再会
僕は朝からワクワクしている。村に帰ればカイに会えるから。なんだったら、夜あまり眠れなかった。
「よし。帰ろう!」
「えぇ...」
僕の元気とは裏腹に、リアはテンションがかなり低い。わかった! もしかしてリアも楽しみすぎて寝不足だな。
「カイ、驚くだろうな」
そう言いながら、帝都内の馬車の停留所へ向かう。
御者の人に村までと伝える。
「すいません。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「僕がショアと、こちらがリアです」
御者は一瞬動揺した
「そうですか。何か身分を証明できるものはございますか?」
身分証を確認した御者の表情が曇る。
僕は不思議に思う。村から帝都へ行く時はそんなこと確認されなかったのに、心配になってきた。
「あの...何かあったんですか?」
「いえいえ、何も問題ないですよ。お客様、ここで少々お待ち下さい」
そして御者が戻ってくる。
「お待たせしました」
「はい!」
「申し訳ありませんが、お二人を村までお送りすることはできません」
「えっ?な、なんでですか?」
「この先の村の近くで山賊が出没していまして、大変危険なんですよ」
「そ、そうなんですか!」
「そうなのね...」
どうしようかな、予定が延期になっちゃったな。
そこで、声が聞こえた
「あらあら、ショアくんにリア、お久しぶりね」
「お久しぶりです。アシュさん」
穏やかな笑みを浮かべるが、何故だろう。前に会った時より、彼女が魅力的には見えなかった。
そして、手には枝ではなく派手な杖を持っていた
「お二人とも、どうしてこんなところに?」
「村に帰ろうと思ってたんですけど、山賊が出てるみたいで...」
「まあ、それは大変ですわね」
「そうなんですよ。カイにも早く会いたかったんですけど」
アシュは素っ気なく話す。
「あら、そう」
リアは姿を見た瞬間、黙り込んでいる。
「...リア?」
「な...なんでもないわ」
そう答えるリアの顔は、明らかに青ざめ、小刻みに震え始める。
アシュはリアの様子を見て、少しだけ目を細めた。
「まあ...リアさん。どうされたのですか?」
「...なんでも、ない。なんでもないです」
リアは俯いたまま答える。
アシュは笑みを崩さない。
「そうですか?それなら、よろしいのですが」
僕は二人を交互に見る。
「リア、本当に大丈夫?」
「大丈夫よ」
そう言っているが、明らかに様子がおかしい。一体どうしたんだろう?
「ところで、ショアくん」
「はい?」
「村へ帰ると仰っていましたけれど...わたくしが送って差し上げましょうか?」
「えっ!本当ですか」
僕はさっきの話を思い出す
「あ、でも...山賊が出てて危険らしいんですよ」
アシュは口元に手を当て、微笑む。
「山賊だったら護衛の騎士を雇えば大丈夫ですわ」
僕は目を丸くする。
「え、本当ですか?でも悪いですよ」
「ご遠慮なさらないで。わたくしも、ちょうどそちらへ向かう予定がありますの」
「本当ですか!?いや、それでも...」
「ショア!」
突然、リアが声を上げた。
「どうしたの?」
「...その人の馬車には乗らない方がいい」
「え?」
僕はリアを見る。
リアは青ざめた顔でアシュを見つめていた。
「どうして?」
「...」
リアは答えられない。
ただ、震える手を強く握りしめている。
アシュはそんなリアを見ながら、静かに微笑んでいた。
すると、突然リアが僕の手を引いて、逃げ出した。
「ちょ、リア!?」
「いいから!」
「待ってよ!」
僕はリアに引っ張られながら、何度も後ろを振り返る。
アシュさんは追ってこなかった。
ただ、あの穏やかな笑みを浮かべたまま、僕たちを見ている。
「リア、どうしたんだよ!」
「...あの人はダメ」
「だから、どうして?」
「...言えない」
「言えないって...」
「ショア、お願い。あの人の馬車には乗らないで」
「でも...」
僕は足を止める。
「カイに会いに行かないと」
「...っ」
リアの顔が歪んだ。
「カイは...」
そこまで言って、リアは口を閉ざす。
「...何?」
「なんでもない」
「リア?」
「お願いだから...」
リアは僕の手を強く握った。
「ショアお願い...」
「...どうして?」
リアは答えられなかった。
その時だった。
「まあまあ、そんなに慌てなくてもよろしいのでは?」
後ろから、アシュの声が聞こえた。
振り返ると、ゆっくりこちらへ歩いてきていた。
「わたくしは、お二人を困らせるつもりはありませんわ」
「...」
リアは僕の前に立つ。
まるで、僕をアシュから隠すように。
「リア...?」
「ショアは、私が守る」
アシュの笑みが、ほんの少しだけ深くなった。
「まあ...」
「随分と仲がよろしいのですね」
そしてアシュは、杖を軽く握り直した。




