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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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5話 異世界の現実.4


11/9加筆修正しました。



 脚が震えている。


「ミルン?」


 喉が渇き、鼓動が早くなる。


「おい、ミルン?」


 ただ前にゆっくりと進む。


「なぁ……ミルン」


 周りの喧騒も耳に入らず。


「っ────ミルンっ」


 俺は駆け出し、血溜まりの中に膝を付いた。

 

 

 

「ミルン……おい、ミルンっ」


 ゆっくりと、息はしている。


「傷が……っ、こんなに血がっ、止血をっ!」


 可愛い右耳が、千切れかけており、左手の指が無く、両足が折られている。

 至る所に痣があり、口からも血が出ている。

 

「ミルン……なんでっ、こんな……」


 薄っすらと、ミルンの目が開いた。


「な…がれぇ…?」

「あぁっ、流だぞ! ミルンっ、どうしてっ、なんで!」


 ミルンの耳と、指からの出血が止まらまない。押さえて止めようとするが、全く止まる気配が無い。


「いっ…しょ…ひと…いゃ…」


 ミルンの目から、涙が出ていた。


「ぉい…て…いか…な…い」


 ミルンの手が、弱々しく俺を掴む。


「ぃっ…しょ…」

 

 俺は、異世界にうかれていた。

 俺は、異世界を楽しんでいた。

 危ない目にあったりもしたが、それでもやっぱり、楽しんでいた。


 あの時ミルンは、俺の後を追って来ていた。

 この魔物いる世界で、あんな得体の知れない川の近くで、ミルンは孤独に、暮らしていた。

 寂しいにっ、決まってるじゃないか。

 

「痛かったな、怖い思いしたな、ごめんなっもう大丈夫だぞっ、一緒にいるからなっ」


 ミルンは、ただ一人ぼっちで、あの時俺は、ミルンを置いて行ってしまった。


 俺は、人でなしの、馬鹿野郎だ。


 ミルンを包み込むように、抱っこをして、優しく背中をさする。


「ぉと…さん」


 ミルンの顔から、色が無くなっていく。

 俺は、その色を知っている。


「だめだミルン! おいっ、ミルン!!」


 どうすれば良いっ、これは俺の所為だ。

 俺がミルンを置き去りにっ、あの時一人にしたからこうなった!

 どうすればっ、どうすればミルンは助かる。

 病院っ、異世界あるのか?

 周りの奴らが邪魔だ。

 俺の所為だ、どうやってどうすれば良い、俺が一人にどうやってっ、何をすれば、誰か助けを、誰が、どうすればっ、ミルンを助けられるんだっ!!




 傷痕だらけの両親の亡骸。

 触ると、冷たかった。

 もっと、話をしていれば良かった。


 こんな異世界に来てまで、何も出来ず、屑のままで良いのか。

 こんな小さい子を、置き去りにして、このまま死なせて、笑顔で生きていけるか。

 父さんと母さんに、誇れる人間なのか。

 

 ────────「あっ……」


 後悔と、苦悩と、怒りが混ざり合った感情の中で、ミルンとの、短い、しかし楽しい記憶。



『あ──っ、何これ?』


『ミルンのおいええええええ──っ!?』



 ここは異世界だ。

 魔法がある、魔法があるんだ。

 俺には魔法がある。

 俺は魔法が使える。


 謝るからさ、頼むよ。

 一緒にいるからさ、お願いします。

 こんな小さい子から逃げてさぁ、置いてけぼりのまま、最後はコレって、無いだろ。

 このままじゃ、許せないよなぁ。

 このままじゃ、許せない。

 許せないんだ。

 俺がっ、俺をっ、許す事が出来ない!!


 基本魔法で、あんな意味不明の魔法が、発動されさんだ。

 癒しの魔法とかっ、有るんだろ!!

 だからっ、願う! 魔法と言う奇跡を!!



「この子をっ、救えええええええええええええええええええ────!!」



 天の彼方、星の向こう。

 俺に、意味分からんスキルを付けやがった、何者かに、心から、そう願った。


 頭の中で────鐘が鳴り響いた。


リンゴーン、リンゴーン(上がり調)


『レベルがー--ー-奇-ー跡--ー -(--ー-ー 可)

エラー、エラー、エラー、エ-ー-ー可』


『良いですよぉ、貴方は見てて楽しいのでぇ』


リンゴーン、リンゴーン(下がり調)


 女神の優しい声が、聞こえた気がした。


◇ ◇ ◇


 ヘラクレス ヴァントは困惑していた。


 穢れた獣族を追い詰め、捉え、村人達の前で処刑する。

 幾度も繰り返した。

 人種たる者、魔物に近しい存在を殲滅する。

 その為に肉体を、鍛え、磨き上げてきた。

 亡き妻への誓いとして。

 

 目の前の男は、穢わらしい獣族をその身に抱き抱え、泣いている。

 意味が分からない。

 理解出来ない。


 目の前の男が叫んだ。

 神に祈り? 馬鹿馬鹿しい。

 崇高なる神は、人種だけの神。

 穢れた獣の為に、祈りなど捧げるとは、神への冒涜そのもの。

 

 ふと、空を見た。

 暖かな光、穏やかな光。

 それが、その光が、穢れた獣へとゆっくり吸い込まれていく。

 

 目を疑った。

 万が一にも助からぬ様に、内臓を潰した。

 指を斬り、血を出させ、逃げられぬ様に脚の骨を砕いた。

 それなのに、獣の傷が、治っていく。

 千切れかけた耳はつながり、指が生え、折れた脚が、一瞬で真っ直ぐに。

 顔色が、良くなっていく。


『っぶざけるな!!』


 神からっ、奇跡を賜ったとでも言うのか!? 

 あの時っ、妻を救っては下さらなかったのにっ、あの獣は助けるのですか!?


 私は直様、剣を抜いた。

 今度は確実に、獣の首を刎ねる。

 穢れた、醜い獣風情が、奇跡を賜るなど、有ってはならなぬ。


 ゆっくりと、壇上から降り、穢れた獣のもとへ、足を進めた。


 獣を抱くその男が、ゆっくりと立ち上がる。 

 剣を向け、眼を合わせた。


 その眼を見た瞬間────『死』。


 全身から汗が噴き出し、膝が震え、身体が凍ったかの様に、動かなくなった。



 それは、本能から来る恐怖。

 それは、強者からの殺意。

 今動けば、待っているのは、確実な、死。



 そこには、魔物すらをも凌駕する威圧を放つ、狂気の様相をした、一種の"化物"が、存在していた。


 



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