間話 ジアストール王国の小さな悪魔.2
11/10 加筆修正致しました。
今日は何だか慌ただしい。
朝早くに叩き起こされる事無く、皆んなゆっくりと、寝る事が出来た。
だってもう、朝日が昇ってるよ?
折檻されない?
そう思っていたら、監督が来た。
何かいつもと、様子が違う。
『お前ら! 少しでも良いから汚れを落とせ!』
私達が汚いと?
あそこの井戸で、毎日尻尾の手入れしてますが、それでも汚いと?
監督さん大正解!
超汚いです。
ボロ布でいくらお手入れしても、埃まみれの垢まみれで、フケがこんなに沢山。
全員で拭きあいました。
焼け石に水だろうけど。
そして私達は、いつもの様に穴の中へ行き、いつもの様に、岩と格闘。
また汚れてるんですけど?
えっ……監督は馬鹿?
『おいお前らっ! 集まれ!』
急に監督が現れ、濁声で叫んで来た。
心を読まれた?
馬鹿なのに?
『お前らぁ! 集まって"飯"だ!』
監督のその言葉に、皆んなが一斉に、ツルハシを振る手を止め、首を傾げる。
監督の言葉が、頭に入らないのだ。
だって、ご飯で集まるなんて、今まで一回も無かったのに……なんで?
『早くしろ!』
その濁声に怯え、しぶしぶ一人、また一人と、休憩所と言う名の、監督の私室へと入って行った。
するとそこには────今迄に見た事が無い、豪華な料理の数々と、ぴかぴか光る宝飾を身に付けた、笑みを浮かべる男の子が、立っていた。
『取り敢えず、これで全部でさぁ、旦那』
監督が下手に出ている。
珍しいと言うか、下っ端感が凄い。
その下っ端を従えている、男の子。
何と言うのか……ぴかぴか?
ぴかぴかの金髪で、ぴかぴかの宝飾も付けてて、全体的に眩しい。
しかも、顔は男の子なのに、背が高い。
王子様?
似た様な姿が、昔の私の記憶に有るなぁ。
男の子が、一歩前に出て来た。
『初めましてだね。僕はゼイルノース。ゼイルノース・ゲイ・ジアストール。この国で、王太子と呼ばれている者だ』
やっぱり王子様だった。
正直眩しいので、宝飾取ってくれない?
私達は、貴方を見るよりも、そこの湯気全開なお料理に目を向けたいの。
小さい子達の目が、ヤバいでしょ?
お預けするなら、喰われちゃうよ?
『……そうだね、食べ終わってから話そうか。デル、良いだろう』
デル? 誰?
反応したのは……監督?
名前がデル。何がデル。腹がデル?
初めて監督の名前聞いたよ。
『分かりやした。お前らっ! 有難く頂け! 食って良しっ!』
その監督の号令で、私達の戦が始まった。
『私の肉だ離せえええっ!』
『痛っ、誰よ! 尻尾引っ張んな!!』
『この野郎っ、尻から食ってろ!』
『あんっ? テメェは雑草でも食ってろよ!』
『皆んな落ち着いてっ、ぶふっ!?』
『ウチュのよにく……』
『どうぞぉ、美味しいですよぉ』
誰か飛んで行った?
私はこうして、確保済みです。
喧騒を見ながら、モゴモゴ、食べてると、モゴモゴ、お祭りを思い出すなぁ。
『隣、良いかな?』
モゴモゴと食べていたら、ぴかびか王子様が寄って来た。
何か距離近いな、この王子様。
勝手にどうぞと、私は頷いた。
私の隣に座ったぴかぴか王子様は。目の前の喧騒を眺めて直ぐ、こっちに目を移す。
私の身体を、上から下まで、舐め回す様に見た後、お尻辺りでその目が止まる。
こいつ、変態?
そう思っていたら、私の尻尾目掛けて、手を伸ばして来た。
パシッ────尻尾を鞭の様にして弾く。
あっ、また手を伸ばして来た。
パシッ────尻尾を鞭の様にして弾く。
『……少しだけ、触らせては貰えないだろうか』
今度はお願いをしてきた。
私は今食べてるの、モゴモゴモゴ。
そう易々と、触らせる訳が無い。
『私の尻尾を触って良いのは、ここに居る家族だけ。見ず知らずの貴方には、絶対に触らせないからモゴモゴ』
『そうか……失礼な事をした。許してくれ』
そう言って、離れていった。
やっぱり変態?
王子様に対して、言い方不味かったかな?
『おい! 百五十二番、こっちに来い!!』
おっと、監督がお呼びだ。
監督の後を延々と、洞窟の奥に進んで行く。
お喋りな監督が、何も声を発さない。
不気味だなぁ。
そう思いながらも、歩いていたら、洞窟をくり抜いた様な部屋に到着した。
何故かそこには、錆び付いた檻が有る。
疑問に思ったその時────急に監督が振り返り、私の体が浮き上がった。
私の目に映ったのは、ツルハシを振り抜いた、監督の姿。
お腹が熱い。
痛い以上に、熱い。
『このっ穢れたっ! 醜いっ! 化物が!』
倒れ込む私のお腹に、まるで傷口をえぐるかの様に、ツルハシを打ち付けてくる。
『旦那のっ! 命令をっ! 無視しやがって!』
さっき食べたモノが、口から溢れ出てきた。
胃酸の嫌な臭いが、鼻を刺激する。
『俺のっ! 出世にっ! 響くだろぅが!!』
監督は、血走った眼を向けて来る。
髪を掴まれ、引き摺られていき、そのまま檻の中へ投げ込まれた。
『お前はそこで、大人しくしてろ!』
監督が声を上げて、戻って行く。
その後ろ姿が見えなくなり、足音が聞こえなくなって直ぐ、お腹の傷を確認。
結構抉れて、若干アレが見えた。
冷や汗で体を濡らしながら、集中する。
痛みで、直ぐにでも泣き出したい。
泣いてしまったら、あの監督が戻って来て、更に酷い状態に成るだろう。
それに、泣いたら傷の処置が出来ない。
私は、痛みを堪えて唱える。
『癒しよ司る、大いなる風にっ、乞い願う』
負けてたまるかっ、負けてたまるかっ。
『願くばっ、御御力の一端で、矮小なるこの身をっ、御助け下さい……』
でも痛いし熱いっ、あと一声っ!!
『ヒーリングウインドッ』
獣族は、魔法を使えない。
但し、私はそれに当てはまらない。
転生者特典かな?
ぶっちゃけ、コレ使えなかったら私、既に死んでますからね?
何で使い方知ってんのって?
私だって知らないわ!
何となーく使ったらっ、適当に使えた! 以上!!
『あーっ、お腹空いたぁ』
食べたモノ、全部ゲロっぱ。
お腹の中はが、空っぽですからね。




