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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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10話 影さんと一緒.1


 12/4 加筆修正致しました。



 俺達は、号泣するルシィをそのまま放置。小ぶりの馬車を走らせ、のんびり移動中だ。

 だってルシィの奴、泣き止まないし、三角座りのまま固まってるんだぜ?

 ルシィの事を、泣き虫女王と、命名しよう。


「なぁ、魔王のにーちゃん」


「何だ、残念聖女様」


「誰が残念聖女様や! しばくぞわれぇ!」


「お前だよ残念聖女っ! この馬車何処に向かってんだよ! あと良い加減、用件を言え!」


 狭い馬車の中で、残念聖女リティナ様と、本気の手四つ力比べです。

 こんな子供にっ、負ける気がしねぇ!!


「おどれほんまっ、指いてもうたるぞっ!」


「おらぁっ! 大人の俺が、残念聖女に力負けする筈なああああああっ折れる折れる指指マジで離せやこの糞聖女おおおおおお──── っ!?」


 大人の俺が、普通に力負けって、何で?

 ステータスが低いから?

 普通に指が、折れそうなんです。

 

「聖女様、落ち着きましょう」


「流君、落ち着きたまえ」


「おとうさんっ! うごいちゃだめ!」


 村長とミルンに怒られました。

 俺の方が、ダメージ大きいんだけど、少しは指の心配してくれよ。


「はんっ、弱いやっちゃな」


「次は胸揉むぞ……あっ、ごめん」


「おどれっ、マジで指折ったろかっ!?」


 今のは俺が悪かった。

 絶壁残念聖女だから、無いもんな。


「はぁ……あん女王、放置してて良かったんかとか、心配してんのに、どーでも良うなったわ」


「さいですか……んで、何処に向かってて、俺への用件とか、まだ話さないのか?」


「到着したら話すさかい、もうちょい待ちーや」


 マジで何処に向かってるんだよ。

 そう言や、ルシィの奴泣きながら、ミルンの目がうんたらかんたら言ってた様な。

 ミルンの目は、若干金色が混ざった目だけど、異世界だし、珍しくも無いだろうに。



 

 王都正門を抜け、右にぐるっと馬車を進ませ、体感時間で六時間。

 馬車の揺れで、尻が破壊されそうです。

 まるで、黄金に輝く、絨毯の様に広がっている小麦畑を抜けて、簡素な小屋が建ち並ぶ風景を眺めつつ、更に奥へと馬車は進む。


「なあ聖女様」


「なんやもうっ、面倒くさいから、リティナかリティで構わへんわ」


「良いのか聖女様?」


「女王相手に呼び捨てやったし、泣かしてたし、魔王のにーちゃんは、人を敬う事せんやろ?」

 

 良くご存知で。

 正確には、敬う人を選んでるだけだ。

 会社勤めの時の様な、上司と言うだけで"よいしょ"するなんて事は、二度としない

 だからあのルシィは、次会っても泣かすぞ。

 まだミルンに、謝ってないもん。

 

「それなら俺の事も、魔王とか言うなよ。素晴らしきニートか、流と呼んでくれ」


「なんやニートって? ラクレル村で会うた時も言うてたけど、魔王の……流にーちゃんの名前なんか?」


「良く聞いてくれた、説明してやろう」


「いや要らんけど……」


「ニートとは、仕事にヤル気を見出せず、いつかは頑張るいつかは頑張る、俺はやれば出来ると言いつつも、親の金(俺の場合は遺産)を毟り取り、一日中、いや、毎日を働かず食っちゃ寝をする自宅警備員の別称であり、人によってはニートになる為、人生の大半を修行に費やすと言う、最高の称号なんだ!」


「話長いし要らん言うとるやろ!?」


 話が長くて、分かり辛いかな。これを、分かり易く例えるなら、何が良いだろうか。

 職に付かず、自堕落に過ごす例えと言えば、やっぱりこれだろう。


「例えるなら……この国の貴族?」


「貴族馬鹿にし過ぎちゃうか!?」


「馬鹿にしてないぞ」

 

 俺の読んでいた薄い本だと、貴族って大体、毎日パーティを開いて、肥え太ってたしな。

 貴族のお仕事って言っても、何してるか分からないし、ニートって例えても良くね?


「流君……貴族とは、そのニートの真逆の存在であるぞ。貴族が居らねば、国が維持出来ぬ」


「そうなのか?」


「当たり前だ。各町や村からの陳情や対応。納められる税の報告」


「ほうほう……」


「農作物の出来具合を確認したり、非常時に備えての備蓄の管理」


「おっ、おお……」


「派閥間との腹の探り合いや、力を固辞する為の夜会を、幾度も開催したりと……こんな事を毎日しておるのだぞ」


「エグ味が凄いな……業務過多だろ」


 貴族だけじゃ、そんな業務をこなせる訳が無いから、各町や村の長に管理をさせて、上手く回しているって事か。


「ガチの中間管理職じゃん」


「中間管理職? まぁ、私の村は……何処ぞの魔王のお陰で、管理する仕事が無くなったのだから、今の私こそ、ニートであろうな」


「一言多いんだよ……」


 アレはお前達が悪いんだぞ? こんな可愛いミルンを、殺そうとするからだ。


「うーっ」


 ミルンが外を見ながら、尻尾を振り振り、馬車から降りたそうにしてる。

 ずっと馬車の中だと、暇だもんな。

 その振り振り尻尾を、ニアノールさんがジッと見つめて、そわそわしてるし。


「ふしゃっ!」


「なにっ、にあのーる!?」


 我慢出来ずに尻尾にアタック!

 うんうん。犬耳幼女と猫耳メイドの戯れる姿って、異世界万歳眼福眼福。


「それで……話を戻すけどさ。なぁリティナ」

「何や、流にーちゃん」


 俺は、馬車からの景色が一変している事に、不安を隠せない。

 小麦畑を抜けて、簡素な小屋を抜けた先。

 どう見ても、ここの雰囲気ヤバいよね。

 日本のテレビの、ドキュメンタリー番組とかで、ちょくちょく流れてたよこの風景。


「ここって、スラム街って、言わないか?」


 すげぇ廃れてて、本気で臭いがヤバい。


ピンポンパンポーン 上がり調


レベルが1上がりました(体臭?)


ピンポンパンポーン 下がり調


「俺のじゃねぇよっ! 臭くないわ!」


「何や急に!?」

「変な人ですねぇ」

「どうしたのかね流君?」

「においがすごいの」


 本当にっ、何だよこのタイミング……アナウンスの内容も、酷過ぎだろ!?




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