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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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6話 狂気のニート



 暖かな光、穏やかな光。

 それがゆっくりとミルンを包み込む。


 傷が消え、可愛らしい耳が治り、小さな手が生えてきて、折れていた脚も治っていく。

 尻尾の毛並みも艶々モフモフ。

 呼吸を確認、穏やかな寝息をたてている。

 

 俺はミルンを抱き抱えたまま立ち上がり、村長の顔を見る。俺はどんな表情をしているのか。


 ミルンが助かったと気を緩める間も無く、沸き上がる怒りが俺の心を蝕んでいく。


 今ならどんな事だって、どんな魔法だって使えそうだ。固有スキルの所為か? 中級って何が使える? いや、今はそんな事よりもだ。

 

「村長」


 俺は一歩近づく。


「何かな流くん」


 村長が一歩後退した。


「子供をこんな目に合わせて、罪悪感はないのか?」


 俺は問いかける。


「子供? 其奴は穢わらしい獣だぞ。魔物と変わらん! 魔物を狩って罪悪感なぞ生まれるか?」


 いつもの、白い歯を見せていた笑顔は無く、侮蔑の笑みを向けてくる。

 

「そうか、アンタは良い奴だと思ってたのに残念だよ。ヘラクレス ヴァント」

 

 そんな言葉、聞きたく無かった。

 村長も周りの奴等もなんで笑えた? 子供をいたぶって殺そうとして、巫山戯るな、巫山戯るな!!


 俺の魔法が、想いでどうにかなるならっ、俺の願い通りに行使できるよなぁ……徹底的に潰す!!


 俺は怒りの矛先を────


「私も残念だ! 君はもっと賢い人種だと思っていたのだがね、小々波 流くん!!」


────この村全域に定めた。


「楽に生きられると思うなよ」


 ニートの蹂躙が始まる。



 

 村長が剣を腰に添え、一瞬にして目の前現れ一閃。

 俺はそれを『シールド』思い付く守りの魔法で弾きつつ、『アースニードル』村長の股間目掛けて土槍を飛ばす。

 村長は冷静にそれを捌き、上段、中段、下段と剣の軌道を変えてくるが、俺はミルンを抱き抱えたまま『シールドウォール』その全てを、弾き返していく。


「流くん、君は魔法使いだったのか!?」


 幾百の剣閃を防がれ、息があがり、離れて整えようとしている。


「さてね、俺はただの、ニートだよ」


 イメージした魔法が、発動されるのなら、ある意味チート万歳だな。現代で磨かれたこの妄想力、全開にして打ち込んでやる。


『ファイヤランス』


 村長は剣の面で防ぐが、衝撃で根本から折れる。


『アースバインド』


 村長の足が大地から伸びた杭に貫かれ、縫い留められる。


『アースショット』


 村長は急所を腕で防ぐが、その片腕が弾け飛び、膝を折り地面に伏した。


「「「ヘラクレス様ッ村長を助けろー!!」」」

「待てぇええええ!?」


 手に鍬や木の棒を持って、必死な顔で向かって来てもな、慕われてるな村長。

 でもなお前等、ミルンが苦しんでる姿見て笑ってたよな? 笑ってたんだよな。


 容赦しないし……する気も無い!!

 

 肉屋のおっちゃんは、この魔法かな?

 花屋のお母さんは、お花畑にっと。

 農家の夫婦は、くっつけて、ほいっ。

 手紙配達の若者は、潰しましょーう。

 仲の良い夫婦は、旦那のアレを!!

 嫌味を言う爺は、口要らないよね。

 愛想が良い青年は、顔面フルボッコ。

 狩が生き甲斐のおじさんは、手を焼き焼き。

 冒険者の男女は、腕要らんかねー?

 泣きながら襲って来る女性は、足をボキッと。

 逃げようとしているおっさんは、お目々にジュー!

 綺麗な顔を歪ませている女性は、全裸になぁれ。

 太った叔母さんは、脂ギッシュッ!

