9話 真紅の瞳の享楽の女王.4
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『そうか……ならば仕方がない。明日、貴様のステータスを鑑定して貰う』
「そのあとになら、水責め万歳ってか……流石に、逃げないとなぁ」
門兵のおっさんの言葉が、頭から離れず、そのまま夜を迎えて、地味にピンチです。
拷問耐性のバフとか、無いですか?
無いですよねーっ!
アレかな、水車みたいなモノに括り付けられて、ぐるぐる回してガボガボなるヤツ。
「お腹がたぷんたぷんに、なっちゃうぞ♪」
不幸中の幸いとでも言うのか、門兵は、鉄格子の外で見張ってるし、まずは枷をどうにかしないと、動けないな。
「半魔王より、こっちのがチートだわな」
ぶっちゃけ、コレを有効活用すれば、一生暮らして行けるであろう、反則級のスキル。
但し、万が一このスキルを、悪用している事がバレれば、一生お尋ね者間違い無し。
使い方は簡単。
今この場所、この城壁を、俺の住まいだと仮定して、ここに有る物全てを、俺の物だと認識すれば良いだけだ。
目を閉じて、集中する。
「……ふぅ。失敗したら、水死体だからな」
俺の物と、認識すれば良いだけ。
俺の物と、認識すれば良いだけなんだ。
あの、国民的人気長寿アニメのキャラ、心優しき苛めっ子も、言ってたじゃ無いか。
「良しっ……」
お前の物は俺の物、俺の物も俺の物。お前の物は俺の物、俺の物も俺の物。お前の物は俺の物、俺の物も俺の物。お前の物は俺の物、俺の物も俺の物。お前の物は俺の物、俺の物も俺の物。お前の物は俺の物、俺の物も俺の物。
「ボソッ(この城壁の物はっ、俺の物おおおおおおおおおおおおおっ、空間収納っっっ)」
スキルが発動した感じがした。
有難うっ、心の友よ。
「ふぅ……入ってるか? 入っているよな? 入って無いと困るぞ……どうだ?」
ステータスの一覧で、持ち物確認。
指でスクロールせんでも、視線でスクロール出来るって、有難いけど意味分からん。
空間収納のスキル効果。
半径二十メートルの、俺の物を自動収納するんだけど……そりゃあ、鉄格子の鍵だけじゃないわな。
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(一覧)
ハイオークの魔石
ミルンの尻尾の毛玉
ミルンの耳毛
ミルンの髪の毛
肉屋の在庫▼
花屋の在庫▼
農作物▼
資材▼
汚れた村人A装備セット
流のリュック▼
門兵Aの家の鍵
門兵Bの家の鍵
門兵Cの家の鍵
門兵Dの家の鍵
門兵Eの家の鍵
門兵Fの家の鍵
門兵Gの家の鍵
門兵Hの家の鍵
門兵Dの不倫相手の家の鍵
門兵Fの不倫相手の家の鍵
門兵Hの不倫相手の家の鍵
門兵Eの貞操帯の鍵
隊長室の扉の鍵
門兵詰所の鍵
門兵女性用詰所の鍵
手錠の鍵×二十五錠
手枷の鍵×十二錠
牢屋の鍵A
牢屋の鍵B
牢屋の鍵C
牢屋の鍵D
牢屋の鍵E
牢屋の鍵F
通路の鍵
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「不倫の証拠、ゲットだぜ?」
門兵のD、F、Hよ。
お前ら妻帯者で、しかも不倫してるって、マジで巫山戯んなよ。俺なんて……俺なんてっ、女性と手を繋いだ事も無いのにっ。
「いつか必ず。奥さん探して、手紙と一緒にこの鍵を渡してやるからな」
手紙の内容は勿論、俺が不倫相手に成りすまして書く、愛のラブレターだ。
門兵Eさんは、絶対女の子だよね? マジで御免っ、いつか必ず返すから。
貞操帯って、マジで有るんだなぁ。
「……直ぐ近くに、八人か」
半径二十メートル圏内の物だからね。
見つかったりしたら、直ぐに確保されて、直ぐに拷問始まりますよってか。
「鍵をっ、手にっ、出てこい……うしっ」
上手く手に出せた。
あとは、手首を捻ってえええっ、腕も死ぬる痛さじゃんこれえええっ。
「……門兵のおっさん、反応が無いな」
結構ガチャガチャ音してるのに、何も言ってこない……耳を澄ませば、寝息が聴こえる、ボンクラ門兵有難う。
「今のうちにっっっ」
んぎぎぎっ、もうちょいでっ、あとは鍵を回すだけええええええっ。
カチッ────「よっしゃ、回った」
静かに枷を外して、そっと地面に置き、手首をくねくね腕をぐるぐる。
「あーっ、手首痛い」
足の拘束も解いて、準備完了だ。
抜き足、差し足、忍び足。
そ──っと、鉄格子の鍵を開けて、門兵のおっさんの顔を見つつ、通路を確認した所で、ふと、頭によぎった事。
鍵をどうこうせんでも、枷をそのまま空間収納に入れれば、手首痛めずに済んだんじゃ……っ、今は脱出が優先だ。
T字路……両側に扉?
