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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界
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12話 誰の後悔後先立たず.1



 ジアストール城の直ぐ隣り。

 その城より少しだけ小さく造られた建造物は華美な宝飾と細工が施され、見る者の眼を潰さんとばかりに輝いている。


 主神アルテラを信奉する者達の総本山。

 その中で今…。


「それで、魔王を滅する事は出来たのだよね神官ザルブよ?」

 

 顔は大きく、眼がデカい。

 そこから汗か脂か分から無い程の汁を溢し、身体は脂肪豊かな贅肉の肥満を超えた大肥満。

 もはやオークと見間違えるほど肥え太り、歩く事も儘ならない曲がった脚。

 宝石を散りばめられた巨大な椅子に座り、優雅に肉を頬張りながらその者は問う。


「は…はぃっ。申し訳ごっ…ございっございません!」


 ザルブと呼ばれた男。

 以前にアルテラ教が流れを魔王と断定した際、ラクレル村へ送り込まれた光るおっさんの内の一人。しかし今、その光はミルンに剥ぎ取られ、今はただのおっさんである。


「私の力、神の審判をこめた魔石を渡したのだから…滅する事、出来たのだよね?」


 ブヒッブヒッと鼻声を出しながら問う。

 オークに似た鳴き声に聞こえてくる。


「申し訳っござっございません大司教様!」

「何が申し訳ないのかなブヒッ」


 ザルブは額から汗が止まらない。


「魔王を滅する事っ叶いませんでした! どう耐えたのかは分かりませんがっ神の審判を跳ね除けっ現在っ魔王は! 聖女っリティナと共に行動しております!」


 大司教は肉を食べる手を止める。

 その肉を額に当てて何かを考える。


「ふーん、ブヒッ聖女リティナとなぁ…今どこに居るんだい魔王は」

 

 ザルブは汗を拭い答えた。


「現在っ聖女リティナと共に王都のスラムにあるっ孤児院に潜伏してっおりますぅううう!」


 大司教は食べる手を再開してザルブを見る。

 額には肉の油がベッタリだ。


「ザルブ、お前の要らない手はどっちだ?」


 ザルブは震えが止まらない。


「ザルブ、お前の要らない眼はどっちだ?」


 息が出来ない。

 大司教の顔を見る事が出来ない。


「ザルブ、お前の要らない脚はどっちだ?」


 答える事が出来ない。

 答えた瞬間…に終わる。


「ザルブ、スラムはゴミ捨て場だ。そこには誰も居ない…居ないんだ…ゴミはね、ゴミだから燃やさなきゃね。ザルブ、私の言っている事分かるよね?」


 あぁ…恐ろしい。


「ははあっ!」


「どんな手を使っても構わないブヒッ。ついでに全て、燃やしてしまいなさい。次は…無いよ、神官ザルブ、ブヒッヒッヒッ」


 どんな手を使ってでも。


 魔王を滅せ。

 フゴッ。


【12話 誰の後悔後先立たず】


 優しい陽光が俺の瞼を刺激する。


 俺はゆっくりと目を開け、朝か…!?


「かぁああああああ痛い痛い腕!?」


 寝ている間にどうやったのか腕ひしぎ十字固め両腕バージョンで右にミルンと左にモンゴリ君と言う最悪の二人がぁあああああ起きろ二人共!?


 そういえば昨日はケモ耳っ子達と雑魚寝でモフモフパラダイスを味わって寝たけど何コレこれは違う!!


「ふわぁああおはよ流にーちゃん。何や朝から叫んで元気いいなぁ」


 おおっ丁度良いところにリティナ助けて!

 あっ目を逸らした!?

 おいっ無視するな!

 行かないでっ本気で腕が死ぬるから!?


「なんやミルンが幸せそうに寝とるからそのままでええやん。腕の一本や二本もげても破裂しても腐り落ちてもウチがパパッと治したるさかいゆっくり寝させてあげーや」


 コイツっ本気で言ってやがるよ恐いな!


「頼みます聖女リティナ、オルカス様何卒この愚かな男をお助けぇえええ!?」


 フルネームの様呼びにやめぇ気色悪いなと凄い顔をしたけど助けてくれなきゃ合う度に言ってやるからな! 土下座しながら!


「わかったわかった助けたるわ面倒くさいなぁ、性格悪いで流にーちゃん」


 それはお前だよ。

 リティナはすぅうううっと息を吸い、


「ニアが起こしにきおったぞぉおおお! 皆んな起きろぉおおおおお!!」


 その瞬間…部屋の中で嵐が巻き起こった。


 今まで寝ていたケモ耳っ子達の眼がこれでもかと見開き、一目散に身体を起こしほぐして体操選手ばりに跳ね上がり回転。そこから敷いていた毛布を掴み同じく宙に投げ回転しながら折り畳み丸めて部屋の隅へ着地と同時に重ね置き、整列してリティナの前に立つ。


「「「おはようございます!!」」」


 ん…? ここはいつから忍者学校になったんだ? あとニアノールさんはやっぱり恐怖の対象であり、逆らったらいけない存在なんだね。


 そんな呆けている俺の右腕は、まだミルンに固められたままという事を諦めましたと言わんばかりに鈍く切れる音を立て、自由になりましたとさ。


「あっーーー」


 朝っぱらから俺の絶叫が孤児院に響いた。



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