廃村
僕たちは、依頼の区画の掃除を始めることにした。
「まずは、この辺から片付けようか」
「そうね」
道端に落ちていた木片や壊れた家具を集めていく。
思っていたよりもゴミが多い。
「この村、結構広いね」
「そうね。これ、二人で終わるのかしら...」
二人で運べない物は壊しながら片付けていく。それでも、日が沈みかける頃になっても、記載された場所の半分も終わっていなかった。
内心僕はジルさんとバルドさんも連れてくればよかったなと思った。
翌日の掃除中僕は気分転換に話す。
「リア少しこの村を冒険してみない」
「えっ...まだ半分も終わってないのにもう飽きたの?ショア」
僕は目を泳がせながら答える。
「い...いやぁ〜、そんなことないよ」
「ハァ...わかった。少しだけよ」
リアは少し呆れながら付き合ってくれた。
比較的壊れていない家の中に入る。埃の被った割れた食器や蝋燭があり、昔ここに人が住んでいたことが分かる。
「やっぱり、人が住んでたんだね」
「そうみたいね」
リアは部屋の中を見回す。
「でも、家具とか食器は残ってるのに、服とか食べ物はほとんどないわね」
「引っ越したのかな?」
「確かに、そうかもしれないわね」
僕は棚に残っていた食器を眺める。割れているものが多い。
「それにしても、ずいぶん壊れてるね」
「そうね。時間が経って壊れたのかしら」
次に、焼け焦げた家に移動する。
「...ここら辺、火事になったのかな?」
「そうね...それにしてもかなり大規模な火災ね」
僕は少し不思議に思った。村全体が古くなっているのは分かる。
でも、どうしてこんなに焼けた家が多いんだろうか。
「もっと奥も見てみようか」
「掃除は?」
「...あとでやるよ」
「ショア」
「...」
「ちゃんと終わらせるのよ」
「分かってるって」
自分の中の好奇心が抑えられなくなってきている。僕たちは村の奥へ進んでいく。
しばらく歩くと、他の家よりも、ひときわ多くの焼け焦げた瓦礫が積み重なっている場所が見えてきた。
ここは崩壊が激しく、何の建物だったのか見当もつかない。
「ここはなんの建物だったんだろう?」
「さあ...?分からないわねコレじゃ」
瓦礫をかき分けると、一部が燃え残った紙が見つかった。
「これ、何か書いてあるよ」
僕は紙を拾い上げる。
ほとんどが焼けていて、文字も途切れている。
『我々は間違っ……』
「何だろう?」
紙に、別の文字が残っている。
『....必ず....』
「?」
リアが横から覗き込む。
「何か分かる?」
「ううん。これだけじゃ何も分からない」
僕は紙を裏返す。
そこにも何か書かれていたようだが、読み取れない。
「昔の人が書いた手紙かな?」
「そうかもしれないわね」
僕は紙を見つめる。
どうしてこんな場所に、こんなものが残っているんだろう。
「...この村、やっぱり何かあったのかな」
「さあ。でも、考えても分からないわ」
「そうだね」
僕は紙を元の場所に戻した。
「じゃあ、掃除に戻ろうか」
「最初からそうしてほしかったわ」
「...ごめん」
リアに呆れられながら、僕たちは瓦礫から離れる。
あれから2日かけて瓦礫の撤去を終えると、残っていた建物や道も少しずつ見えるようになる。
ショアは依頼書を確認する。
「これで全部かな?」
リアが周囲を見回す。
「たぶん。最初よりずっと綺麗になったわね」
そして依頼書に書かれた場所を確認。
「じゃあ、ギルドに戻って報告しよう」
ショアは貰った銅貨を日にかざし、目を輝かせる。
「40枚...!」
「それだけのために、こんなに頑張ったのね...」
「うん!」
僕は銅貨を握りしめる。これで貯金は九十枚を超えた。
「これで、カイを迎えに行ける」
「...」
リアは黙り込んでいる。だが、そう思うと、疲れも少しだけ吹き飛んだ気がした。
