10話 影さんと一緒.1
「なぁ魔王のにーちゃん」
「何だ残念聖女様」
俺達は、泣く女王を放置して小振りの馬車に乗り、聖女の頼みを済ませる為、とある場所に向かっているけど何処に向かってるんだ?
「誰が残念聖女様やしばくぞわれぇ!」
「お前だよ残念聖女! いい加減どこに向かってるのか教えろ!」
馬車の中での取っ組み合い。
力で俺が負けているっなぜに!?
「聖女様、落ち着きましょう」
「流君、落ち着きたまえ」
「おとうさんうごいちゃだめ!」
怒られました…二対一で俺の負け。
「女王そのままで良かったんかと思ったけどもうどーでもええわ。着いたら話するさかい待ちーや」
ゆっくりと、その目的地へと馬車が進む。
そう言えばさっき、ルシィがミルンの目がどうのこうのって…ミルンの目は可愛い真ん丸金眼色だけど…異世界だし…いっぱい居るし…まぁいいか。
【10話 影さんと一緒】
王都正門内から右周り、時間的には六時間って所か尻痛てぇよ。ゆっくりと、黄金に輝く絨毯が靡く通りをこえて、簡素な建物が並ぶ街並みを眺めつつ進み、更に奥へ奥へと進んでいく。
「なあ聖女様」
「なんやもうっ面倒くさいからリティナかリティでかまわへんわ。魔王のにーちゃん、女王相手に呼び捨てやったし、泣かしてたし、人を敬う事せんやろアンタ」
良くご存知で。
もう会社勤めの時の様な事はしたく無いしぶっちゃけてもう出来ませんよ。
ルシィは次会っても泣かす。
アイツまだ謝ってないからな!
「なら俺の事も魔王とか言うなよ。ニートか、流と呼んでくれ」
「なあ、それ、ニートってラクレル村でおうたときも言ってたけどなんなん? アンタの、流にーちゃんの名前なんか?」
良く聞いてくれた、説明してやろう。
ニートとは、仕事にヤル気を見出せず、いつかは頑張るいつかは頑張る、俺はやれば出来ると言いつつも親の金(俺の場合は遺産)を毟り取り、一日中、いや、毎日を働かず食っちゃ寝をする自宅警備員の別称であり、人によってはニートになる為人生の大半を修行に費やす最高の称号!
「まあ、平たく言うと、この国の貴族みたいな者だろうか?」
「流にーちゃん貴族馬鹿にしすぎちゃうか!?」
そうなのか? 貴族って大体食っちゃ寝しているイメージがするし、何してるか知らないしニートじゃね?
「流君。流石に貴族が働かないと、国が成り立たん。各町や村等からの陳情やそれの対応。納められる税の取扱いやそれの分配。農作の出来具合を確認したり、備蓄をどれ程蓄えれば良いか。他、派閥間との腹の探り合いや、力を固辞する為の夜会を幾度も開催したり等々。それを踏まえれば、貴族は働かずに食べていける者とはとても言えないな」
さすが村長。
脳味噌まで筋肉では無いんだなぁ。
「まあ、私の村は、流君のお陰で村民も居なくなったので管理する手間は無いがな…」
一言多いんだよ。
アレはお前達が悪い。
こんな可愛いミルンを殺そうとするからだ。
「うーっ」
ミルンが外を見ながら尻尾をふりふり馬車から降りたそう…暇だよなぁ。
あとニアノールさんがミルンの尻尾を目で追っているし。
「ふしゃっ!」
「なににあのーる!?」
我慢出来ずに尻尾に手を当ててるし。
うん、犬耳幼女と猫耳メイドの戯れる姿がこれぞ異世界だな眼福眼福。
「それで、話を戻すけどリティナ」
「なんや流にーちゃん?」
俺は馬車からの景色が一変している事に不安を隠せない。
だって、これって…ここって。
「ここって、スラム街って言わないか?」
すげぇ廃れてて臭いが…ヤバい。
ピンポンパンポーン 上がり調
レベルが1上がりました(体臭?)
ピンポンパンポーン 下がり調
俺のじゃねぇよっ臭くないわ!?
本当に何だよこのタイミングとアナウンス!?