表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界
18/306

間話 王都ジアストール国の小さな悪魔.4


 ゼイルノースは王の前で跪いていた。


「御父上、いえ、バハス・ゲイ・ジアストール国王に進言したき義が御座います」


 ゆっくりと言葉を選びながら。


「おぉゼイルノースや、今回はどの様なおねだりなのかのぅ?良い良い申してみよ」


 親バカ全開の威厳の無い声で聞いて来る。


「はっ。現在ここ、ジアストール国に向けて決起した獣達の集団が向かって来ているとの事。至急、騎士団総出撃の元、これ等を撃滅する許可頂きたく存じます。また、総大将にアシュノン・ゼァ・ジアストールを推挙したく存じます」


「ふむぅ…また懲りずに獣共が来よったか…して、何故総大将がアシュちゃんなのじゃ? お主ではいかんのかのぅ?」


 一国の王が王座で娘をちゃん呼びしても誰も突っ込まない…。


「はっ。その事に関しましては直接アシュノンより嘆願があり、少しでも騎士団に寄り添い、一助に成れば、との事に御座います」


 バハス国王はうんうんと笑みを作る。


「アシュちゃんは優しいのぅ…あいわかった。アシュノン・ゼァ・ジアストールを総大将に穢らわしい獣達の殲滅を騎士団に命ず。また、少しでもアシュちゃんを傷つける獣が居れば、生皮を剥ぎ、身の方はゴブリン共の餌とする様厳命する!!」


 最早この父は、一種の病気であろう。


             ※


 王宮内の一室で、正妃、側妃の面々が集まり、優雅なひと時を愉しんでいる。


 その中に愛くるしい笑顔で焼き菓子を頬張る少女、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールは、まだかまだかと心の中で苛々していた。

 

 最近のお店はどうのだの、美味しい新作スイーツがどうのだの侯爵に子供が…伯爵に子供が…あちらの奥様は…此方のお子様は…今のトレンドは…御洋服…お似合い…愛くるしい…あぁあああコイツ達本当にダメだわ。


「ルルシアヌ」


 おっと笑顔笑顔ニコッ

「はいお母様」

「貴女ももう八歳になるのです。そろそろ婚約者を選ばなければなりません」


 国が滅んだら意味無いんだよこのババア!?


「はい。出来ましたら兄上のような格好いい男性が良いのですわお母様」


 正妃はそれを聞き満足そうに頷いている。


「本当に仲が宜しい事、でも流石に兄妹では婚約出来ませんもの其れは諦めて下さいな?」


「「「おほほほほ」」」(大合唱)


 解っとるわそんな事ぉおおお!!


「あら、嫌ですわお母様。あくまでもこんな方が理想と申し上げたまでですわ」


 ニコッっと笑顔を振り撒くと、ああ可愛らしい可愛らしいと囲まれる。


 苦しい。


 遠くから、出撃のラッパ音が鳴り響く。

 

 あぁ…ようやく。

 それを聞き、笑顔をより深く作る。


「影」


 ルルシアヌは誰にも聞かれぬ様、命令を下だす。


             ※

 

「整列!!」


 等間隔で並び、一指乱れぬ動きを作る屈強な騎士団。

 総勢五万人。

 幾度もの反乱を未然に防ぎ、討ち滅ぼして来たジアストール国が誇る精鋭達。


「軍団長、妹を宜しく頼むぞ」


 ゼイルノースは軍団長の肩を叩く。


「はっ! お任せ下さい殿下! 必ず御護りいたします!」


 顔を硬直させながら返答する。


「宜しく頼む。で、アシュも達者でな」

「はぃ〜お兄様もお元気で〜またいつか〜」


 お互い笑みを浮かべ、別れの挨拶。


 そう、これらは、ただの派兵に見せかけた国外への脱出(精鋭部隊を添えて)である。


 精鋭部隊五万人の内、二万人はいわゆるアシュノンの息が掛かった者で占められており、殆どが部隊長クラス。


 アシュノンが舞台で歌うとなれば、訓練と称し各種セッティングから衣装合わせ、来客の管理や不審者の洗い出しまで行い、アシュノンがアレが欲しいと言えば夜通し整列して買って来て、国王がアシュノンに会おうとすれば全力で邪魔をする。


 狂信者集団である。


 因みにノーマル兵士は理由を付けて戻す手筈となっている。


 そして、国外脱出の理由としてーーー


「これで〜ずっと一緒ですね〜」by.アシュ

「はっ! この命尽きる迄、貴女様の隣で御護りする事を誓います!」by.軍団長


ーーーと、駆け落ちする為であった。


 但し、狂信者達は諦めていない。

 軍団長の寝首を狩く事を。


「出陣!!」


 高らかに進撃のラッパ男が響くのであった。


           ※


「それで、後はお兄様ですわね?」


 笑みを浮かべながらルルシアヌは言う。


「あぁ、これで良い。あとは頼めるかルシィ?」


 黒装束を見に纏い、足元には自らの父であった唯の物。未だ剣から血が滴り落ちる。


「王を殺し、逃亡の人生を選びますのね」


 ルルシアヌはそっと、兄の頬に手を添えた。


「これで国は保てますわ、あとはお任せ下さいませお…お兄様」


 手を離し、王座へと進む。

 振り返らずに。

 これが国の為と。

 真紅の眼から、雫が溢れ落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