間話 王都ジアストール国の小さな悪魔.3
それからはあっという間に時間が過ぎて行った。
お亡くなり(細切れミンチ)になった監督の代わりに、王子様の指示のもと、影さん? (細切れミンチを作った本人)がこの鉱山の管理を任され、王子様本人はーーー
「すまない。一度本国へ帰り、なるべく早く迎えに来れる様努力する。そうだな、一年、あと一年だけ耐えてくれるかい?」
ーーーと意味の分からない事をのたまい、私の尻尾を名残惜しそうに眺めながらこの場を去っていった。
そして、影さん(ずっと黒外套を被っている)から簡単な指導書を渡されて私が他の子達を管理する様小さな声で言われた。
何故文字が読める事を知っているの?
丸投げでは無いのか?
思いながらも恐いから聞けない…細切れミンチ作った人だからね!
指導書をみてみる。
そこには、キッチリと労働時間が定められており、食事は一日三回、休憩時間にはお菓子も支給され、自由時間まで確保されている。しかも必要だと思える物を申請すれば、買って来てくれると言うのだ。
「お前は其れを彼らに徹底して守らせろ」
影さんがハッキリとした声で命令してきた。
男性かな? 女性かな?
命令なら仕方がないよね?
この私がちゃんと守らせますとも!
安心して下さい!
などと頭では応えているのに口からだせない。
あー眼がぼやける埃入ったー。
私は顔を隠しながら、首を縦に振った。
影さんが、私の頭を優しく撫でるのだった。
※
薄暗い空間に設置された円卓を囲む者。
「さて、以上が今回の視察の報告となるが、この状況、計画を早める必要があると思うのだがどうだアシュ?」
ゼイルノース・ゲイ・ジアストールは彼女達に問いかける。
「そうですわねぇ…このままだと良くて暴動、悪くて国が滅ぶ、でしょうか〜? う〜ん、どう思いますか〜ルシィ?」
蒼き瞳の慈愛の姫君、アシュノン・ゼァ・ジアストールは末妹に問いかける。
「間違いなく滅ぶでしょう、こんな馬鹿な国。そうでしょう、ゼイルノースお兄様?」
真紅の瞳の享楽の姫君、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールは長兄に問いかける。
「そうだ。各労働施設全てでいつ爆発してもおかしく無い状況が出来ている。非常に不味い。父上も母上も人種の事しか見ていないから気付かない、気付けないのだ」
焦りが顔にでている。
暴動が起きれば其れを鎮圧すれば良い。
非常に簡単な事だ。
だがそれをしてしまえば、国は自らの首を絞める事にもなってしまう。
今までこの国は、耕作、鉱夫、汚水の処理等過酷な労働には奴隷を利用して来た。獣など破いて棄てる程いると言わんばかりの生死を問わぬ環境。建国から続く永い時の中で、小規模であれば幾度も経験した事態。但し今回は…。
金色の瞳の知恵者、ゼイルノース・ゲイ・ジアストールは息を吸い、覚悟を決めて声を発する。
「今この時を持って」
確固たる意思を胸に。
「王の首獲ってガス抜き作戦を…開始する!」
あの麗しき尻尾を愛でる為に!
「あれ〜首獲ってお花で飾りましょう作戦では無かったですか〜?」by.アシュ
「違いますわ。首獲って投げ合いましょう獣族達と作戦ですわお姉様」by.ルシィ
纏まりの無い、悪魔達が動き出した。