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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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9話 真紅の瞳の享楽の女王.1


 11/25 加筆修正致しました。



 空が視界を覆い尽くし、照りつける陽の暖かい日差しを、全身で浴びつつ、石畳の上を駆け抜ける。


「フッフッフッハーッ、フッフッフッハーッ」


 ただ前を見ながら、脚を上げ、腕を振る。


「フッフッフッハーッ、フッフッフッハーッ」


 横幅三メートル、高低差約三十メートルの城壁の上を、口に笑みを浮かべながら、ただひたすらに足を動かす。


「フッフッフッハーッ、フッフッフッ、ははっ」


 背後から追って来るのは、立派な鎧に身を包んだ、殺気立っている兵士達。


『待てええええええ──っ!!』

『止まれ──っ!』

『くそっ、騎士団に連絡しろ!』

『何で追いつけないんだ!』



「「「待てえええ──っ、変質者──っ!!」」」



 産まれたままの姿だからって、変質者呼びは失礼じゃ無いのか? 全裸にひん剥いたのは、お前達だろうに。

 取り敢えず、煽って逃げなきゃな。


「待てと言われりゃ、全力疾走だ馬鹿共がああああ──っ! はっはっはっ! この桃尻を、捕まえてごらんなさぁいっ!!」


 さて、何で俺が全裸で、玉をぶらぶらさせながら、こんな場所を走っているのか、説明しなければならないな。

 話は、王都に到着した時にまで、遡る。




 野営地を抜けた俺達は、穏やかな陽射しの中、筋肉馬に引かれた、コンテナの上部で寝そべりながら、お手製の神経衰弱をやっていた。


 空間収納内の資材から、木の板を取り出し、簡単な絵をミルンに教えながら描き、何とか二十組完成。


「うーっ、これ!」


 違うんだよなぁ。


「残念、俺の番だな。ふふふ、これとこれだ!」


 あれ、間違えた?


「ミルンのばん!」


 尻尾がふりふりと、俺の視線を誘導したな。

 そんな風に過ごしていたら、聖女の馬鹿みたいな声が、コンテナ内部から聞こえて来た。


『二人共ーっ! もう直ぐ着くでーっ!』


 可笑しいよね。

 聖なる乙女と書いて聖女と読む筈なのに、それを一切感じさせない大声だぞ。

 この異世界の聖女は、ネタ聖女なの?

 

「もう直ぐ……よっと」

「んしょっ、んしょっ」


 俺は立ち上がり、ミルンは肩に跨り、道が続くその先を見ると、正に異世界だ。


「すっげぇ……」

「おぉーっ、大きいです」


 ジアストール王国首都。

 石造りの城壁は、高さ約三十メートル。その城壁が、田畑も含め、王都を全体を囲む様に造られている。

 城塞都市なのだろうか?

 実際に、その壁が何処まで続いているのか、分からない程の広大な土地に、人口凡そ、約三百万人が住んでいると言う。

 

 住民達は穏やかで、市場は活気に溢れ、王の統治に揺らぎが無い事が分かる。また、その治世の良さが噂になり、人を呼び込み、根付き、また噂になりと、未だ発展途上中の凄い都。


 王都の中央に行けば行く程、土地が盛り上がっており、丁度円を描いた中心に、王都のシンボルであり、王が住まう場所、ジアストール城が存在する。


「とまあ、こんな感じやな。分かった?」

 

 コンテナ内部に降りた俺に、聖女が聴き取りづらい発音で説明して来たので、脳内補正をかけながら、何とか理解した。


「このままやと入られへんから、一旦手前で降りて、徒歩で王都に入るで」


 聖女なのに徒歩。

 筋肉馬に引かれたコンテナのままだと、大き過ぎて、城門壊しそうだもんな。


「たのしみ!」


 ミルンはふんすっと鼻息荒く、尻尾を膨らませて興奮してるけど……何その尻尾、膨らむのモフモフ。


「ほら、ヘラクレスも準備せぇて。中入ってから、やってほしい事説明するさかい」


「結局移動中に、説明は無かったですな」


「そんなん言うたっけ?」


 村長は、渋々とした顔で聖女を見つめているが、聖女は何のことやーっと知らん顔。


「皆様、到着いたしました」


 ゆっくりと筋肉馬が動きを止め、ニアノールさんが先導し、ドアを開けた。


「うしっ、行くぞミルン!」

「いっぱいあそぶの!」


            


