9話 真紅の瞳の享楽の女王.6
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『おと──さああああああ──ん!!』
俺は、門兵達に追われてる最中、何処からか聞こえて来た、ふわふわ天使の尻尾を持つ、ミルンの声に反応した。
「っ、何処から……左斜め下後方!!」
直ぐにミルンの姿を確認。
俺とは違って、無事な様だ。万が一ミルンまで捕まって居たなら、ラクレル村宜しく、ここの城壁内の奴等を、殲滅してたぞ。
『詰所に居るものおおお──っ! そこの獣族を捕らえろおおおおおお──っ!!』
背後から追って来ていた門兵が、馬鹿でかい声で、ヤバい事を指示しやがった。
俺だけじゃ無くて、ミルン達にまで敵意を向けてっ、何考えてやがる!?
「っ、ミルン逃げろおおおおおお──っ!!」
どうやらあの場所は、門兵の詰所の様だ。
門兵共がわらわらと……聖女やニアノールさん、村長も一緒になって出て来たな。
ミルンを守る様に動いてるけど、囲まれてるし、臨戦態勢じゃん。
「あの数の門兵っ、三人じゃ突破は無理だろ」
『ふはははっ、おい変質者! 早急に牢に戻らねば、下の者達にも、たっぷりと事情を聞かねばならぬが……』
「はぁ? 何言ってやがる……」
『まあ……あそこの、貴様を呼んだ獣族は、どちらにせよ同罪だ』
コイツ、頭沸いてんのか?
誰が同罪だって?
『いや……アレは、穢らわしい獣であったな。貴様より念入りにっ、より詳しくっ、罪を問う必要があるぞ……くひっ』
獣って……ミルン?
「おい待て……ミルンは関係ないだろ! あの石も透明だった!」
『いやいや、貴様は人種、あれは獣だ。なればこそっ、奴は生きているだけで罪だろう?』
「本気で言ってんのか……」
『本気だとも! 真心の水晶だろうと、間違える事はあるのだよ。そうだな……先ずはあの、穢らわしい耳と尻尾を、切り落とす。人種の姿として────』
ああ……コイツの話を聞いていると、マジでキレそうになるんだけど。
俺は少し、楽しみにしていた。
野営地で聞いた話と、全然違うじゃん。
女王とやらが獣族好きで、しっかりと保護されてんじゃ、無いのか。
「どこが……っ」
『何か言ったか、この変質者めっ!』
「黙れよこの糞共がっ……」
『この私にっ、糞だと……』
俺はステータスと念じ、確認する。
この称号……半魔王。
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・半魔王(ぎりせ〜ふ〜ふふふ)
基本魔法制御解放
心の揺らぎにより範囲威力増減の効果を抑制
特定の魔物好感度上昇
レベルアップ時INT成長を妨害
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謂わゆる"心のぶれ"が、意味の分からない魔法や、巫山戯た威力を出せた理由。
それなら、今はどうなのか。
制御解放。それが文字通りの効果なら、"魔法を使い放題"と、言う事じゃ無いのか。
魔法はイメージが大事。
今までに実際、使って来たから良く分かる。
この効果が、どれ程のモンなのか分からないが、あの魔法で有れば、イメージは容易い。
「糞に糞と言って何が悪い……俺はな、ミルンのお父さんなんだよ。お前らがっ、ミルンに少しでも傷をつけようとするなら……」
『はっ、穢れた獣の父とのたまうか! ならば即座にっ、その首刎ねてやるわ!!』
意識を集中しろ。
お手本は、さっきこの身に受けただろ!!
「ミルンの為ならなぁ……魔王にでも何でもっ、成ってやるわ糞がああああああ──っ!! 焼き尽くせっ、豪──」
『そこまでじゃああああああ────っ!!』
魔法を発動しようとした瞬間、門兵とは比較にならないほどの声量で、俺の動きが止まる。
『貴様の連れは無事じゃ! ゆっくりとそのまま、降りて来るがよい!!』
俺は、憤怒の形相で、前の門兵を牽制しつつ、ゆっくり下を見た。
門兵達が、一人残らず跪いている?
「あの女……今の声は、あいつか?」
その女性は、ミルンを背中から抱き抱えるようにしながら、こっちを見て微笑んだ。
『へっ、陛下!?』
『何故こちらにっ!!』
近くに居る門兵達から、驚きの言葉が発せられているが、コイツらは馬鹿だろう。
陛下陛下と……陛下?
「ボソッ(今はそれよりもっ、アイツだっ……)」
ミルンを傷付けようとした、門兵馬鹿の背後に忍び寄り、未だ視線を下に向けている、その立派な尻穴目掛け、人差し指をぶっ刺した。
「お前は死んどけやゴラアアアアアアッ!!」
必殺、全力悶絶尻穴殺し!!
ボズッッッ────『……あっ!? あああああああおおおおおおおおっ……あっ』
城壁の上から、下を見ていたからね。
そんな場所で暴れたら、足を踏み外すに、決まってるじゃん。
さらば糞野郎。
お前の事は、直ぐ忘れよう。
『嫌あああぁぁぁぁぁぁ────』
さて、下に行くか。
門兵達に、囲まれながらな。




