7話 魔王?違いますニートです.3
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聖女と御対面。
何故そんな話になってるの?
それはね、俺を呼んでるんだって。
誰が?
面識の無い、聖女様とやらがだよ。
そんなこんなで、ミルンに装備を剥ぎ取られ、輝きを失ったおっさん共をひきずって、聖女さん何処かいな?
肩の上のミルンは、おっさん共から剥ぎ取った装備を身に付け、御満悦状態。
振り振りしてる尻尾が、背中をパシパシと、リズミカルに叩いてるよね。
「その聖女様って、何処にいるんだ。この村に、偉い奴が泊まれる場所なんて、見た事無いんだけど」
「其れならば問題は無い。聖女様は、護衛付きの馬車で、泊まられておるからな」
「ふーん。高級宿に案内しろとか、無いんだな」
俺の勝手なイメージだけど、大体この手の人間は、高飛車、傲慢、偏屈と、三拍子揃った、名ばかり聖女だと思ってる。
『オホホ。私、ナイフとフォークより重たい物を、持った事が有りませんの』
『言う事を聞かないと、貴方死刑よ? それが嫌なら、薬草を摘んで来なさいな』
こんな感じの聖女。
あとは、イケメンにコロッとなびいて、他の人見捨てたりとかする、最悪な奴とか?
「流さん、見て見て! ぴかぴかっ!」
ミルンは、腕に付けている剥取り品を、愛でながら遊んでるな。
光り物が好きなんだね。
物凄く可愛いし、俺も遊びたい。
「流君、あそこだ」
「あそこ……何あれ?」
村長が指差した場所。
確かにら馬が居るな……あれが、馬?
異世界の馬って、脚が六脚あるの?
凄い格好良い。
「お馬さん! お肉!」
「ミルンさんや、涎が頭に垂れてるよ?」
あのお馬さん達は、お肉じゃ無い。
と言うか、ミルンの殺気に勘付いたお馬さんが、一歩下がったよ。
『ブルゥッヒヒイイイイイイインッッッ』
『ブルゥブルゥッッッ』
「あぁ……暴れ出したな」
繋がれてるから、逃げられ無いもんね。
なんかスマン。
「それで、聖女様何処だ? 馬だけなんだけど」
「流君の目は節穴かね。繋がれておる先を、よく見るのだ」
繋がれた先?
くそ太いロープが伸びてて……んんっ?
「なあ村長」
「なんだね流君」
「これは、馬車とは言わない」
コンテナハウスって、言うんだ。
ガコンッ────『どうしましたかぁ?』
お馬さんが暴れたから、結構鳴き声響いて、コンテナハウスから、誰か出て来た。
お馬さんに近付いて、撫でてるな。
「よーしよし。どうしたの、こんなに震えてぇ」
『ブルゥブルゥッ』
お馬さんが、甘えた声を発してる。
しかしそんな事よりも、俺はその、馬をあやすその姿に、眼を奪われてしまった。
「あれぇっ、ヘラクレス様じゃないですかぁ」
こちらに気付き、静かに近付いて来る。
「あの姿は……」
フリフリのメイド服に身を包み、青ずんだサラサラの髪の毛を、肩まで短く揃え、頭からピョコッと言わんばかりにでている、三角のお耳様。
その三角に尖った両耳が、辺りを伺うようにピクピク揺れており、目が離せない。
エプロンスカートからは、細くて長い綺麗な尻尾が、歩く度に振り振り振り振りと、後ろから付いて来るかの様に揺れ、その姿はまるで、天から与えたもうた人類の至宝。
胸元に左手を当て、片膝を付き、右手の手のひらを上にしたたまま、前にだす。
「貴女が、聖女様ですね」
俺の瞳から、涙が止めど無く、溢れて来た。
「ヒィッ!?」
その麗しきメイド様は、何故か腰を抜かして、後退りをしている。
「流さん!?」
「何をしておるのだ流君!?」
ミルンが俺の背中に、強めに尻尾を当ててきた、気持ちいい。
その後、村長の拳骨と、ミルンの脳天ナックルを受け、俺は我にかえった。
「君と言う人種は……彼女は、聖女付きのメイド兼護衛の────」
エプロンスカートの両端を、指で摘み、軽く持ち上げ、流れる動きで頭をさげる。
「初めましてぇ、ニアノールと申します。ヘラクレス様の仰る通り、聖女様のお付きを、させて頂いております。宜しくお願い致します」
笑顔が可愛い、猫耳が可愛い、モフっと尻尾が細くて、素敵な尻尾。
メイド猫耳……流石異世界。
神の創りたもうた、素晴らしい存在だ。
「ニアノールさんだね……ハァハァ」
「ヒィッ!?」
「流君!?」────ゴッッッ!
「流さん!?」────ボクッッッ!
二人にまた怒られた。
あとミルンさんや。脳天肘打ちは、下手したら死ぬから、止めて下さいクソ痛い。
「でっでは、こちらでお待ちください」
急いで何処かへ、行っちゃった。
猫耳メイドさんカムバーック!!
コンテナの中に案内され、少し待機。
見れば見る程、小さな家だ。
壁として、太めの木材を使い、それを組み合わせて、待合室やお手洗い、各用途に合わせた部屋としているっぽい。
「ふむふむ……」
考えている風を演出だ。
頭の中は正直、ミルンのモフモフ尻尾と、ニアノールさんの猫耳で、埋め尽くされている。
他の事を考える余裕なんて、無いっ!!
「目が犯罪者っ、どうしたのだ流君」
「流さんは、私と初めて会った時も、身体を弄って来て、楽しんでいたの……」
「ミルンさんや……それは誤解だよ?」
ミルンの爆弾発言に、村長は真面目な顔をして、俺の細腕を捻り潰さんばかりの力で掴み、濃い顔を近づけて来た。
「流君……頼むから、頼むからっ! 聖女様に失礼の無い様っ、頼むのであるっ!!」
「顔近いっ、念押しせんでも分かってるよ!?」
ここ迄念押しって。俺が一体、いつ、誰に、失礼を働いたと、言うのだろうか。
酷い村長だぜまったく。
「お待たせ致しました。此方へどうぞぉ」
「ようやくか」
「頼むぞ流君……」
「猫耳には要注意……」
ニアノールさんの案内で、ドアの前に立ち、軽くノックして、声をかける。
コンッコンッ────「入って良いか?」
『入って来てええでーっ』
関西弁の様な、少女の声が聞こえた。
さぁさぁ、聖女様とご対面だ。
どんな奴なのかね。
ゆっくりと、ドアを開く。
因みにドアは、引いて開けるタイプだ。
「んっ? 壁……」
壁があるんだけど……壁…かっ!?
ペタペタと、その壁を触っていたら、生臭い鼻息を、俺の顔に吹いて来た。
頭がデカく。
『プギィ』(片目ウインク)
顔もデカい。
『プギィプギィ』(片足立ち)
身体は丸身を帯びており。
『プギィプギャ』(腹肉掴みブルブル)
腕はミルンの大きさで。
『プギプギ』(力こぶっ!)
股間に光る、もっこり感。
『プギィィィ』(大股)
鼻息荒くその姿。
『プギィ』(腕を上げ)
忘れはしない夢の中。
『プギィッッッ!!』(マッスルポーズっ!!)
二足歩行の、お豚さん。
『プギイイイイッ! プギャァッッッ!!』
「もう嫌ああああああああああ────!?」
恐怖で股間が若干湿り、涙が溢れて思考がバグり、俺はそのまま、意識を手放した。




