3話 犬耳ミルンと角付き幼女.5
2026/08/03 加筆修正
流特製、魚料理のフルコースが完成したので、テーブルの上にこれでもかと並べて、美味しく頂く準備は万端。
「ほい二人共っ、お待ちどうさん」
「お魚さん! 待ってました!」
「沢山有るのぢゃあっ」
デッドフィッシュの揚げ物に、バリアントフィッシュの串焼き。その二種を使った鍋と、ゴールドフィッシュの炙りサラダ。
「それじゃあどうぞ、召し上がれいっ!」
「頂きますっ!」
「頂くのぢゃっ!」
ミルンが先ず手に取ったのは、まさかのバリアントフィッシュの串焼き。それを頭からバリバリと食べるとか、流石だミルン。
「塩とお魚の脂が合わさって、お口の中をサッパリさせてくれる、美味しい一品なのっ」
「えっ? 急にどうしたミルン?」
「顔さえ気にしなければ、旨しっ」
甘えた声から、渋い声になってるぞ? なんだかお顔も、濃い顔付きになってるし。
「次は揚げ物を……サクサクの衣と、デッドフィッシュのふんわりした身が、良い感じに口の中を楽しませるの」
「お口に付いておりますよ」
「んーんっ、有り難う!」
「そこは甘えた声なのね……」
揚げ物に関して、欲を言えば天つゆが欲しかったが、手に入らない物だからな。作り方も知らんし、どう作るんだろうか。
「この汁物も、美味いのぢゃあ。魚の旨味が広がって、良い塩梅ぢゃのぅ」
「幼女とは思えない程、汁物似合ってるなぁ」
「何か言ったかや? ズゾゾゾゾゾゾっ」
「音を立て過ぎだろ。少しはミルンを見習えって……いや、何でもない」
「うまうまなのおおおっ! ムゴムゴムゴムゴムゴムゴッ! スゴゴゴゴッ!」
ここは何かの、工事現場だろうか? ドゥシャさんの口がヒクヒクしてるから、叱ろうかどうしようかと、迷ってるっぽいな。
「そんじゃドゥシャさん。俺らも少し、頂くとしようぜ。夕食まだだろ?」
「はい。ミルン御嬢様、少しばかり頂いても、宜しいでしょうか?」
「沢山あるから、一緒に食べるの」
「有り難う御座います」
ミルンに許可貰うとか、律儀だねぇ。
「俺も貰って良いか?」
「お父さんには、これをあげるのっ」
そう言ってミルンから差し出されたのは、俺が丸焼きにした、人面魚さん。顔がこっちを、見て来るよーい。
「うん……有り難うな。イタダキマス」
それはもう、美味しかった。でも、この魚は二度と食わんと心に誓うぞ。本当にこの人面魚、目が怖いんだよ。
「うっ、動けない……お腹いっぱい」
「腹がっ、はち切れるのぢゃぁ」
「二十五尾全部食べりゃあ、そうなるだろうに」
丸々ミルンは可愛いけども、こうなると、この後の事が予想出来てしまう。
「運んでっ、下さいなっ」
「我もっ、動けぬのぢゃあっ」
ほらね、こうなる訳ですよ。しかも今回は重量級が二人とか、俺の腰を潰す気満々って感じだよね。
「なあドゥシャさん、ミルンを屋敷まで……あれっ? ドゥシャさーん?」
「ドゥシャなら、向こうに行ったのっ」
「ドゥシャさん……逃げやがったな」
ミルンを溺愛してる癖に、こういう時だけ逃げるのって、狡くないですか。
「今日はお父さんと、テントで寝るの。だから運んで下さいな。動けないのぉぉぉっ」
「……だからか」
「それにお腹がいっぱいで……眠いのぉ」
「我も一緒に寝るのぢゃぁ。誰かと眠るなぞ……今は何年なのぢゃ?」
「いや、俺に聞かれても分からんて」
よくよく考えてみたら、俺ってこの世界の事を、何も知らないんだよな。明日にでもドゥシャさんに、聞いてみるか。
「っと、このままだと、ミルンが寝ちゃうな」
腰を壊さない様に、ぐりんぐりんとしっかり回して、屈伸運動も良しっ。
「どいこらせっっっ、くおっ、二倍の重さとかっ、破壊力抜群じゃんっとおおおっ」
丸っと幼女が、二人ですからね。重たいかって? そんなん口に出せばミルンが怒って、俺の命が終わるだろうさ。
「ふうっ、ふうっ、後少しっ、どおりゃああああああああああああっ!!」
「わぷっ!?」
「のぢゃあっ!?」
テントの中の、敷布団に放り投げ。顔面から突っ込んだミルンは、そのまますやすやと寝たんだけど、角付き幼女は何してんの。
「なんぢゃ? 逆様なのぢゃあふわふ……ぐぅぅぅっ、ごがぁぁぁっ、ぐぅぅぅぅぅっ」
角からベッドに突っ込んで、地面にソレが突き刺さり、逆様の状態で──寝た。
「器用な奴だなぁ……放置で良いか。んじゃ俺は、片付けでもしようかね」
そっとテントから出て、皿、皿、皿、鍋、鍋、鍋と、洗い物の山ですわ。
「料理とは、片付けまでの事を言うってな」
食器や調理器具を洗いながら、ゆっくりと沈む陽の光をを眺めて、「ふぅ」と一息吐いた。
「明日から、また仕事かぁ……嫌だぁぁぁっ」




