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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

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間話 ルルシアヌ・ジィル・ジアストール.2


 2026/06/12 改稿!


 お兄様が、各村、鉱山の視察を終えて、帰って来た。帰って来たのだけど、「ルシィにも見て欲しかったよ。あの麗しの尻尾……思い出すだけで僕はっ……」なとど、まるで恋する乙女の様な眼差しで、天井を見詰めていますの。


「お兄様のご趣味に、とやかく言うつもりは御座いませんが、場所を弁えて下さいまし」


「そうですよぉ、ゼスお兄様。せっかくこうしてぇ、ルシィちゃんと、私と、ゼスお兄様が揃ったんですからぁ」


「おっと、これはすまない。でも本当に、素晴らしい毛並みと、強気な女性だったんだ……」


 これは……重症ですわね。

 ゼイルノースお兄様は、獣族に偏見がないと言えば、聞こえは良いが、その実、ただ獣族の尻尾や耳が、愛らしく感じるらしい、ただの変わり者ですの。

 普通にしていれば、金髪金眼の長身といった、世の淑女を虜にする容姿ですのに、中身を知られれば、大変な事になりますわ。


「はいはい。ゼスお兄様は、獣族がお好きですからねぇ。私もですけどぉ」


 薄いレモモ色をした、ふわっとした癖っ毛を、腰まで伸ばした長髪に、ボーッとした眼差しの、とても優しそうな女性。

 ジアストール王国一の、人垂らしである、第二王女、アシュノン・ゼァ・ジアストールお姉様も、無類の獣族好き。

 と言っても、ゼイルノースお兄様よりも、まだマトモで、奴隷という名目で彼ら、彼女らを囲い、こっそりと教育をした上で、東の地へと逃がしている、とても優しいお姉様。


「それで、お兄様。各地を巡回、視察をなされたとの事ですが、如何でしたの?」


「我が妹ながら、直線的に聞いてくるね。そこがルシィの、良いところだけど」


「茶化さないで下さいまし。真面目に聞いておりますのよ?」


 この飄々とした感じで、焦りを誤魔化そうとしている事くらい、バレバレですわ。お兄様の癖など、把握しておりますのよ。


「……ルシィには、敵わないなぁ。うん、そうだね。そろそろ、真面目な話をしようか」


 お兄様の目線が、この部屋の扉に向いて直ぐ、外から「ぐがっ!?」と、見張りの兵の苦しそうな声が聞こえ──静かになった。


「彼には悪いけど、ここでの内容は、聞かせられないからね」


「殺したのですか?」


「まさか。少しばかり、眠ってもらっただけさ」


 恐らくは、ゼイルノースお兄様に付き従う、影の一人がやったのだろうが、どうやってお兄様からの指示を、受けたのかしら。

 

