表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/655

7話 魔王?違いますニートです.3


2026/06/12 改稿!



「んで、なんで俺が、行かないといけないんだ」


「仕方あるまい。聖女様が、魔王と噂される流君を、連れて来いと仰ったのだ」


「本当に噂になってんのか……面倒だなぁ」


 輝きを失い、縛り上げられたおっさん共、もとい、教会関係者を引きずって、ラクレル村の北側に位置する広場へと、足を運んでいる。


「魔王ねぇ……俺はただの、中年だぞ」


「……はっ?」


「睨むなよ村長」


 お前は何を言ってるんだと、言わんばかりの顔を、村長は向けてくるが、本当に俺はただの、中年ニートで間違いない。


「この私を、あの様な魔法で圧倒し、村人を蹂躙しておきながら、今更ただの中年だと言うのは、些かどうかと思うがね……」


「事実だ。あの時使えた魔法も、使えなくなってるし、意味わからんわ」


「ぴかぴかっ、綺麗なのぉーっ!」


 一瞬空気が重たくなったが、絶賛肩車中のミルンの声で、その空間は霧散し、内心安堵しながらも、ゆっくりと歩を進める。

 機嫌の良いミルンの尻尾が、パシパシと俺の背中を、リズミカルに叩くお陰で、なんとか平静を保てている状態だ。


「そんで、その聖女様って、どこにいるんだ。この村に偉い人が泊まれる場所なんて、見た事ないんだけど」


「それならば問題はない。聖女様は、護衛付きの馬車で、泊まられておるからな」


「ふーん。宿に案内しろとかは、ないんだな」


 俺の勝手なイメージだけど、大体この手の人間は、高飛車、傲慢、偏屈と、三拍子揃った、名ばかり聖女だと思っている。


「若しくは、ガチの善人か……」


 そっちの方が、ある意味"怖い"。

 善意なんてモノを、平気で振り翳す輩ほど、根っこの部分は、腐っているかもだからな。

 善意は悪意と、表裏一体だ。

 社会人を経験していたら、嫌でも分かる。


「流さん見て見てっ! ぴかぴかっ!」


「……眩しいっ!?」


「むふふっ、光るミルンですっ!」


 このミルンの様に、肉食べたいや、光りモノが好きといった、純粋な欲がある奴なら、まだ信用出来そうなんだけどな。


「どうだかねぇ……」


 ボーッと歩いていると、村の北側へ到着したのだが、馬車らしき物は見当たらない。


「見た事ない家はあるけど……どこだ?」


「流君、あそこだ」


「あそこ……何あれ?」


 村長が指を差した場所に、馬がいる。より正確には、馬っぽいナニカがいる。


「馬?」


 四足歩行の馬ではなく、六足歩行の馬? 異世界の馬って、六脚馬なのか? 俺より大きくて、物凄く格好良いんですけどっ。


「お馬さんっ! お肉っ!」


「ミルンさんや、涎が頭に垂れてるよ?」


「美味しそうなお肉っ!」


 あのお馬さん達は、お肉じゃない。というか、ミルンの殺気に勘付いたお馬さんが、一歩下がって逃げようとしている。


「ブルゥッ、ヒヒイイイイイイインッッッ」


「ブルゥブルゥッッッ」


「あぁ……暴れ出しちゃった。家に繋がれてるとか、どんだけ力が強いんだよ」


 ミルンの視線から逃げる様に、クルッとその場で回って、尻がこっちを向いている。

 なんか……スマン、馬っ。


「それで、聖女様どこだ? 馬だけなんだけど」


「流君の目は節穴かね。繋がれておる先を、良く見るのだ。あそこに聖女様が居られる」


「繋がれた先って……えっ?」


 馬から伸びている縄を辿っていくと、どこからどう見ても、四角い木造家屋の筈なのに、その下部には、立派な"車輪"が付いていた。


「なあ……村長」


「なんだね流君」 


「これを馬車とは言わない」


 よく見ると、所々に鉄製の部品が付いており、四角い形も相まって、どこからどう見ても、コンテナハウスにしか見えない。


「作った奴、可笑しくね?」

 