嬉しくなり、リアに銅貨を見せる。リアが数え終わると少し呆れている。
「ねえ、ショアどうやって帝都から村に帰るの」
僕は自信満々に答える。
「それは、ヨハネさんに帰りの馬車を出してもらうんだよ!」
リアが普通に怒った
「何言ってんのよ!あの時、馬車を出してもらうよりはいいでしょて話で教会に無料でご飯をいただいたじゃない。もう忘れちゃったの!」
「いや、でも...」
僕は銅貨を見る。
九十枚弱。確かに、村へ帰る分は足りない。
「あと少しなんだよね」
「少しって言っても、足りないものは足りないでしょ」
「...」
僕は黙り込む。
カイを早く迎えに行きたい。その感情で頭がいっぱいになっていた
リアの言葉を聞き少し頭が覚めた。
「じゃあ、もう少し依頼を受けよう」
「そうしましょう」
リアは少し安心したように頷いた。
「明日から、二人で頑張ればいいじゃない」
「うん!いや、明日は4人だね」
リアは不思議な顔をしていた。
翌日僕は掲示板を見る。
予想通り清掃の依頼がある
昨日ジルさんとバルドさんに声をかけていた。
ジルが話す
「これがショアが言っていた清掃依頼か」
バルドも続ける
「なるほど」
やっぱり2人を連れてきて正解だ、リアと僕だけだと運べなくて壊すしかなかったものが4人なら持てるし、そもそもの持ち運べる量が僕たちと違う。
それでも、サボるわけにはいかない。僕も精一杯運ぶ。片付けは一日で終わった。それから僕たちは、清掃の依頼を何度も繰り返した。
依頼を終えて、ギルドで報酬を受け取る。
僕は銅貨を一枚ずつ数えていく。
「やった!貯まったぞ150枚!」
「やったわねショア」
バルドは、僕たちを見て優しく微笑んでいる。
ジルは自分の事のように喜びながら話す。
「やったな!ショアよし!今日は飲みに行くか!」
「いや、やめときます」
「いつもそういうじゃねえかお前らなんでそんなに付き合いが悪いんだ?」
バルドが茶化す
「お前が暑苦しいのだろう」
「なにを!」
ジルが少し不機嫌になり、バルドを睨む
僕は慌てて手を振った。
「い、いえ決してそういう訳ではなく。僕たちが行くともしかしたら奢られてしまうかもしれないので」
ジルは理解ができない顔をする。
「...奢られるのが嫌なのか?」
「嫌というか...」
僕は少し考えてから答える。
「僕たち、自分たちでお金を貯めるって決めているので」
「それは知ってるが...」
ジルは首を傾げる。
「仲間なんだから、たまには俺が奢ったっていいだろ」
「でも...」
「ショア」
リアが僕の言葉を遮る。
「ジルさんが奢ってくれるって言ってるんだし、今日は150枚貯めた記念日だから甘えてもいいんじゃない?」
「リアまで...」
僕が困っていると、バルドが笑う。
「ショア、お前は少し考えすぎだ」
「そうかな?」
「人に頼ることと、人に甘えることは違う。今回の依頼だって、俺たちはお前たちに頼まれて手伝っただけだ」
「...」
「それに、俺たちも楽しかったぞ」
バルドがそう言うと、ジルも頷く。
「そうそう!それに四人でやった方が早かっただろ?」
「はい、それはそうですけど...」
「なら今日は気にするな!」
ジルさんが僕の肩を叩く。
「よし、決まりだ! 行くぞ!」
「え、ちょっと...!」
ジルさんに引っ張られ、僕は困った顔をする。
リアはそんな僕を見て笑っていた。
「ショア、今日は諦めなさい」
「...分かったよ」
僕はため息をつく。
でも、少しだけ嬉しかった。
村にいた頃を思い出す。こんなふうに誰かと一緒にお金を稼いだことはなかったが、家族と一緒に仕事を終え、ご飯を囲んでいたな。
僕は手の中の銅貨を見る。
これで150枚。
村へ帰るには十分な金額だ。
「...明日、村に帰ろう」
そう呟いた僕の言葉に、リアだけが少し黙り込む。。。




