11話 ここがオアシスパラダイス.3
俺達は建物内に戻り直ぐ調理場へ急ぐ。
だって今から肉を焼きまくるから。
あの食事の量だけじゃ少な過ぎるし、けど今から凝った料理をしている時間が無い! ケモ耳っ子達がお腹を空かせているからな!
「ミルン! リティナとニアノールさんを呼んできてくれ。村長はケモ耳っ子達に、今出してるご飯を食べても、そのまま待つ様伝えてくれ。影さんは鉄板の準備と火おこしをしたらそのまま俺と一緒に肉を焼きまくるぞ!!」
俺は、肉に影さんから貰った塩を塗り込みつつ指示をだす。
「戦いの…始まりだぁああああああああ!」
皆んなが一斉に動き出した。
影さんがすかさず鉄板を出し着火。
俺はそれを見て直ぐ油を挽き、更に肉に塩を塗りこんでいく。
ミルンは風の如き速さでリティナとニアノールさんの確保に動き、村長はケモ耳っ子達の相手をする為に向かう。
「良い感じで油が跳ねて来たぜぇえええい。肉よお前の出番ださあ焼かれろやぁあああ!」
火が通りやすい様に細切りにした肉を鉄板の端まで並べて焼き加減を見つつ、更に他の肉に塩を塩塩塩塗り塗りと呪文を唱えつつ、肉をひっくり返しつつまた塩を塗り塗りとして、芳ばしい香り…焼けた!
まず一皿!
「影さん持っていってくれ! ついでにそのままケモ耳っ子達と食べなよ!」
「分かりました」
と次の肉を鉄板に投入して焼き焼き塗り塗りひっくり返して焼き焼き塗り塗り。
「おとうさんよんできた!」
「なんやぁいい匂いするやん。」
「どうしたんですかぁ流さん?」
キターーーー肉切り要員と配膳要員!
「ニアノールさんはこのブロック肉を片っ端から細切り肉にしていって下さい! リティナは焼き上がった皿を持っていってくれ! ミルンは他の子達と食べてて良いからな、呼んできてくれて有難うっ!」
俺の剣幕に押されてリティナとニアノールさんは動き出し、ミルンは涎を垂らして食堂へ「おにく、おにく、おにく!」と走って行った。
これで作業効率も良くなり回転が早くなる。
ニアノールさんが肉を空中に放り投げ…放り投げ?
薄切りスライスに? 恐っ!?
俺はそれを見て戦々恐々としながらも塩を塗り塗り焼き加減を見つつひっくり返して二皿目をリティナに渡して三皿目、四皿目、五皿目、六皿目、七皿目、八皿目、九皿目と延々塩塩焼き焼き返し返しと無心で没頭する。
そして…気付けば五十九皿目。
あと…一皿で六十皿だよぉおおお。
「流君、お疲れ様だ! 子供達もお腹いっぱいでもう食べれ無いと笑顔で言ってきたぞ!」
凄い笑顔で村長が調理場へ来てそう伝えてきたけど、あと一皿で六十皿目なんだ!?
「流にーちゃんおつかれ! ウチも腹減ってしゃーないから今から少し焼いて、ウチ達で食べて六十皿目でえーやん」
「私も疲れましたぁ、ご飯食べたいです」
あっ…リティナとニアノールさんまだ食べてなかったな。
「じゃあ、二人共直ぐ焼くから待っててくれ。勿論俺も食べるぞー疲れたからな! 村長も食べるだろ?」
村長は勿論だと白い歯を見せ言って来た。
まあ、それから俺達で結局十皿食べたんだけど…あと一皿で七十皿だったなぁ。
そして食後。
影さんがケモ耳っ子達に伝えた。
「皆さん、今日食べた食事は全て、こちらのラクレル村の村長、ヘラクレス様のご好意により頂いた物です。それから、それを調理して下さった方達にも御礼をしっかり言いましょう」
ケモ耳っ子達は幸せそうにお腹をさすりながら、こっちを向き満面の笑みで伝えてきた。
「「「ごちそうさまでした!!」」」
俺は、影さん、村長、リティナ、ニアノールさん、最後にケモ耳っ子達に混ざってお腹をパンパンに膨らませてるミルンを見て、達成感で胸がいっぱいになった。
「まあ、こんな日があっても良いだろ」
ケモ耳っ子達はお腹いっぱいで幸せ。
俺はその姿を見れて幸せ。
最高じゃん。