 そのコンテナハウスを眺めていると、ガコンッ──と重たそうな扉が開き、誰か出て来た。


「どうしましたかぁ?」


 そのままお馬さんに近付いて、よしよしと宥めているのだが、そんな事よりもだ。


「よーしよし。どうしたの、こんなに震えてぇ」


「ブルゥブルゥッ」


 その馬をあやしている人の姿に、俺は眼を奪われ、脚が小刻みに、震えている。


「あれぇ、ヘラクレス様じゃないですかぁ」


 こちらに気付き、静かに近付いて来るその姿は、ミルンに続いて二度目となる、奇跡の存在であろう。


「っ……良い……」


 フリフリのメイド服に身を包み、青ずんだサラサラの髪の毛を、肩まで短く揃え、頭からピョコッと、こんにちはと言わんばかりに出ている、三角の猫耳様。


「間違いない……」


 エプロンスカートからは、細くて長い綺麗な尻尾が、歩く度に振り振りと、後ろから付いてくるとか、俺を誘惑しているのだろうか。


「ふぅ……良しっ」


 息を整え一歩前へ──左手を胸元へ、地面に片膝を付き、「貴女が……聖女様ですね」と、右手の平を上にして、そっと前に出す。

 流式貴族風ご挨拶、イン、猫耳バージョン。

 俺の瞳から止めどなく、涙が溢れてきた。


「ヒィッ!?」


 その麗しき猫耳メイド様が、なぜか悲鳴を上げて腰を抜かし、そのまま後退りをしている。


「流さんっ!」


「何をしておるのだ流君っ!?」


「おごぉっ!?」


 ゴズンッとミルン必殺の、脳天ナックルと、ゴスッと村長の拳骨が合わさり、相乗効果を発揮して、一瞬お花畑が見えた。


「ぉぉぉっ、ガチであの世がっ……」


「君という人種は……彼女は、聖女様付きのメイド兼護衛の、ニアノール殿だ」


「今紹介されてもっ、痛くて頭に入らんっ」


 涙目になりながら、痛みに耐えて前を向くと、猫耳メイドも立ち上がり、エプロンスカートの両端を、指で摘み、軽く持ち上げ、流れるような動きで、頭を下げてきた。


「初めましてぇ、ニアノールと申しますぅ。ヘラクレス様の仰る通りぃ、聖女様のお付きを、させて頂いておりますぅ」


 ニコッと笑顔が素敵で、猫耳が可愛い。

 モフっとした、素敵な尻尾。

 更には本物の、メイドさん。

 本物の、猫耳メイドさん。


「これがっ、奇跡と言うモノか……っ」


「ヒィッ!?」


「流君っ!?」


「流さんっ!」


 ゴズンッ──ミルン必殺の脳天肘打ちが、良い感じに俺の脳天に、突き刺さりましたとも。

 下手したら即死だから、勘弁して欲しい。


「ニアノール殿。聖女様のご要望通り、王都で噂になっておる者を、連れて来たのである」


「……その人ですかぁ?」


「うむ……この男なのだ」


 何だろう、残念な人を見るような視線を、全方位から感じるんだけど、気の所為だよね。


「でっでは、中へどうぞぉ」


 猫耳メイドに案内されて、コンテナハウスの中へと入ると、「こちらでお待ち下さい」とだけ言って、猫耳メイドが行ってしまった。


「猫耳メイドさんって……良いなぁ」


「流さんっ……肘打ちするよっ」


「ミルンの殺気が凄いっ!?」


 頭上をとられているから、逃げれません。


「にしても、凄い造りだな……」


 壁として太めの木材を使い、それを組み合わせて、待合室やお手洗い、各用途に合わせた部屋に、しているっぽい。


「目が犯罪者であるぞ。どうしたのだ、流君」


「流さんは、ミルンと初めて会った時も、身体を触ろうとしてきたのっ」


「誰が犯罪者だっ。それとミルンさんや……変な誤解を生まないで?」


 ミルンの爆弾発言に、村長は真面目な顔をして、俺の細腕を捻り潰さんばかりの力で掴み、濃い顔を近付けてくる。


「流君……頼むから、頼むからっ! 聖女様に失礼のない様っ、頼むのであるぞっ!!」


「顔が近いっ! そんなに念押しせんでも、分かってるっての……暑苦しいわっ!」


「信用ならぬっ!」


 ここまで念押しするとか……俺が一体、いつ、誰に、どこで、失礼を働いたというのだろうか……失礼な村長だ。


「お待たせ致しましたぁ、こちらへどうぞぉ」


「ようやくか」


「頼むぞ流君……」


「猫耳には要注意っ」


 ニアノールさんの案内で、ドアの前に立ち、軽くコンコンッ──とノックしてから、声をかけて反応を待つ。


「入って良いか?」


『入って来てええでーっ』


「……関西弁?」


 声を聞く限りだと、少女っぽいんだよなぁ。

 一体俺に、何の用があるのだろうか。


「聞いてみれば、分かる事だな」


 そう思い、ゆっくりと扉を開けた先に居たのは──六畳程の広さの部屋で、椅子の上で胡座をかきならが焼菓子を頬張り、ポロポロ溢す、褐色肌の少女が居た。


「……」


「おーおーようやく来おったか。待っとったでーっ、ヘラクレス」


 焼菓子の"大半"を、口から溢す少女が居た。


「なあ……村長」


「何だね、流君」


「あの生意気そうな餓鬼が、聖女なの?」


 思っていた聖女像の、どれでもない。

 何というか……威厳の欠片が微塵もない、懐かしの小ギャルっぽい雰囲気だ。


「残念聖女じゃん」


「誰が残念聖女やゴラァっ!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