え──っと、俺どっちから来たんだ。
門兵を気にしながら、右の扉まで近付いて、ゆっくりと鍵を開け、先へと進む。
すると、またT字路。
「ボソッ(次はこっちかなぁ)」
左に進み、鍵を開け、またT字路。
「ボソッ(次は右か?)」
鍵を差し込もうとするが、鍵穴に合わず、持っている鍵を適当に試して、合う鍵を発見。
カチャっと回して、前方確認。
「ボソッ(お邪魔しまーす……ぅえ?)」
「……はっ?」
目の前には、貞操帯を必死で外そうとしている、見事な太腿全開の女性。
「ほうほう……これはこれは」
「……」
筋肉の筋が見える、健康的な御御足。
美脚とは言えないが、これはこれで、一定層の支持を集めるだろう。
「ふむふむ……」
「きっ……」
しかも、身体のラインと、その御御足のバランスが、絶妙にマッチしており、活発的なその顔立ちも相まって、普通にエロいんです。
「きゃあああああああああ────っ!?」
「ご馳走様でしたああああああ────っ!!」
俺はすかさず、扉を閉めて逆ダッシュ!!
反対側の鍵を開け、右に左に鍵を開け、ただただひたすら猛ダッシュ!!
「だあああ──っ、無駄に広いんだよ!」
直ぐ近くで、門兵達の声が聞こえた。
左右に通路、目の前には階段。
二択から三択になっちゃったよ?
「上るかっ、違う道を行くかっ、どうするよ俺! マジでどうするよ!?」
『あそこに居るぞ!』
『逃すなあああ──っ!!』
『俺達の好一点を泣かしやがってっ、殺す!!」
挟み込んで来た!?
階段一択になったのは有難いけど、何で一人だけ殺る気満々なんだよ!!
『眼前の敵をっ、焼き尽くせ……』
「えっ……それって、詠唱?」
『豪炎!!』
「ヤバっ、こっちも魔法っ、間に合わない!?」
俺は咄嗟に、『空間収納』を発動させ、何でも良いからと、迫り来る炎の塊に投げ付けた。
咄嗟に投げ付けてしまった物。
それを見て、後悔した。
愛用の、もう二度と手に入らないであろう、買物用リュック。その中身は、炭酸飲料とカップ麺。
────バシュッウウウウウウウウウ!!
熱を帯び、その炭酸飲料が破裂した。
甘ったるい液体を全身に浴びながら、全力で階段を駆け上がる。
「カップ麺……っ、大切な日本の食べ物なのにいいいいいい──っ、熱っ!!」
糞っ、火が残って!?
階段を上りつつジャージを脱ぎ、下も脱ぐと同時に下着も脱げ、光が差し込むその先へと、飛び出した。
「──っと、すげぇ高いんだけど!?」
脚がすくみ、睾丸も縮こまる程の高さ。
城壁の上じゃん……怖っ。
でも、このままここに居ると、背後から迫る兵達に捕まって、フルボッコだ。
「すうううっ、はあああ──っ、うしっ!!」
先ずは一歩、足を進めて、二歩三歩。
これは……案外大丈夫?
『上に居るぞ──っ! 急げえええ──っ!』
「行くしか無いよねえええあええ──っ!!」
空が視界を覆い尽くし、照りつける陽の暖かい日差しを、全身で浴びつつ、石畳の上を駆け抜ける。
「フッフッフッハーッ、フッフッフッハーッ」
ただ前を見ながら、脚を上げ、腕を振る。
「フッフッフッハーッ、フッフッフッハーッ」
横幅三メートル、高低差約三十メートルの城壁の上を、口に笑みを浮かべながら、ただひたすらに足を動かす。
「フッフッフッハーッ、フッフッフッ、ははっ」
背後から追って来るのは、立派な鎧に身を包んだ、殺気立っている兵士達。
『待てええええええ──っ!!』
『止まれ──っ!』
『くそっ、騎士団に連絡しろ!』
『何で追いつけないんだ!』
「「「待てえええ──っ、変質者──っ!!」」」
産まれたままの姿だからって、変質者呼びは失礼じゃ無いのか? 全裸にひん剥いたのは、お前達だろうに。
取り敢えずは、煽って逃げなきゃな。
「待てと言われりゃ、全力疾走だ馬鹿共がああああ──っ! はっはっはっ! この桃尻を、捕まえてごらんなさぁいっ!!」
こうして俺は、痴態を晒している訳だな。




