


「似合ってるよ、ミルンっ……」


 首を傾げるケモ耳天使ミルンの愛らしさと、可愛いお洋服の力が合わさればっ、俺はもう満足なんです全部買おうっ!!


「お婆ちゃん……全部下さいっ!!」


 脳内がバグってくるよね。でもね、これは仕方のない事だと思うんだ。可愛いミルンには、可愛い服を着せたいもの。


「そうだねぇ。ドレスは少しだけ、高いけど、お金は大丈夫なのかい?」


「問題ない。多少高くても、払えるぞ」


「凄い笑顔だねぇ。それじゃあ少し、オマケして……五十万ストールかねぇ」


 洋服三着で、金貨五枚のお値段です。

 アレかな……もしかしてこのお店って、王族御用達とかいう、超高級な洋服店なのか?


「金貨五枚だな……丁度出すよ」


「有り難うねぇ。それじゃあ、お前さんの服は、サービスしてやるから、持ってお行き」


「あっ、俺の服忘れてたな……良いんですか?」


「構わないよ。持ってお行き」


 物凄く優しい笑顔だ。これは……怖いと思ってしまった事を、反省しないとだな。

 

「それなら俺は、上着とズボンを貰うよ」


 残るは──孤児院のケモ耳っ子達の服だけど、新品だと、気を遣いそうだから、綺麗な古着とかが、あれば良いんだけどなぁ。


「お婆ちゃん。ここって、古着とかあるかな。あったらそれも、買いたいんだけど」


 そうお婆ちゃんに聞いてみると、「あっちの山になってる物を、持ってお行き」と指を差し、顔を向けて見ると、どう見ても新品。


「いや、あれって、どう見ても新品でしょ?」


「良いのよぁ。売れ残って、ずっと置いたままだからねぇ。持ってお行きなさいな」


「っ……有り難うな、お婆ちゃん」

 

 このお婆ちゃんになら、見せても良いかと、空間収納に服を入れ、沢山の子供服を、手に入れる事が出来た。


「んしょっ、お買い物終わった?」


 お婆ちゃんの膝から下りて、尻尾をふりふりとさせながら、ミルンが近付いて来た。どうやら帰る雰囲気を、察したようだ。


「ああ、終わったよ。それじゃあお婆ちゃん。また何か、買いに来るよ。有り難うな」


「また来るのっ。元気でいてねっ」


「はいはい、いつでもおいでねぇ」


 俺とミルンは、再度お婆ちゃんにお礼を言い、服屋を後にした。もちろんっ、追加で金貨五枚を、テーブルに置いてな。


「あのお婆ちゃん、気付いてたよ?」

 

「……それでも良いさ」


 ケモ耳に偏見がなく、ミルンがすぐに懐いた人になら、お礼はしっかりとするべきだ。金が出来たら、また買いに来ないとだな。


「どうだその服? 着心地は良いか?」


「むふふっ、可愛いのっ」


「気に入ったようで、良かったよ」


 あとは、のんびりと観光でもして、暗くなる前にでも、孤児院に戻るとするか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。