9話 真紅の瞳の享楽の女王.2
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門兵達に引き摺られながら、正門の端にあった扉を潜り、地下へと下りて豚箱イン。
アレだよね?
ここって、西洋の拷問室だよね?
右見て、赤いシミが付いた石の壁。
左見て、赤いシミが付いた鉄格子。
上見て、赤い苔が付いた石の天井。
下見て、赤い苔が付いた石の床。
後ろ見て、門兵のおっさん。
前みて、門兵のおっさん。
狭い部屋で、おっさんに挟まれてます。
おっさんサンドイッチかな?
息切れ、胸焼け、加齢臭に効く、特別なお薬を処方して下さい。
俺の臭いだって?
「まだ加齢臭酷く無いわっ!!」
「何だ貴様っ!?」
「聞かれた事だけに答えろ!」
ミルン、物凄く怒ってたなぁ。
あいつら、大丈夫なのだろうか。
他の門兵達を、あの可愛いパンチで襲って、人の睾丸も悪く無いモゴモゴと、怒りで我を忘れては無いだろうか。
「睾丸は……駄目だぞミルン」
「さっきから何を言っている……私の質問に、さっさと答えてくれないか?」
門兵のおっさんが睨んでくる。
怖いな、怖い怖い。
懐かしき豚野郎の、臭いお口の一割程度ぐらいには、怖いと思うよ。
「質問ねぇ……あっ、背中痒いっ」
「"真心の水晶"に触れて、貴様に罪が有るのは明白なのだ。まさか知らぬとは言わぬな」
「何それ? マジカルストーンですか?」
今日初めて王都に来た人間が、そんなん知ってる訳無いだろうに。
コイツら馬鹿なのか?
「……余程田舎から来たのか? 透明、緑、黄、紫、赤と、その者が犯した罪によって、その色が変わる、貴重な水晶なのだが」
「へぇーっ、俺は赤色だったな。情熱の赤だから、問題無いだろ?」
「っ、殆どの者は透明。兵でも緑、悪くても紫でな……赤くなる事など、私はここに着任して三年になるが、貴様が初めてだ」
「わー凄いね? おめでとうございます!」
ああ、眼精疲労のポーズですね。
余程辛いのだろう。門兵のおっさんが、目を押さえてもみもみもみもみ。
「それでだ、もう一度聞く。一体貴様は、どの様な罪を犯したのだ」
「俺は何もして無いぞ?」
「嘘を吐くな」
「村長の家のお高い紅茶を、勝手に飲んだぐらいだけど……それか?」
「それでは無い!!」
じゃあどれだろうか?
村長の家に上がり込んで、パンを食べた事?
それとも、村長が大事そうに隠していた、お高そうな酒を、勝手に飲んだ事?
「貴様っ、一体過去にどのような悪事を行いっ、人々を苦しめ、陥れたのだ!!」
「そんな叫ばれても、何も無いんだが」
過去、過去、過去なぁ、あれか?
村人一掃キャンペーン。
でも、誰も死んでませんけど?
「貴様……ステータスを見ていないのか?」
「何でステータス?」
「その者の行動によって、ステータスが変化する事を、知らぬと言う気か?」
「いや知らんて……」
「貴様が、何の罪を犯していないと言うのならば、真心の水晶が、赤く輝く事は無かった。今一度、自分のステータスをよく見てみろ」
門兵のおっさんは、もう一人の門兵に何かを伝え、話はそれからだと、牢から出て行った。
「チュートリアル乙……」
そう言えば、ステータスを全く見てないな。
予想していたとは言え、やっぱり勝手に、色々変わっていくのか。
「なんか、見たくないなぁ」
嫌だなぁ……でも、少しだけ気になる。
王都の道中確認してないし、こんな清廉潔白な俺が犯罪者って、可笑しいもんね。
そっとぉ……ステータス確認。
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小々波 流 35歳
レベル 10→11UP(楽し…経…値効果)
能力
STA 15
INT 23
VIT 17→56
AGI 90→135
DEX 85→120
(村人男性平均100とした値)
スキル
・身体強化(これで貴方もマッスルバディに)
・楽…い経…値リシュエルのサプライズ
・空間収納(大人の本の隠し場所として)
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
・歪みの叡智(どうなっても知りません)
・ー 判別不ー ー
称号
・逃げ惑うニート
・崖からダイブするニート
・ミルンを愛する者(あっマズイです〜)
ミルンを愛する者の効果を発動。
・ケモナー(ゴールド免許)
+
・種を超えた奇跡(魔物特効)
+
・怒れるニート(恐怖)
+
・火事場泥棒(生き抜く為に)
+
・なんちゃって魔王(笑)
以上の称号を確認。
統合開始。
…統合中…。
…統合中…。
