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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

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5話 異世界の現実.3


 2026/06/05 加筆修正致しました。



 村長に渡された木の板を持って、渋々言われた場所に向かうと、腰の曲がった農家のおじさんが、待っていた。


「おおう、村長から聞いとるべ。兄ちゃんがぁ手伝ってくれるっていう、流さんかぃ」


「そうだけど……何すれば良いんだ?」


「こん芋を、あっちまでぇ、運んでけれぇ」


 この芋を、あっちまで運ぶ?

 大量の木箱の中には、これでもかと言う程芋が詰められており、台車も何も見当たらない。


「えっと……台車は?」


「何だぁそりゃあ? 手で持って運べんべぇ」


「あぁ、うん、やってみるわ」


 持ってみた感じは、木箱一つで十キロ前後。

 その木箱が、山の様に積まれている。

 これを、あの小屋まで運べと……。


「早うやってけれぇ。芋さぁ、まだまだ掘るでぇ。早よせんとぉ、終わらんでぇ」


 これは、やるしかないのか。

 仕方ない、さっさと終わらせるか。


「どっせいっ! ふひっ、ふひひっ、何この力仕事っ! 糞重いんですけどっ!!」


 一往復二往復と続けて行く内に、腕と脚がぷるぷると震え、反復横跳びの疲れも相まって、五往復も行かずにバテてしまった。


「何だぁ、情け無い兄ちゃんだのぉ。もう良いから、邪魔にならん所で休んでなぁ」


 農家のおじさんはそう言うと、"片腕"で木箱を三つ担ぎ、軽い足取りで運んで行く。


「えぇ……何あのおじさん。馬鹿力じゃん」


 人間フォークリフトだろうか。

 そう思わせる程に、農家のおじさんは止まる事無く、あっと言う間に全ての木箱を、運び終えてしまった。


「兄ちゃんは、こん仕事向いてねえなぁ。明日からは来んでええから、違う仕事探せやぁ」


 簡単に言うと、クビって事ね。


「当日にクビとか……初めての経験だなぁ」


 朝から働き初めて、まだ昼前だぜ?


「……帰って掃除でもするか」


 寝床を軽く掃除した後は、農家のおじさんから貰った芋を、今日の夕食にします。

 汚い厨房に、火打石があったから、屋敷の裏庭らしき所で、味気ない焼き芋パーティーだ。


「んっ? なーんかまた、"視線"を感じるなぁ」


 そして次の日の朝。

 勝手知ったる村長宅にお邪魔をして、村長の目の前に座り、お茶とパンをそっと頂いての、優雅な朝食のお時間です。


「自然に不法侵入を、しないでくれないかね。昨日紹介した仕事は、どうしたのだ?」


「畑作業の邪魔になるからって、その日の内にクビになったぞ。呆れられたわ」


「ぬぅっ……まあ、仕事は沢山あるのでな。落ち込まずに、色々と試してみれば良いのだ」


 そう言われたので、今度は村の出入口へと向かい、屋敷の場所を教えてくれた、自警団の人の前まで来て、木の板を見せる。


「ああ、兄さんが村長の言ってた人か」


「一昨日は助かったよ。んで、仕事をやりに来たんだけど、俺は何をすれば良いんだ?」


「村長から聞いてないのか? 俺らの仕事は、この村の外側を見回る事だぞ。最近だと、"ゴブリン共"が来やがるからな」


「ゴブリンっ!?」


 異世界あるあるのスライムに次ぐ、最弱系モンスターである、あのゴブリンの事なのか。


「アイツら増えると、結構厄介だから、村の外側で発見したら、即討伐しなきゃ駄目なんだ」


「討伐……って、アレだよな。首をザクっと……」


「そうだな。ゴブリンは首が細いし、そこを斬るなり潰しさえすれば、一発で仕留めれるぞ」


 これは中々に、キツい仕事ではなかろうか。

 都会で産まれ育った身としては、血生臭い事と無縁であった訳で、討伐とかは勘弁だ。

 前の豚野郎は、不可抗力。

 殺されそうになった事と、思いがけない魔法の発動で、意味の分からない内にやっただけ。


「えっと、俺、武器とか触った事ないんだけど」


「そうなのか? 槍とか弓ぐらいは、持った事あるだろ? もしかして、良いとこの出か?」


「んな訳ないって。ただ武器に触れる機会が、なかっただけだしな。使い方を教えてくれるなら、やってみるけどさ」


「教える人手が足りないぞ。村長の頼みだから、聞きたいところではあるがなぁ……」


 自警団の人は、腕を組みながら考えているが、この感じだと、この仕事も駄目そうだ。


「……兄さん。済まないが、この巡回の仕事は、あんたには荷が重そうだ。悪いけど、他の仕事を当たってみてくれ」


 ほら、働く前に、クビになっちゃったよ。


 その次の日の朝。

 勝手知ったる村長宅にお邪魔をして、村長の目の前に座り、お茶とパンをそっと頂いての、優雅な朝食のお時間です。


「既視感を感じる光景であるな……村の外の見回りの仕事は、どうしたかね?」


「俺には荷が重いんだってさ。働く前にクビ宣言とか、人生初の経験をしたぞ」


「むぅっ……そうであるか。まっまあ、まだまたま仕事は有るのだし、頑張りたまえっ」


 村長の口元が、ピク付いているのを、俺は見逃していないぞ。この村長、まさか俺がここまでポンコツだとは、思ってなかった様だな。

 