 痩せている爺いは、椅子に座らせ固定完了。

 次は……次は……残さず魔法を撃ち込みましょう!


「もう辞めよ!?」


 んっ、何をだ村長? 


「爺逃げようとしてるじゃん、逃がすかよ」


 ほいファイアアローっと。使えるね、これ。


『火矢』って言っても、撃てるかなっと。

 撃てた撃てた、もう一発!!


 爺いが脚を押さえ、悲鳴をあげているなぁ。

 少し煩いぞっと。

 押さえている腕を狙って火矢を撃ち、刺さると更に煩い悲鳴をあげながら、転がって行った。


「もうっ辞めてくれぇっ」


 だから何を? 

 えーっと次はー冒険者発見!


「まだ居たのか冒険者さん」


 無詠唱いけるかな? いけた! けど威力弱いな。

 んじゃ、『ロックバレット!』。


 逃げようとしていた冒険者の背中に幾つもの石の弾を撃ち込み、撃ち込み、撃ち込む。


「一向に血が出ない……? あー鎧かぁ」


「お願いじまずっ、やめでぐだざいぃ…」


 村長が這い蹲り、泣きながら懇願してきた。

 俺は辺りを見渡す。

 まだ子供達が残っているじゃないか。


 俺はゆっくりと、子供達のいる場所へ歩き出す。

 子供達は怯えて声も出せず、ただ懇願するような目を向けてくる。俺は目線を合わせて、優しーく聞いてみた。


「ガキ共。何でお前達はこの子、ミルンって言うんだけど、ミルンが血を出して倒れていたのに、笑っていたんだ?」


 子供達は、震えて首を左右に振ってとー答えない。

 俺聞いてるんだけど? 

 じゃあ君!!

 君だ、君に聞こう、ちゃんと答えれるよね? 


 俺は一人に指を向け、その子は震えあがる。

 口をパクパクさせて、何を言っているか分からない。


「お父さんお母さんに、言われているだろ? 質問には、大きな声で答えましょうって。ほら、声にだせ」


「お…いて…」


 聴き取れないなぁ、まあ大体理解出来るけど。


「お父さん、お母さんが笑って居たから。この子が、いや、もしかしたら、前にも同じ事あったのかな? 要は親の真似をしたんだろ。大丈夫だ、君達は悪く無い。悪いのはお前等の家族だ」

 

 俺は、子供達に笑顔でそう言った。

 子供達は、俺の笑顔を見て、ほっとした様だ。

 助かる、僕達、私達は悪く無いと、そんな顔だ。


「だからって、お前達を許す事には、ならんからな」


 豹変した俺の表情に、子供達の顔が一気に恐怖へと変わり、俺は魔法を撃とうと手を向け────


「ぉと…さん…むにゃ」


────ミルンの声を聞いた瞬間、怒りが引いていく。


 ミルンと子供達を交互に見て、溜息を吐いた。


「命拾いしたなガキ共……ミルンに感謝しろ」


 俺はミルンを撫でながら、村長の所へゆっくりと近づいて行く。


「こんな事をして満足か…流くん」


 這い蹲り、力無き声で聞いてくる。

 満足か? 大満足だぞ。

 だってほら、見てみろよ。


「良かったな、誰も死んでいないぞ?」


 村長の傷口を、魔法で焼きながら坦々と答える。

 村長はゆっくりと身体を起こし、その光景をみた。見てしまった。


 誰一人死んではいない。ただ、誰一人として無事な者もいない。地獄が現出したかの様な光景。


「流くん…流くんにとって、その獣族は…なんなのだ?」


 虚な目で聞いて来た。


「そうだな…父さんと言われたからなぁ…うん、父親になっても、良いと思える存在だな!」


 村長は遠くを見つめて。


「そうか…」


 ただそれだけを言い残し、意識を失った。




 オブラートに編集致しました!! 包みました!!

 えっ? 包みきれていない? 

 そんな事は無い筈!!

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