「……」


「ルシィ。影の事は、深く考えても無意味さ。知らない事が多過ぎるけど、そういう者だと思えば、気にならなくなるしね」


「楽観視し過ぎですわ」


 呆れ顔で、お兄様を見詰めていると、「良いなぁ、ゼスお兄様とルシィは。私には影なんてぇ、居ないのにぃ」と、頬を膨らませて、アシュノンお姉様が拗ねている。


「お姉様には、第二騎士団の兵達が、居るではありませんか。影達では、表立って動けませんので、そっちの方が羨ましいですわよ」


「そうかなぁ? そうなのかもぉ、ふふっ」


「アシュは皆から、好かれているからね。僕としても、羨ましく思うよ」


 三人でテーブルを囲み、雑談を楽しむ。

 母親が違う兄妹、姉妹なのですけど、よくもまあ、ここまで仲良くなりましたわね。


「ゼイルノースお兄様……本題を」


「おっと、そうだった。僕が巡回し、助けた獣族達からも、色々と話を聞いてね」


「解放者ですよねぇ。王都でもぉ、奴隷達の噂にぃ、なっていますよぉ」


「ははっ、それは嬉しいな。それで、僕が見て来た事と、影達に調べて貰った事を含めて、出した結論は……この国は、遠からず終わる」


 さっきまでの、飄々とした態度が消え、その顔には、この国を背負う者の一人として、王太子としての顔が出ていた。


「その結論に至ったのは、なぜですかぁ?」


「それは私も、聞きたいですわ」


 大規模な反乱で終わる。その言葉であれば、納得はするのですけれど、お兄様はそう言わずに、ただ"終わる"としか、口にしていない。

 それの意味するところは、何なのか。


「簡単な話、この国の民は、慣れ切ってしまっているんだ。彼ら、彼女ら獣族を、使い潰す事にね……それが間違いだとも、知らずにさ」


「そんなのは、見ていれば分かりますわよ」


「ルシィ。ルシィの頭が良いのは、認めるけれども、もっと柔軟に考えなきゃね」


 まどろっこしいですわ。十も歳が離れていますのに、もっと分かり易く、説明して欲しいと思うのは、悪い事かしら。


「柔軟さがない事は、善処しますの。それで、お兄様には一体、何が見えていますの?」


「ふむ……そうだね。この国で畑を耕しているのは、誰だと思う?」


 急に何を言い出すんですの? その問いには答えなど、一つしかありませんわ。


「農家の者ですの」


 そう私は答えたのだが、何故かスッ──と、真面目な顔の、お兄様の指が近づいて来て、パチンッと私の額を弾いた。


「痛っ、何をしますのお兄様っ!」


「視野が狭い事への、ちょっとしたお仕置きさ」


「痣になったら、どうするのですかっ!」


「その程度じゃあ、ならないよ。ルシィは分からないみたいだし、アシュはどうかな?」


 ぐっ、私は正確に答えた筈ですのに、何が間違いだと言うのかしら……農家ですわよね?


「えっとぉ、畑を耕してるのは、奴隷にされたぁ、獣族達ですねぇ」


「……あっ」


「正解。流石アシュだね、良く理解しているよ」


 そうでしたわ……この国で畑を耕しているのは、農家の者が"買い付けた"、奴隷の獣族達。

 

「畑だけじゃないよ。鉱山、下水道といった、僕らがやりたくない事を"全て"、獣族達に押し付けて、やらせて来たんだ」


「……っ、五百年もの間、ですわね」


「そう、その通り。だからこそ、反乱の前にこの国を襲うのは、飢餓だろうね」


 国の根幹たる農耕を、獣族に無理矢理やらせているからこそ、もしもその獣族が逃げ、耕す者が居なくなってしまえば、どうなるのか。


「使う事に慣れた者では、畑を耕せない……と言う事ですのね。納得ですわ」


「でもぉ、そこまで酷くなりますかぁ?」


 アシュノンお姉様の疑問も分かる。

 獣族を使って、畑を耕していたとしても、その手法をしっているのは、農家の人。

 飢餓が起きるまでに、なるかと言うと……最悪を考えた場合に、なるでしょうけどね。


「ルシィ、アシュ。僕はね……このままだと確実に、飢餓が起きると考えているよ」


「それは何故ですの?」


「巡回中に、各村へ寄って、農家の者に、尋ねてみたんだ。芋の成長具合と、収穫時期をね。彼らは何と、答えたと思う?」


 これは──とても嫌な予感がしますわ。


「お兄様……っ」


「あらぁ……その言い方だとぉ……」


「そうさ。彼らは皆一様に、同じ言葉を吐いたんだ。『あそこの奴隷に、聞いてくれ』とね」


 全てを獣族に任せ、自らは何もせず、それを何世代にも渡って、続けて来た結果。

 自分たちは上だと、支配する側だからと、汗を流さず、楽をし続けた者達の末路。

 獣族達だって、馬鹿ではないのだ。自らを虐げてきた者達から、逃げる際、その畑をどうするのかなんて、分かり切っている。

 根刮ぎ作物を採り、使い物にならなくする。

 私でも、そうするでしょう。

 

「お兄様は、最初に仰られましたわよね。各村や、"鉱山"を視察されたと。まさかっ……」


「そのまさかさ。武器の製造に必要な、鉄鉱石。金、銀、銅にいたるまで、採掘を行っているのは、獣族達なんだ」


「鉱床の場所も、知られているのですね」


 ゼイルノースお兄様が、仰られた、『この国は、遠からず終わる』という言葉。その言葉の現実味に、押し潰されそうになる。


「だからね、僕は考えたんだ」


「っ、何か解決策がありますの?」


「解決策と言うか、獣族達のガス抜きかな?」


 獣族達の……ガス抜き? ガスというのは、確か、地面から噴き出すという、火を近付けたら爆発するモノですわよね。


「一体何を、するんですかぁ?」


「教えて下さいまし……お兄様」


「なあに、簡単な話さ。獣族達のガス……怒りを、少しばかり和らげる方法はね……現国王と王妃を、"処刑"すれば良いんだよ」


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