10話 影さんと一緒.3
12/4 加筆修正致しました。
皆さま、こんにちは。
今回も、当物件を案内させて頂くのは私、小々波、流に御座います。何卒最後まで、お付き合い頂きます様、お願い申し上げます。
先ずはこちらっ、見てくださいこの立地。
辺りの道には、大量のゴミが散乱し、腐臭漂うこの香り。鼻に臭いがこびり付き、鼻うがいをしても取れませんっ。
勿論っ、ご近所付き合いも問題無し!
全裸で寝て居る方や、ゴミを漁る方が、常に貴方の側で、見守って居ります!
何か起きたとしても、セキュリティが全力疾走して来ますので、安心安全!
尻を守って、走って下さい!
皆んなで逃げれば、生存確率が上がります!
さあさあっ、見えてまいりました……当物件の目玉っ、有刺鉄線で御座います!
これ以上先へは進ませまいとする、この有刺鉄線が有れば、常人は道を変え、関わりを持とうとは、思わない事でしょう。
先に進みますと、見えて来ました!
頑強な、鉄の扉に御座います!
両端には、守衛の様な姿をした若者が、眼を光らせており、ボスがいる事間違いなし!
「さあ皆様っ、逃げる御準備をっ!!」
「なあ……流にーちゃんは、何しとんのや?」
「おとうさんは、ときどきこうなる!」
「気持ち悪いですねぇ」
「流君、着いた様だぞ」
おっと、意識が遥か彼方へと旅立っていた様だな、危ない危ない。
「おうっ! リスタ、アジュ、聖女様が帰って来たでっ! 早よぉ扉開けんかいな!」
リティナが馬車から降りて、扉の両端に立っている若者向かって、大股で歩いて行く。
アレが、聖女な訳無いって。どう見ても……ただのチンピラじゃん。
「リティナさんや……レディースなのか?」
『あいっ、何するんやボケェ!?』
『お前なぁ! 何心配かけてんだ馬鹿が!!』
リティナの頭に、拳骨落とされたぞ?
リスタって呼ばれてた奴が、リティナに見事な脳天クラッシュをして、アジュと呼ばれた若者が、凄い剣幕で、リティナを説教してる。
「長い説教だなぁ……いつ迄待てば、良いんだろうか……こっちに来たな」
「すみません、家族がご迷惑をお掛けしたようで。僕はリスタと申します。直ぐ開けますので、暫くお待ち下さい」
「あっ、ああ……」
凄い良い感じの、好青年じゃん。
リティナに拳骨落としてたけど、家族……にしては、似て無いんだよな。
「よぉっ! アンタが魔王様って奴か。リティナが迷惑かけて、すまねぇな! 俺はアジュって者だ! 宜しくな!」
こっちも、口調は荒いが、礼儀がしっかりしていて、中々好感が持てる。
リティナの方を見ると、とぼとぼとこっちに戻って来てるけど、この差は何なんだ?
「何や……ウチ今疲れとんねん」
「残念聖女とは、大違いだな」
「何がやねん!?」
リスタとアジュは、笑いながら扉を開け、俺達はそのまま、中へと入って行った。
そして俺は、この世の天国を知る。
俺にとっての、天国とは何か。
ミルンの様な天使のケモ耳が、沢山居る場所が、俺にとっての天国だ。
「なんっ……だとっ!?」
馬車から降りたミルンが、俺の身体をよじ登り、この場所は私の場所だと言わんばかりに、鼻息を荒くする。
「おなかまいっぱい!!」
そう、今俺の目の前には、天使達が沢山。
犬耳猫耳何の耳。
尻尾がふりふり遊んでる。
角っ子羽っ子獣っ子。
皆んなキャッキャと遊んでる。
一人止まってこっちを見たら。
皆んな止まってこっちを見たよ。
お目々が爛々輝いて、皆んなが走ってこっちに来るよ。
俺は両手を大きく広げ、さあっ、この胸に飛び込んでおいでと、合図は完璧。
俺の横を素通りしたよ。
そしてリティナにタックルだ──っ!
「「「リティナお姉ちゃ──んっ!」」」
「ぐぇっ!? やめいチビ共っ!」
広げた両手をそのままに、俺は全力地団駄踏んで、心の奥から叫びを上げるね。
「何故だああああああああああああああああああああああああああ────っ!!」
ケモ耳っ子達に、もみくちゃにされるリティナを見て、俺は……血の涙を流した。
「おとうさんにはっ、ミルンがいる!」
「そうだね……ミルンだけだよ」
「流君っ、君に恐怖を感じたぞ」
「怖いですぅ」
村長とニアノールさんが、俺の叫びを聞いて、ドン引きしてるけど、気にしない。
仕方無いだろ。
ケモ耳天使の、集団なんだから。




