5話 異世界の現実.3
さて皆様、本日はこちらの物件を紹介させて頂きます私、小々波 流と申します。どうぞ最後までお付き合い下さい。
早速ですが見て下さいこの獣道。
人を通さないと言わんばかりのこの道ならば、セキュリティは万全! 泥棒だって先へ進む事を考えるでしょう。
さぁ見えてきました立派な御屋敷。
部屋数は何と十部屋と多く、お子様が多い御家族様でも一人一部屋と個人の空間を作り、引き篭もりを量産できる事間違い無し!
廃れた大浴場には立派な像があり、ゆっくりと長風呂をするのを躊躇う快適性も御座います!
お手洗いは浄化槽を設置しており、なんと水洗! ですが間違っても浄化槽に触ってはいけません。触ったら浄化槽に溜まっている汚水が全て排出する仕組みとなっているのでご注意ください。
極め付けはこの外観!
辺りには鬱蒼と雑草が生茂り、屋根は崩れかけ、至る所の外壁が剥がれ、窓は吹きさらし、入口の戸は開かれたままという完璧設計!! これならいつでも幽霊屋敷として繁盛する事間違い無しでしょう!
お値段ですか?
はい! 何とぉおおおお! 今ならプライスレス!
お気持ち一つで本日からでも入居する事が可能となっております!!
入居を希望される方は今直ぐ、ラクレル村、村長、ヘラクレス ヴァントまでご連絡を!!
※
まあそんなこんなで夕暮れ時の屋敷前。
雨風凌げれば気にする事も無いとは言えど、寝てる間に崩れないだろうかと思ってしまう。
「お邪魔しまーすよっ」
入って直ぐ床が抜けており、薄暗く埃臭いが元ニート? にとっては籠もれる場所さえあればそこがオアシスであり桃源郷であり天国と言える。
そんな無駄な事を考えながら一部屋一部屋確認確認。別にRPGの伝説の勇者宜しく金目の物が無いか探している訳では断じて無い! 何処の部屋が一番快適に過ごせるのかを確認しているだけだよ?
本当だよ?
そしてここが最後のぉおおお!
「角部屋だぁあああ!!」
妙なテンションになりながら扉を開けると────
プギィイイイップギャアアア! オヴァヴァ!
────豚野郎(漢)が仁王立ちをしていた。
時間が止まる。
見つめ合う一人と一匹。
「泥棒よぉおおお! お巡りさぁあああん!?」
俺は息が尽き、そのまま意識を手放した。
※
何処までも広がる花畑で、俺たちは共に語り合う。
プギィ。
「ははは、うんうん、そうだよな」
プギィプギャ。
「うん、俺もそう思うよ」
プギィギ?
「ははは、違うって」
見つめ合う一人と一匹。
プギャァ?
「恥ずかしいのか?」
お互いの手を取り合い、段々と距離を縮める。
そして────
「流さんの睾丸も美味しいモゴモゴ」
────血塗れミルンが俺の部位を食していた。
※
「いやぁあああああああああああああああ!?」
全身から汗が吹き出し飛び起きる。
もう全てがトラウマと言える程の悪夢により俺は混乱し、その場で反復横跳びを繰り返しつつオクラホ◯ミキサーを口ずさみ、それを十数分…目の前の開けた部屋を見つめる。
うん、唯の剥製だった。
外から開けた窓に、朝日が差し込んでいた。