剣使い
僕は目を覚ます。目の前には、大柄な女性がこちらを見ていた。僕が目覚めたことに気づくと、その女性は話しかけてきた。
「終わりましたよ」
お、終わった。何が?よく分からないことを言っている。僕は寝っ転がっていた。体を起こすと、隣に寝っ転がっていたリアもぼんやりとしている。今の状況が分かっていなさそうだ。
「あなたがたの、成人の儀ですよ」
思い出す。そうだった。
いつ意識が無くなったか分からないが、何か懐かしいものを見た気がする。
そんなことより、女性に尋ねた。
「で、僕のジョブは何だったんですか」
「そうですね。あなたは、ジョブ『剣使い』です。」
「そして、隣のお連れの方は、短剣使いです。」
ジョブがあって安堵するとともに、少し悲しかった。
もっと上位のジョブかもと、内心では期待していたからだ。
でも良かった。憧れていた冒険者になれそうだ。
ふと隣を見ると、リアがもの凄く嬉しそうに自分の手を動かしている。
「わ、私の指がちゃんと動く」
リアの発言に僕は疑問に思い、首を傾げ聞いた。
「リアの手って、動かすの不自由してたっけ?」
リアは一瞬目を見開き、焦ったように言葉を濁した。
「こ...この、帝都までの間に怪我しちゃったのよ...」
僕はいつ怪我をしていたんだろうと考える。
その間に、リアは深くお辞儀をして、女性にお礼を言っていた。
「ほ、本当にありがとうございました。えっと、何とお呼びすれば...?」
リアが言葉に詰まりながら女性に質問をしていた。
女性はリアの質問に答える。
「失礼しました。まだ名乗っていませんでしたね。」
「私の名前はヨハネと申します。」
リアは満面な笑みで話す。
「あ、ヨハネさんですね。本当に、ありがとうございました」
「いえいえ、私は蘇生魔法が行使できます。」
リアはヨハネさんにお礼をいい、僕は持っていた大根をお礼として渡した。ヨハネさんは少し困惑しながらも受け取ってくれた。そこで、大根を片手にしたヨハネさんは話す。
「そうでした。帰りの馬車の代金は持っていますか?」
「いえ、それに使ってしまいました」
大根に指差した。
「そうですか。もし、よろしければ帰りの馬車をこちらで手配いたしますよ」
「いえ、僕達は帝都で冒険者になりに来ましたから!」
「では、帰りたくなったら、ここへ訪ねてきてください。分かりましたね?」
「はい!ありがとうございます!」
僕達はそのまま教会を出た。
よし!これで冒険者の仲間入りだ。
そう思った矢先、気づく。冒険者って、どうやってなるんだ?
リアに尋ねる。
「ねえ、リア冒険者ってどうやってなるの」
「ん?ジョブをもらったらなれるんじゃないの?」
多分、僕らは冒険者になる方法を知らない。困ったな、とりあえず、成人の儀を教えてもらった出店のところへ戻った。
「お!いらっしゃい、お客様。どうだいこのキャベツ立派だろ!今なら銅貨30枚...」
先程とは違い陽気な店主の話を遮り、僕は話した。
「ご、ごめんなさいお金は持っていません」
店主の態度が豹変し悪態をつきながら答える。
「チッ、金持ってない冷やかしか?なら、さっさとあっちへいけ。他の客の邪魔になる」
頭を下げる。
「そ、その僕達冒険者になりたくてその、どこでなれるか知りたくて...お願いします。」
リアも頭を下げ続ける。
「私達も聞いたらここをどきますので...どうか」
店主は僕達に目を合わせず店の棚を触って話す。
「冒険者になるには、ここから見える冒険者ギルドに登録しないとなれねえよ」
そう言われて、店主が指差した方向を振り返る。
「あれが...冒険者ギルドか!」
期待して見ると、建物は意外と普通だった。
でも正面に冒険者ギルド共通の紋章だけが掲げられている。
ショアとリアは店主にお礼を言い、足早に向かった。
建物の正面には、円形のコンパスの中央を一本の剣が貫いている。剣の切っ先は北を指している。
僕はその紋章を見上げながら、冒険者ギルドの中へ入った。
中は思っていたよりも狭かった。
受付らしきカウンターが一つ。その奥には椅子と机がいくつか並んでいる。冒険者らしき人が2人、3人ほどいる。
その中の一人は黙々と酒を飲み、もう一人は机に突っ伏している。
「あれ..?」
もっと賑やかな場所だと思っていた。困惑して立ち止まっている僕達に、泥酔した男が絡んできた。
「お、女2人か。珍しいなぁ。誰か呼んだのか?俺にもいいことしてくれよ。ヒヒ...」
男は下衆な笑いを浮かべて酒をあおる。怒って言い返した。
「僕は男だ!」
「お前が男ってことは、隣のやつも男か。ヒヒ...」
リアがすぐさま目の前の男に蹴りを入れる。
「うぐ...。バリン!」
男はうめき声を上げながら、持っていた瓶を落とした。リアがキレながら答える。
「誰が男よ!」
突然のリアの行動に驚く。
申し訳ないと思いながらも、ついリアの胸を見てしまった。視線を感じたリアは、鬼の形相で僕を睨む。急いで視線を逸らした。
そんな僕らに、一人の冒険者が声をかけてきた。
「...あいつのことは気にしなくていい。昼間から飲んでるだけの奴だから」
声をかけてきた冒険者は少し申し訳なさそうな表情を見せた
「お前ら、この辺じゃ見ない顔だな。なんか用か?」
「僕達、冒険者になりたくて来ました!」
冒険者は少し怪訝な顔で答える
「そ、そうか。なら、あそこのカウンターで登録するとなれるよ」
「ありがとうございます!」
カウンターに向かう。だが、受付の人がいない。
見かねた冒険者が声を張り上げる。
「おーい!冒険者になりたいそうだ」
すると、奥の扉から気だるそうな女性が出てくる。
「ガタン、なにか用?」
冒険者が親指をショアに向けて答える。
「コイツらが、冒険者になりたいそうだ」
「あっそう。はいコレ」
女性から紙を手渡される。僕とリアは記入して渡す。
女性は受け取った紙に少し目を通して話す。
「はい、確認しました。コレであなた達も冒険者です。ガタン」
そう言い残すと、女性は扉の奥へ帰っていった。
やった!これで僕達も冒険者だ。親切な冒険者に聞く
「冒険者って、どんな仕事をするんですか?」
冒険者は少し驚きながら答えた。
「魔物退治とか、護衛とか...まあ、色々だな」
改めて見ると、僕達より年上の男性だった。短い茶髪に、使い込まれた革鎧。背中には一本の斧を背負っている。
「すごい!僕もやりたいです。えっと...何とお呼びすれば?」
「俺の名前か?ジルって言う」
「色々親切にしていただいて、ありがとうございます」
「ああ、いいよいいよお礼は」
深々と頭を下げる僕を見てジルは少し照れくさそうにしていた。