 そうして次の日、次の日と、クビになり続けた俺が、唯一出来た仕事と言うのが、コレだ。


「流にーちゃーんっ! ワルツが蹴ったーっ!」


「リムが先にやったんだろっ!」


「うわああああああんっ! 僕のおやつ返してよおおおおおおっ! おじちゃあああんっ!」


「私の事を馬鹿にするからよっ!」


 ラクレル村の子供達が、誤って村の外に出ない様に、村の広場で優しく見守る、警備員的なお仕事です。

 

 村長から、『流君はアレだ……普通の仕事は、向いておらぬっ』と、苦言を吐かれ、仕方なく仕事という体にされた、子守ですね。


「あーっ、また流にーちゃんが、ボーッとしてるぞーっ! 皆んなーっ! 行けえええっ!」


「「「わああああああっ!」」」


 これが、下手な仕事より、疲れるんです。

 子供達を相手にしていて、分かった事がある。それは、俺のステータスが、この子供達よりも貧弱である事だ。

 腕相撲したら、普通に負けたのよ。

 最年少である五歳のリム君に、負けたのよ。

 五歳児に負ける腕力ってっ……何?

 

 そんな事をしつつも、村での暮らしも悪くないと、そう思った。だってこの村の人達、見ず知らずの俺に、親切過ぎるんだ。


「居心地良いもんなぁ……」


 そんな事を思っていた次の日、いつものように村長宅へと向かうと、鍵がかかっていた。それに、村の出入口に立っていた、武装した見張り番の人も、居なくなっていた。


「なんか村人、減ってないか?」


 特に若い男衆が、居ない気がする。疑問に思いながら、村の中をぶらぶら歩いていると、呼び止められた。

 

「おーい、にいちゃん。これ食べて、さっさと仕事見付けなよ」


「肉は貰うが一言多いんだよっ!」


 肉屋のおっちゃんから、すんごい大きいブロック肉を、投げ付けられた。


「流にいちゃーん、今日のお仕事は?」


「今日も働いてねーの?」


「やーい! だめおとなーっ!」


 俺は大人だから、子供達に舐められようとも、決して怒るような事はしない。


「拳骨すんぞゴラアっ!!」


「「「わああああああっ!」」」


 蜘蛛の子を散らす様に、逃げやがったな。

 次会ったら頭ぐりぐりしてやる。


「あらぁ、お仕事見付かったの?」


「お構いなくっ!!」


 花屋のお母さんから、嫌味を言われました。

 足早に嫌味から逃げ、村の端っこに座り込み、ボーッとして時間を潰す。


「ここ数日で、そこそこ顔が知られたなぁ。舐められ感が半端ないけど……」


 そうして、心地良い風に身を任せていると、カンカンカーンと、櫓のある方から、鐘の音が響いてきた。

 

「初めて聞いたな……何かあったのか?」


 疑問に思っていると、「おい、にいちゃん。あの鐘が鳴ったら、討伐完了しましたって合図だから、広場に行くべ」と、前を通りかかった肉屋のおっちゃんに、手を引かれた。


「討伐完了って、魔物でも出たのかよ」


「見に行きゃ分かるよ。ほれっ、村の皆も、真っ直ぐ向かってるだろ」


 辺りを確認すると、老若男女問わず、ラクレル村の人達全員が、広場へと向かっている。


「何だ……これ?」


 広場に到着すると、人で埋め尽くされており、先の一段高い位置に、村長か見える。


「皮鎧を着てるとか、ガチ討伐かよ」


 村人達が集まると、村長は声を張り上げる。


「村人達よっ! 今日この時っ、ラクレル村に迫る脅威をっ、取り除く事が出来た!」


「いいぞーっ!」


「流石はヘラクレス様だ!」


「さっさと殺せーっ!」


 周りの村人達の熱がヤバい。いつもは穏やかな人達なのに、目を血走らせ、声を上げるとか、そんなにヤバい魔物だったのか。


「この魔物……数年前よりこの地に現れっ、我々の暮らしを、悉く脅かしてきた」


「どんな魔物だなのかねぇ」


 少しばかり、魔物に興味が湧き、人混みを掻き分け、前へ前へと進んで行く。


「見よっ! この醜い姿をっ! この悍ましき魔物の姿をっ! 目に焼き付けよ!!」


 村長の演説で、更に村人は高揚する。

 皆が一様に、狂気の笑みを浮かべ、これはまるで、洗脳された村のような感じだ。


「もうすこしでっ、最前列っと」


 人混みから飛び出す様に前へと出て、人の圧から解放され、軽く深呼吸をする


「私はっ! この様な獣共をこの世界から、一匹残らず根絶する事をっ! 皆に誓おうっ!』


「穢らわしい獣は殺せーっ!」


「皮を剥いで晒し首にしろーっ!」


「殺せーっ!」


「「「"獣"を許すなあああああああああっ!」」」


 頭が痛くなるほどの、村人達の怒声。

 俺は耳を塞いで、これほどまでに嫌われる魔物は、どんなモノだろうかと、視線を前へと向け──「はっ?」と声が漏れた。

 どうして、なぜ、どういう事だと、思考が止まる事なく回り続けるが、理解出来ない。

 千切れかけの、垂れ下がった耳。

 赤く滲んだ、汚れた尻尾。

 ピクリとも動かない──小さな体。

 

「……ミルン?」

 

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