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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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間話 ジアストール王国の小さな悪魔.1


 11/10 加筆修正致しました。



 『ジアストール王国』────

 冒険者であったジアストールが、未開の地を切り拓いた事から始まった、小国である。


 原住民族である獣族を、悉く殺し、犯し、奴隷として使い捨て、小国でありながらも、大国と渡り合う、"人族絶対主義"の国。

 

 建国から凡そ五百年。

 現国王、バハス・ゲイ・ジアストールには、三人の子供達が居た。


 第一王妃の息子。

 ゼイルノース・ゲイ・ジアストール。


 第二王妃の娘。

 アシュノン・ゼァ・ジアストール。


 第三王妃の娘。

 ルルシアヌ・ジィル・ジアストール。


 現国王は、聡明で思慮深く、民衆から、治世に力を注ぐ"優しき賢王"と云われる者。

 王妃達も、国王を支える為力を合わせ、各派閥を取り纏め、争いの無い、平和な時代を作り上げていた。


 その平和に、疑問を抱く者達。


 第三王妃の娘、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールは、その赤き瞳を煌めかせ、口元に笑みを浮かべながら、国王である父へ言う。


「バハス陛下。いえ、お父様」

「おぉ、どうしたのだ、ルルシアヌや?」


 まだ八歳という、幼い娘から声をかけられ、嬉しそうに微笑む国王。


「はい、お願いがありますの」


 ルルシアヌ・ジィル・ジアストールは、国王を下から見上げる様に、首を傾げて言う。


「ふむふむ。可愛い娘からの頼みじゃ、何でも聞いてやろうぞ? 新しい"玩具"かのう? それとも"ペット"が良いか?」


 国王の威厳などは何処へやら。

 末娘が可愛くて、仕方が無いと言わんばかりに、顔が崩壊しきっている。


「有難う存じます。では、死んで下さいませ♪」


「んっ、今何と?」

 ────プシュッ!


 その言葉と共に、突如国王の背後から"影"が現れ、そのまま首を、斬り落とした。


 馬鹿顔をしたままの、国王の首が、そのままころころと、転がって行く。



 ルルシアヌ・ジィル・ジアストールは、転がって来た、自らの父であった"モノ"を踏み付け、ただただ、笑みを、浮かべていた。


◇ ◇ ◇


 ここは、何処なのだろう?

 身体が動き辛く、意識もハッキリとしない。


『おっ、指を動かしたぞ!? 可愛いなぁ』


 誰かが私の手を、触ってくる。

 指をぷにぷにしないで。


『もぅっ、そろそろ仕事に行きなさい!』


 誰かが私を、抱きかかえた。

 暖かい、優しい香りがする。


『もうちょっと! もうちょいだけ!』

『だーめっ。パパに行ってらっしゃい、しようねー』


 その誰かは、私の手を取り、ゆっくりと左右に振って、何をしてるのだろう。


『くぅっ! ウチの娘が可愛い過ぎるてっ、行きたくないけど行って来ます!!』


 そのまま走って行った。

 それを見た後、すぐに目が閉じていった。



 声が聞こえて、目が覚めた。

 何かを言い合っている。


『このままじゃ此処も危ない』

『何処に行けば良いんだ!?』

『俺は……戦うぞ』

『やるんだ! 奴等から家族を守れ!』

『争って何になるんだ! 敵う訳無いだろ!』


 物凄く煩いけど、私は眠いんだ。

 そのままゆっくりと、目を閉じた。


◇ ◇ ◇


 私はゆっくりと、目を目を開けた。

 辺りはまだ暗い。

 よく分からない夢を見た所為か、体が怠く、汗を酷くかいている。 

 そっと体を起こし、近くの井戸がある場所へ静かに歩いて行く。


 音を立てようモノなら、朝まで折檻され、そのままあの仕事を、しなければならなくなる。

 それは嫌だ。

 と言うか、普通に死んでしまう。


 ゆっくりと水を飲み、月明かりで、水面に浮かぶ自分の顔を、覗き込む様に見る。


 モコモコと毛深い頭に、そこから少し垂れ下がった耳。歯は尖り、容易く骨を噛み砕く事ができる、強靭な顎。


 何度見ても、信じる事が出来ない。


 腰の下あたりからは、フワフワした尻尾が生えており、自分の意思で、左右に振り振り。


 触り心地は抜群なんだけどね。

 そんな事を思いながら、尻尾の手入れした後に、静かに寝床へと戻った。




 私達の朝は早い。

 朝日が昇る前に、大声で叩き起こされ、起きなかった子は、そのまま何処かへ連れて行かれ、帰って来ることは無かった。


 壊れかけのツルハシを、ただひたすらに、目の前の岩に向かって、振り続ける。


 食事は一日に一回。

 殆ど水みたいな、薄っすいスープのみ。

 但し、希少な鉱石を掘り当てた子は、御褒美としてお肉が貰える。

 全く掘り当てる事が出来ない子は、折檻され、そのまま居なくなる事がある。


 私は、死にたくない。

 少しでも、栄養を摂らないと。


 そう思いながらツルハシを振ると、大きな岩が割れ、何かの鉱物だろうか。宝石の原石の様なモノを、見つける事が出来た。

 

『おぉっ!? 良くやった百五十二番!』


 その鉱石を監督に見せたら、物凄く褒められて、拳大のお肉を貰う事が出来た。


 これで、今日を凌ぐ事が出来る。


 私は、少し離れた場所へ移動して、そのお肉を一口大にちぎった。

 包丁があれば、綺麗に切れるのにね。

 無いモノねだりだ。


 私は死にたく無い。

 死にたく無いけど、死なせたく無い。

 監督に知られない様、こっそりと、小さい子達にお肉を渡した。

 勿論、私も一口食べました。

 生肉だけど、これも生きる為。


 朝起きたら、隣で寝てた子が死んでいた。

 そんな事が、当たり前と言う日常の中で、だからこそ、こんな理不尽に負けたく無い。

 

 気付いたらここに居た。

 何故なのか分からないし、自分の名前だって思い出せない。けど、コレだけはハッキリと、言う事が出来る。


 今ここに居る私は、"転生者"だ。



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