10話 影さんと一緒.2
12/4 加筆修正致しました。
変なアナウンスの所為で、村長やリティナ、ニアノールさんに、変な目で見られてます。
止めてね?
俺を変人扱いしないでね?
ミルンだけは、外を眺めたままだから、気にして無い風を装ってる。
ミルンさんや、尻尾が逆立ってるよ。
「コホンッ……流にーちゃん」
「なんだいリティナ様」
「……キモッ!?」
「流石にその反応は酷いぞ?」
村長もニアノールさんも頷くなよ。
俺泣いちゃうぞ?
ルシィばりに泣いちゃうぞ?
「なんや、流にーちゃんの、さっきの質問やけどな……間違ってないで」
「さっきの質問?」
「忘れんなや!? 今進んどる場所は、スラム。王都の中の掃溜めであり、ゴミ捨て場や」
「あ──やっぱり?」
至る所にゴミの山。
ミルンが以前住んで居た、あのボロ小屋よりも酷い、木片で作られた家。
老若男女問わず、汚れた姿で路上で寝たり、ゴミ漁してたりと、酷い有様だ。
一番ヤバいのは、ぶつぶつ独りを言って、こっちを見て来たり、走って来たり……走って来てるんですけど!?
「アレは怖過ぎるって!?」
「あんなんぎょーさん居るで。捕まったら、男女問わず危ないから、尻にきーつけや」
「ちょっ……マジで大丈夫かここ?」
「ニア居るし、今は大丈夫やって」
「ミルンさんや、こっちに来ておくれっ!」
ミルンを膝の上に乗せ、尻尾をモフモフ、頭を撫で撫でして、心を落ち着かせる。
異世界と言っても、こんな場所が有るのか。
「……まだ着かないの?」
「せっかちやなぁ、流にーちゃんは。もう直ぐ着くて。ホラっ、あの鉄線の先や」
スラム街のど真ん中じゃん。
何? 今からスラムのボスにでも会うの?
嫌だよ俺は。
魔王ムーブ出して、全力で逃げるぞ。
「ミルンが居なけりゃ、メンタル崩壊よ?」
「いっしょにいくの!」
有難うミルン。
多めにモフって、癒されておこう。
◇ ◇ ◇
ジアストール城内にて、高らかと響き渡る、大臣と言う要職に就く者の、奇声。
「ボソッ(城内で奇声を発するなど、彼奴は何を考えでおるのじゃっ)」
全力で無視しているにも関わらず、諦めずに延々と、煩わしい事この上無い。
『陛下っ! 出て来て下されっ! 陛下あああああああああ──っ!!』
ドンッドンッと、扉が強く叩かれるが、毛布に包まり、なるべく聴こえない様に努める。
『陛下っ! 陛下っ! 陛下っ!』
「ボソッ(もうこの大臣っ、首を落としてやろうかのぅ……いや、駄目じゃなっ)」
この馬鹿大臣が居ないと、実務に差し障りが出て、凄く面倒な事になるのじゃ。
『陛下っ、陛下っ、へいっ下っ陛下陛下!!』
扉を叩く音が、リズムを刻み、軽く音楽に聴こえて来たのじゃ!?
「ボソッ(大臣めっ、若干楽しんでおるじゃろ)」
『へいっ下っ陛下。へいっ下っ陛下。へいっ下っ陛下。へいっへいっへいっ陛下あああああ────っ!!』
「五月蝿いは馬鹿者おおお────っ!!」
『陛下、早く出て来て下され。陛下しか判を押せぬ書類が、溜まっておるのです』
「くっ、堪らず叫んでしもうたのじゃっ」
それは分かる。分かるのじゃがっ、大臣に言われると、何故か物凄く腹が立つ。
「元は貴様の所為なのじゃ! あの時っ、余計な事を言いおって!」
『仕方ありますまい』
「反省せぬか!! お陰で儂は……っ、兵の前であんなっ、醜態を晒す羽目にぃぃぃっ」
枕を扉に投げ付けて、枕に顔を埋める。
幸い、兵達が気絶しておったお陰で、見られる事は無かったが……屈辱なのじゃっ。
『陛下……弁明は後程、幾らでもしましょう。ですから今は、出て来て下され。各諸侯からの文も、御座いますれば……』
「嫌じゃ! もう今日は何もせぬしっ、貴様がやっておけ! 女王命令じゃっ!!」
儂は今っ、とても忙しいのじゃ。
あの流とか言う魔王。
どうすれば、彼奴を城へ誘い込めるのかを、考えねばならぬのじゃ。
村一つを、容易く蹂躙出来る程の、戦力もそうじゃが、あの傍に居た獣族……っ、何としてでも、話をするのじゃ!!
『陛下っ! 陛下っ! へいっ下陛下! 陛下ああああああ────っ!!』
「五月蝿いと言うとるじゃろがあああああああああああああああ────っ!!」