…統合中…。
…統合…リシュエルからの妨害を感知…。
…リシュエルからの妨害を感知…。
…リシュ…ルか…の…。
…統合…中…。
統合完了。
・異界の無法者(これなら〜)
・半魔王(ぎりせ〜ふ〜ふふふ)
スキル
・身体強化(これで貴方もマッスルバディに)
レベルアップ時DEX能力プラス値補正
レベルアップ時AGI能力値プラス補正
レベルアップ時上記能力値以外の成長を妨害
・楽しい経験値リシュエルのサプライズ
行動内容によりランダムにレベルアップ
レベルアップ時の効果音
レベルアップ時のリシュエルの楽しい一言
レベルアップ時の効果音
・空間収納(大人の本の隠し場所として)
容量制限無し
防腐効果 劣化軽減
効果範囲半径二十メートル以内
手に持っている物は収納出来無い
己の物と認識している物のみ収納可
取り出す際は一覧を参照
・歪みの叡智(どうなっても知りません)
使用時の心の揺らぎよる効果変化
INT スキル使用毎にランダムでダウン
-スキル使用制限中-
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
小々波 流の固有魔法
全属性魔法中級まで使用可
使用回数制限無し
心の揺らぎにより範囲威力増減(抑制中)
半魔王効果により制御可
レベルアップ時INT成長を妨害
・ー 判別不能 ー
運---捻-----ー判別不能ー
称号効果発生
・異界の無法者(これなら〜)
空間収納効果範囲拡張
レベルアップ時 VIT上昇補正大
レベルアップ時 AGI上昇補正大
レベルアップ時 DEF上昇補正大
・半魔王(ぎりせ〜ふ〜ふふふ)
基本魔法制御解放
心の揺らぎにより範囲威力増減の効果を抑制
特定の魔物好感度上昇
レベルアップ時INT成長を妨害
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「……えっ、どゆこと?」
俺はゆっくりと、背後に居る、もう一人の門兵のおっさんに振り向き、聞いてみた。
「ねぇ……どゆこと?」
「何がだ……おいっ、顔を近付けて来るな!」
頑張って首を曲げ、伸ばして聞いているのに、何も答えてはくれなかった。
◇ ◇ ◇
「陛下っ、へいかあああ──っ!!」
「何じゃ騒々しい」
ジアストール城、謁見の間。
その直ぐ隣に作られた執務室にて、来期の税収入を計算していた、女王、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールの下へ、大臣が顔に汗を張り付かせ、息も絶え絶え走って来た。
「へぃっ、へぃっ、へぃっ下!! 大変に御座いますううううう!!」
「少し落ち着かんか馬鹿者。儂は、へぃっ下と言われるのは面白いと思うが、今の其方の顔の方が、より面白く思えるぞぇ」
ほれ、飲むが良いと、黒い液体を差し出す。
「あっ有難うこじゃいますへぃっ、へぃっ下っ」
黒い液体が入った容器を手に取り、喉の渇きを癒す為、そのまま一気口へ────「ぶぶふううう──っ!?」
入れた瞬間、盛大に噴き出した。
見事な黒い噴水である。
「良いのう良いのう! その噴き出した勢いと、其方の顔……ぷっふふっぷっ、はっはっは!」
持っていた羽ペンが手から離れ、実用性重視の椅子の上で、腹を押さえて笑いこけ、大臣は咳込み、其れを見て更に笑う。
「あーっ、笑うた笑うた。それで、大事とは何じゃ大臣。咳込んでおらずに、早よ申さぬか」
「ごふっ……」
えーっ理不尽。
大臣は、そんな言葉を飲み込みつつ、汗を拭き、息を整え説明する。
「現在、王都正門側の牢にて、犯罪歴のある者が居り、それが赤を示したとの事。また、その勾留している者の容姿が……っ」
大臣の顔に、せっかく拭いたにも関わらず、再度大量の汗が吹き出す。
「赤じゃと……それより先の言葉を何故言わなんだ? 赤よりも重要な事なのじゃろ」
大臣は首を縦に振り、言葉を続ける。
「勾留している者の容姿が……先の…そのぅ…ラクレル村を、蹂躙したと言われている魔王と、合致します!!」
「何じゃとっ!?」
呑み込むのに時間がかかった。
村一つを軽く蹂躙せしめた、魔王と言われる存在。そんな存在が、王都に来ている。
そんな存在が赤なのは納得しよう。
赤なのは納得できるが。
納得できるが。
「何故捕まっておるのじゃ……意味が分からぬのぅ。これは、確認せねばならぬなぁ、大臣?」
「……陛下?」
女王は軽やかに執務机を飛び越え、そのまま全速力で、部屋から駆け出して行った。
「へいっっっ陛下ああああああ──っ!!」
後ろから、大臣が何やら叫んでいた。




