12話 誰の後悔後先立たず.2
朝から酷い目に遭った。
「おとうさん…ごめんなさい」
尻尾をシュンッとさせながら俺の横で下を向くミルンの頭を撫でて、朝ご飯を作っている。
「大丈夫だよミルン。リティナがほぃっと治してくれたし、寝てたんだから気が付かないって」
そう。俺の腕関節が逝っちゃって直ぐリティナが言葉通りに、ほぃっと触るだけで元通り。
凄いよな聖女の奇跡って。
何だよ、ほぃって気軽すぎるだろ。
それから忍者宜しくケモ耳っ子達がリティナの号令で一瞬で消えたと思ったら各部屋を掃除し始めてたので、俺は今のうちにとミルンを引き連れ朝ご飯の準備をしている。
「きょうのあさごはんはなに?」
ミルンが元気を取り戻し俺の手元を覗き込む。
昨日あれだけ食べたのに…凄いな。
「ふふふ、今日の朝ご飯は胃を休めましょう、お野菜とだ!」
だって料理の名前など知らん。
俺は料理人では無いからな!
小麦粉と水と塩少々と何かの卵を練り込み、練り込み、練り込み、薄く伸ばしてから、茹でた葉野菜をたっぷりと、塩味付けをした少量の焼肉を丸め込んで、はい完成! まずは味見だな…ミルンの眼が恐い。
「ミルン、味見してみるか?」
「いただきます!」
即返答流石ですミルンさん。
やっぱり調味料少ないよなぁ、醤油、みりん、砂糖等々ラクレル村にも無かったし、トマトみたいな野菜もソースにするのには時間がかかるし、ちょっと王都観光がてら見てみるか…お金どうしよう。
「おとうさん、とってもおいしい!」
ミルンが俺を見上げて満面の笑みで感想を述べるが、俺は味に納得いってないんです。でも今有る食材でやるしかないもんなぁ。
「じゃあ、どんどん作っていきますかね」
「ミルンもっとたべたい!」
おお…胃袋強すぎるだろケモ耳幼女よ。
お、リティナ、腕有難うな。
「流にーちゃんが朝ご飯作ってるんか? まあ流にーちゃんのご飯は旨いからええけどーはいはいガキ共呼べって? 大丈夫や、匂いですぐ来おるから…ほら来おったで?」
そう言うと、走る音が近づいてくる。
「きんにくちゅけるにはごはんなの!」
「朝から動いたのでお腹ぺこぺこですね」
「おはよーながれ!」
「おはよぅ…ございま…す」
「ラナス、あさはげんきよくだよ。おはようございますながれさん!」
「コカトリスにくじゃないよね? わたしはたべものじゃないよ?」
「おはよう流さん、モネギは入ってないですよね? あれ食べると痒くなるので」
と腹ペコ達がぞろぞろと入って来る。
昨日あれだけ食べたのに…胃もたれしないのかよ羨ましいな。
「メオ、ノーイン、モスク、ラナス、ノリス、コルル、ラカスおはよう。ちょっと待っててな、あと少しで皆んなの分作り終わるから」
そう言ってると影さんもゆっくりと来た。
「すみません流さん、いつもは私が作っているのですが」
良いよ影さん、偶にはゆっくりして起きても良いんじゃないかな。俺は強制目覚ましで眼が覚醒して時間あったし。
「おはよう流君」
「おはよ…」
村長とミウちゃんも来たな。
何か既に肩車してるし…えっ、いつもの俺達と変わらないって? それはそうだミルンは可愛いもの。
ニアノールさんと、モンゴリ君はどうした?
「朝に流君の腕を潰しかけたとの事で、ニアノール殿がモンゴリ君を説教していたぞ。しかし…モンゴリ君はやけに嬉しそうであったな?」
そうか…モンゴリ君にとっては朝のご褒美時間となってしまった様で本当に良かったか?
「本当に駄目ですよ、ちゃんと流さんに謝りなさいねぇ。分かりましたかモンゴリ君?」
「はいぃいいい! ぜんぜんわかりましぇえええええん!」
二人が来た…モンゴリ君よ、凄い笑顔だけどやり過ぎると、昨日の薄切りお肉みたいになるぞ。
じゃあ皆んな揃ったし、朝ご飯食べようか。
ほれ並べておくれミルンさんや。
準備完了。
それじゃあ皆んな一緒にーーー
「いただきます」
「おにくすくない」
「「「いただきます!」」」
ーーーミルンさんや、朝は我慢しなさいな。