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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

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10話 耳を澄ませば半裸を発見(女王視点).4


 2026/06/28 改稿


 ジアストール王国の首都・アストールは、王城を中心に、東西南北の門に向かって、下る様に道が整備されており、故に、暴動が起きているとされる北門までは、一直線。

 白銀の胸当てと、腰に剣を携え、キングマッスルホースに跨り、声を上げる。


「決して民を巻き込むなっ! 行くぞっ!」


「「「ははあっ!!」」」


 プゥゥゥ──ッと緊急時の笛を鳴らし、早朝にも関わらず、行き交う馬車や民を避け、マッスルホースを北門へと走らせる。

 第二騎士団騎兵隊、五十名。

 僅かな時間でマッダリー大臣が召集した、即応性と武力に長けた、精鋭達。


「ダイルっ! 冒険者達を抑える役目っ、御主に任せるぞっ! 儂は赤を探すでのっ!」


「分かっておりますっ!」


 騎兵隊の隊長、ダイル・プシュバー。

 元高ランク冒険者で、幾度もの魔物の進行を食い止めてきた、武勇に優れた者。暴徒と化しているのが、冒険者達であるのならば、顔見知りのダイルの言葉であれば、聞いてくれるであろう。

 冒険者は、国に属さない。西のアルカディアス、南の連合国家、我が国であるジアストールの三カ国の中で、中立を保つ独立した組織である。


「儂の言葉ではっ、止まらぬからの」


「心中お察しいたしますっ」


「っ、見えた──総員抜剣っ! 決して殺してはならぬぞっ! 良いなっ!」


「「「ははあっ!!」」」


 スキル『遠見』を発動させ、争う冒険者達、それを抑え込む兵士達を確認した。そしてその中に、最も厄介な存在も、見えてしまった。


「なっ、なぜ聖女が暴れておるのじゃっ!」


 更には、隊長と思しき兵が指示をだし、屈強な兵士達が、獣族の幼子に向けて、突撃態勢をとっている様に見える。

 それは──私が女王となり、やっと成し遂げた、『奴隷解放宣言』に違反する行為。


 一、獣族を、奴隷にしてはならない。

 二、獣族の子供を、殺してはならない。

 三、獣族の全ての権利は、女王ルルシアヌ・ジィル・ジアストールが保証する。

 四、罪を犯した者は、獣族問わず、王国法に則り、裁判後に処罰を受けるものとする。但し、国に属する者が、獣族を虐げ、不当に殺害した場合は、即時処刑の対象とする。


「馬鹿共がっ! はあっ!!」


 キングマッスルホースに命じ、騎士達を置き去りにして、剣を片手に握り締める。

 その時──獣族の幼子が声を発した。


「お父さああああああ──んっ!!」


 ハッキリとその容姿が、目に映った。

 ふわっとした茶髪の癖っ毛に、どこか懐かしさを覚える、金色の瞳。

 声を聞く限り、女の子だろう。それなのになぜか、姿がかぶった。思ってしまった。


「……おにい……さま?」


 子供の頃のお兄様と、瓜二つの獣族。

 手綱を握る手を──緩めてしまった。

 キングマッスルホースが、それを指示だと思ったのか、速度を緩めてしまった。


「しまっ────」


「早くその獣をっ、突き殺せええええええっ!」


「ミルン君っ!?」


 隊長の指示に、兵士達が従い、大男を弾き飛ばし、その槍の穂先を、獣族の子供へ向ける。


「がうっ!!」


 獣族の子供は、斧を振り回すが、あの突撃態勢の兵士の前では、無意味だろう。


「「「ああああああああああああ──っ!」」」


 兵士達の槍が──獣族の子供を襲う。

 私の剣は、届かない。お兄様に似たあの子を、助ける事が出来ない。


「やめ──っ!?」


 止めよと、そう叫ぼうとしたその瞬間、アルカディアスの魔王を前にした、あの時の、いや、それ以上の"圧"が──体を硬直させた。

 獣族に槍を向けていた、兵士達までも、その場で固まり、体を震わせて、動けずにいる。


「んしょっ、んしょっ……?」


 それなのに何故か、あの獣族の子供は、この圧の中を平然と動き、空を見上げたと思ったら、誰かに手を振っている。


「これっ……は、何がっ……」


 さっきまで暴れていた、冒険者達、兵士共々、まるで時が止まったかのように、息を止め、動くことがない。


「ぷはあっ、助かったわぁ……なんやコイツら、急に動き止めおって」


「リティナ様、お怪我は御座いませんかぁ?」


「ふむ。これは……皆、震えておるな」


 違った。獣族の子供だけでなく、聖女や護衛の者、それに大柄な男までもが、この異常な圧の中、平然としている。


「ああ、ミルンの奴が手ぇ振っとるわ。どうやら流にーちゃんは、無事やったようやな」


 聖女のその一言。

 流というその名は、冒険者ギルドからの報告書に、記載されていた。

 獣族の子供の、視線を追うようにして、震える体をゆっくりと動かし、城壁の上を見た。


「えっ……?」


 見間違いかと思い、目を擦り、遠見のスキルを行使して、再度城壁の上を見た。

 見間違いではなかった。

 そこに立って居たのは──パンツ一丁で腕を組み、何やら口をモゴモゴと動かして、何かを言っているのであろう、"半裸の男"が、魔王の如き圧を放ち、鬼の如き形相で立っていた。


「あやつ、何を言っておる……」


 聴覚強化スキルを使い、聞いてみる。


『ミルンに槍を向けやがって殺すミルンに槍を向けやがって殺すミルンに槍を向けやがって殺すミルンに槍を向けやがって殺す────』


「ひっ!?」


 聞いた瞬間──頭が可笑しくなるかと思う程の、殺気の塊が、脳内に響いてきた。

 間違いない。アレが、あの男が──ラクレル村に現れたという、魔王と恐れられる存在。


「あれが……さざなみ、ながれ。赤の者かっ」


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