表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界
14/306

6話 狂気のニート



 暖かな光、穏やかな光。

 それがゆっくりとミルンを包み込む。


 傷が消え、可愛らしい耳が治り、小さな手が生えてきて、折れていた脚も治っていく。

 尻尾の毛並みも艶々モフモフ。

 呼吸を確認、穏やかな寝息をたてている。

 

 俺はミルンを抱き抱えたまま立ち上がり、村長の顔を見る。俺はどんな表情をしているのか。


 ミルンが助かったと気を緩める間も無く、沸き上がる怒りが俺の心を蝕んでいく。


 今ならどんな事だって、どんな魔法だって使えそうだ。固有スキルの所為か? 中級って何が使える? いや、今はそんな事よりもだ。

 

「村長」


 俺は一歩近づく。


「何かな流くん」


 村長が一歩後退した。


「子供をこんな目に合わせて罪悪感はないのか?」


 俺は問いかける。


「子供? 其奴は穢わらしい獣だぞ。魔物と変わらん! 魔物を狩って罪悪感なぞ生まれるか?」


 いつもの白い歯を見せていた笑顔は無く、侮蔑の笑みを向けてくる。

 

「そうか、アンタは良い奴だと思ってたのに残念だよ、ヘラクレス ヴァント」

 

 そんな言葉、聞きたく無かった。

 村長も周りの奴等もなんで笑えた? 子供をいたぶって殺そうとして、巫山戯るな、巫山戯るな!!


 俺の魔法が、想いでどうにかなるならっ、俺の願い通りに行使できるよなぁ……徹底的に潰す!!


 俺は怒りの矛先を────


「私も残念だ! 君はもっと賢い人種だと思っていたのだがね、小々波 流くん!!」


────この村全域に定めた。


「楽に生きられると思うなよ」


 ニートの蹂躙が始まる。


【6話 狂気のニート】

 

 村長が剣を腰に添え、一瞬にして目の前現れ一閃、「シールド」俺はそれを思い付く守りの魔法で弾きつつ、「アースニードル」村長の股間目掛けて土槍を飛ばす。村長は冷静にそれを捌き、上段、中段、下段と剣の軌道を変えてくるが俺はミルンを抱き抱えたまま「シールドウォール」その全てを弾き返していく。


「流くん、君は魔法使いなのかね!?」


 幾百の剣閃を防がれ息があがり離れて整えようとしているけど、逃がすかよ。


「さてね、俺はただのニートだよ」


 休ませないようにひたすら攻め立てる。


「ファイヤランス」

 村長は剣の面で防ぐが、衝撃で根本から折れる。


「アースバインド」

 村長の足が大地から伸びた杭に貫かれ、縫い留められる。


「アースショット」

 村長は急所を腕で防ぐが、その片腕が弾け飛び、膝を折り地面に伏した。


「「「ヘラクレス様ッ村長を助けろー!!」」」

「待てぇええええ!?」


 手に鍬や木の棒を持って必死な顔で向かって来てもな、慕われてるな村長。でもなお前等、ミルンが苦しんでる姿見て笑ってたよな? 笑ってたんだよな。


 容赦しないーする気も無い!!

 

 肉屋のおっちゃんはー花屋のお母さんはー農家の夫婦はー手紙配達の若者はー仲の良い夫婦はー嫌味を言う爺はー愛想が良い青年はー狩が生き甲斐のおじさんはー冒険者の男女はー泣きながら襲って来る女性はー逃げようとしているおっさんはー綺麗な顔を歪ませている女性はー太った叔母さんはー痩せている爺いはー他はー他はー泣き叫ぶ女ー悲鳴を上げる男ー他はー。


「もう辞めよ!?」


 何をだ村長ーあっ!

「爺、逃げようとしてるじゃん逃がすかよ」

 ほいファイアアローっと…使えるねこれ。

 火矢って言ってもでるかなっともう一発!!


 爺いが脚を押さえ悲鳴をあげているな煩い!!

 押さえている腕を狙って火矢を撃ち、刺さると更に煩い悲鳴をあげながら転がって行ったな…逃げた?


「もうっ辞めてくれぇっ」


 だから何を? えーっと次はー冒険者発見!!

「まだ居たのか冒険者さんっと!!」

 無詠唱いけるかな? いけた! けど威力弱いな。

 んじゃ、ロックバレット!!


 逃げようとしていた冒険者の背中に幾つもの石の弾を撃ち込み、撃ち込み、撃ち込むが一向に血が出ないぞなんでだ? あー鎧かぁ。


「お願いじまずっやめでぐだざいぃ…」


 村長が這い蹲り、泣きながら懇願してきた。

 俺は辺りを見渡す。

 まだ子供達が残っているじゃないか。


 俺はゆっくりとそこへ歩き出す。

 子供達は怯えて声も出せず、ただ懇願するような目を向けてくる。俺は目線を合わせて聞いてみた。


「ガキ共、何でお前達はこの子、ミルンって言うんだけど、ミルンが血を出して倒れていたのに笑っていたんだ?」


 子供達は震えて首を左右に振ってとー答えないの? 俺聞いてるんだけど? じゃあ君!! 君だ、君に聞こう、ちゃんと答えれるよね? 


 俺は一人に指を向け、その子は震えあがる。

 口をパクパクさせて何を言っているか分からない。


「お父さん、お母さんに言われているだろ? 質問には大きな声で答えましょうって。ほら、声にだせ」


「お…いて…」


 聴き取れないなぁ、まあ大体理解出来るけど。

「お父さん、お母さんが笑って居たから。この子が、いや、もしかしたら前にも同じ事あったのかな? 要は親の真似をしたんだろ? 大丈夫だ、君達は悪く無い。悪いのはお前等の家族だー」

 

 俺は子供達に笑顔でそう言った。

 子供達は俺の笑顔を見てほっとした様だ。

 助かる、僕達、私達は悪く無いと、そんな顔だ。


「だからってお前達を許す事にはならんからな」


 豹変した俺の表情に子供達の顔が一気に恐怖へと変わり、俺は魔法を撃とうと手を向け────


「ぉと…さん…むにゃ」


────ミルンの声を聞いた瞬間、怒りが引いていく。


 ミルンと子供達を交互に見て、溜息を吐いた。


「命拾いしたなガキ共、ミルンに感謝しろ」


 俺はミルンを撫でながら村長の所へゆっくりと近づいて行く。


「こんな事をして満足か…流くん」


 這い蹲り力無き声で聞いてくる。

 満足か? 大満足だぞ。

 だってほら、見てみろよ。


「良かったな、誰も死んでいないぞ?」


 村長の傷口を魔法で焼きながら坦々と答える。

 村長はゆっくりと身体を起こし、その光景をみた。見てしまった。


 誰一人死んではいない。ただ、誰一人として無事な者もいない。地獄が現出したかの様な光景。


「流くん…流くんにとってその獣族は…なんなのだ?」


 虚な目で聞いて来た。


「そうだな…父さんと言われたからなぁ…うん、父親になっても良いと思える存在だな!」


 村長は遠くを見つめて。


「そうか…」


 ただそれだけを言い残し、意識を失った。




 オブラートに編集致しました!! 包みました!!

 えっ? 包みきれていない? 

 そんな事は無い筈!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