10話 影さんと一緒.7
せめてレベル上げろよなぁあああああああ!?
俺の声に膝の上のミルンがビクッとし、影さんが怪訝な目を向けて来た。そういえば頭の中に変なアナウンスが流れてくる事、誰にも言った事無かったな。
「驚かせて悪かった。その…なんて言うかな」
「はい、流さんは祝福を受けてますね。其れは見て知っています」
説明する手間が省けた。
いや、見て知ってるって事は。
「私は魔眼持ちですので、相手のスキルや称号を見る事ができます」
おお、魔眼! 厨二病以外で初めての魔眼持ち!
「ですがどんな副次効果があるのかまでは存じません」
外側だけを見るのか…ふむふむ。
「成程、それで怪訝な目をしてたのか。要は俺の頭の中にそのリシュエルって言う天の使いの一言が時々響くんだよ」
しかもタイミング悪い時にな!?
「声が、響くですか。ならば尚の事、リシュエルがいつか接触してくるかもしれませんね」
その時はお願いしますだって。
まあ、ボコって殴って張り倒す。
それぐらいなら良いぞ本気で。
散々俺を煽って来たからな!!!
「まあ、孤児院のケモ耳っ子達を保護するのは、少し考えが思い浮かぶが、俺一人じゃあ如何にも出来ないから少し待ってくれ。魔王になる、ならない別としてな」
俺の言葉は伝えたが…どうだろうか。
「分かりました。流さん、どうか子供達をお願い致します」
なんとかするしか無いよなぁ。
ケモ耳っ子達を護る方法。
一つだけ思いつくけどなぁ。
「それで、俺の母さんの名前を知ってる理由は教えてくれるのか?」
影さんが頷く。
そして、ゆっくりと思い出すように語りはじめた。
十年程前に、一人の少女と出会った話。
過ごした時間は短かったが、あの時があるからこそ、今も子供達と居られると、少しの後悔と感謝を込めて。
※
一人の獣族の少女。
いつ死ぬかも知れない過酷な状況。
偶然その場に時の王子が現れ。
獣族の少女に惹かれる。
その王子は獣族を虐げる王を滅す。
後を妹に任せて、少女の元へ。
少女を連れ出し、ひっそりと暮らす。
その少女の名が。
小々波 由香里、転生者。
称号、リシュエルの悪戯。