「……それで聖女さんや、いつになったら、俺達は入れるんだい?」


 ミルンが苛々して、俺の頭をパシパシポンパンと、楽器代わりにしているんだ。

 

 俺達はなぜか、正門の列の最後尾で、あの夏冬の名物である、某即売会ばりに整列して並んでいるんだ。

 正直言って暇過ぎる。


「なぁ、聖女リティナ様」


「なんや急にっ、気持ち悪いやっちゃな!?」


 えっ……名前を呼んで貶された。


「何で俺達、並んでいるんだ?」


 いや、そんな口を開けて、馬鹿な子を見る様な目で俺を見るなよ。アンタ聖女だろ。


「かーっ、ほんま田舎者は。これやから困るわ」


「流君。この門を自由に出入り出来るのは、陛下と門兵のみで、貴族、騎士団、商人、都に住む者等、例外無く並ばなければならない」


「何その面倒臭いの……」


 犯罪者を中に入れないための、検問なのか?

 やり過ぎ感が、半端ないなぁ。


「おとうさん…ねむい…」


 ミルンが俺の頭を枕にして、寝ちゃったじゃん。テーブルからのランクアップ、おめでとう俺の頭。


『次の方ーっ、ここに手を当てて、ゆっくりと進んで下さーい』


 知らない間に、順番が来ていたようだ。

 ようやく中に入れるよ。


「ほらミルンさんや、起きて降りなさいな」


『慌てず騒がず節度を持って、紳士淑女の皆様、走らず順番にお願いしまーす』


「本当に、何かを買う列じゃ無いよな? 薄い本とか異世界にあったら……普通に買うぞ」


 ニアノールさんを先頭に、門番さんが持っている透明な丸い石を触って進み、怪しい聖女、筋肉村長、可愛いミルンと来て、最後は俺ですねーはいはいっと。

 

「はいタッチ」


 透明だった石が赤く輝きを放ち、石を持った門番さんが笑顔で俺の顔を見て来たので、俺も門番さんを笑顔で見返す。


「…………(ニコッ)」

「…………(デヘッ)」


 門番さんが俺の手を掴んで来たから、俺は掴んできた手を更に掴み返した。


「…………(ニコッ)」

「…………(デヘッ)」


 門番さんが、持っていた石を投げ捨て、俺の胸ぐらを掴んできたので、俺は門番さんの足を踏み付け、門番さんが息を大きく吸い込み、俺も息を大きく吸い込い込んだ。



「犯罪者だあああああああああああああ!!」

「痴漢よおおおおおおおおおおおおおお!!」



 門兵達が凄い速さで駆けつけて来て、一瞬立ち止まって迷ってる様だったが、直ぐに俺を殴りつけ、抑え込み、即座に腕に枷を付けられ、どう事コレ?


「糞痛ってぇ、何すんだよ!?」


「おとうさん!」


「来るなミルン!!」


 ミルンが怒りを露わにしながら、俺を助けようとするも、村長がミルンを止めてくれた。


「待てミルン君!」


「はなしてっ、はなしてよーっ!」


「我慢せぇミルン! 直ぐに助けたるさかいに、今は動いたらあかん!」


 聖女は何も出来ずに、傍観している。


「流さんっ」


 ニアノールさんは、直ぐ動ける様な姿勢のまま、だけども動く訳にはいかない。


「すまない……皆んな」


 俺は、意味が判らないまま枷に紐を通され、まるで刑事ドラマの最後を見るかの如く、門兵達に連行されて行った。

 

「本当に……どうなってんの?」




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