オレ!
「オレ!冒険者になる!」
オレの言葉に、親は呆れていた。「またコイツ、変なこと言い出した」と言いたげな顔をしている。
「だから、オレは畑仕事しない。魔法や剣術の訓練をしないといけないからな!」
この言い分を聞いて、親はブチギレた。
「何バカなこと言ってんだ!」
「そんなことしてないで畑の手伝いして頂戴!」
オレの提案は受け入れられる筈もなく畑仕事に向かう。
畑仕事は、現代に生きていたオレには少し刺激が足りない。それに、朝が早過ぎる。もし時計があったらAM5:00とかだろう。
やはり、異世界に来たら冒険者になってたまたま王族や貴族を助けて可愛い女の子に囲まれるのが夢ってもんだろ
オレはそんな現状に満足できない。それに、年貢にも納得していない。
収穫時期になると、ここの領主が来て6割近く農作物を持っていく。江戸時代だって五公五民とか四公六民とか言われてたよな? それでも結構キツいって話だったはずだろ
6割は持ってき過ぎじゃないか、と親に聞いた。けど、そもそもここの土地は領主が村人に貸している土地らしい
なので食べれるだけでもありがたいそうだ。
オレからしたらただ搾取されているだけだと思うのだが...
一緒に畑仕事をしていた親が言ってきた
「明日から村にある教会で勉強してもらうからな」
「えっ...この世界、勉強あるの...」
あるんだな、勉強する場所。オレはないと勝手に思っていた。何故ならこの村には、貨幣概念はなく村人が物物交換をしている光景を何度も見てきたからである
「また、勉強すんのか...めんどくせぇ」
オレはうんざりしながら教会に入る。
教会の中は外から想像していたよりずっと明るかった。
天井にはいくつもの照明が取り付けられていて、昼間なのに室内は眩しいくらいだ。床は白く磨かれた石、あるいは白いタイルのように見える。天井もかなり高い。
「魔法で明かりをつけてるのか?」
まあ良いや、神父に案内された部屋へ向かう
そこには、並べられた長机と椅子があり、数人もう席に座っていた
「マジで学校みてえだな」
とりあえず近くの席に腰かける。すると向こうから話しかけてきた。
「僕の名前はショアって言うんだ」
こ、子供かどうやって会話しようか...。まあ、いいかいつもみたいにカイとして喋れば
「オレ様!の名前はカイ!よろしく」
自己紹介を聞いたショアという男の子は目を見開いて固まっている。
様は、まずかったか。流石に上からの物言いすぎるか...
「あ、いやその〜」
頭をフル回転させているオレに対しショアはクスクス笑っている
「なに?オレ様って(笑)」
子供の笑いのツボはよく分からんな。戸惑うオレに気づかずショアが続ける。
「僕たち友達になろうよ!」
「うっ、う〜ん。いいよ」
キラキラした瞳でショアは話す。その瞳を見て、オレはもう忘れちまった感情だな、と感傷に浸った。
友達になったところで、神父が入室する。
「はい皆さんおはようございます」
「おはよう、ございます!」
全員で合わせていう。
懐かしいという感情が爆発した。神父が話す。
「みなさん、今、私がおはようと言ったら、おはようと返しましたよね。今日はその勉強をします。まず初めに、皆さんにこれを配っていきます。」
ほう、なるほど普段使っている言葉の意味を教えていく授業か、予想より結構ちゃんとしてそうだ
神父が紙を配り始める。
下記の言葉がどの言語なのか、また、その言語での表記を記入しなさい。
『オハヨウ』
『グッドモーニング』
『グーテン・モルゲン』
『ボンジュール』
『ブエノス・ディアス』
『シェイシェイ』
『アニョンハセヨ』
オレは目を見開いた。日本語がある...
神父は続ける
「静かに!これはテストです。先に予習してる子は分かるんじゃないかな...?」
え...異世界の子供レベル高過ぎない...
オレはとりあえず、『日本語おはよう』と『英語Good morning』と書いた。それ以外は分からなかった。
「終わり。紙を裏向きにしてください。私が回収します」
ひと通り見終わり、神父が一言言った。
「皆さんあまり勉強してきてないですね。」
そうか、良かった。なんとか置いていかれる心配はなさそうだな。内心、胸を撫で下ろした。
そんな感じで、授業は進んでいった。
勉強をし始めて何ヶ月が経つ。
その間、ショアは毎日のように話しかけてきた。
案外、最初に身構えていたほど、勉強は難しくなかった。
簡単な計算や文字、言葉遣いなど、オレは前世の教育の賜物でテストでは、満点ばかり取っていた。
オレがショアの話を聞いていると、女の子が話しかけてきた。
「ねえ、あなた毎回満点なんて凄いね」
男の子はいいが、女の子は正直言って接し方が分からない。とりあえず無難に接しとくか...
「あ、ありがとう...えっと」
となりのショアが話す
「この子の名前はリアって言うんだよ」
「ど、どうも。よろしくリア」
「こちらこそよろしくね!えっと」
「こっちはカイって言うんだよ」
「分かったわ、カイ!友達になりましょ」
ショアがオレとリアの橋渡し的なポジションになっている。確かに部屋内の全員に話しかけてたもんなショアは
ちょっと陽キャ過ぎませんかね
まあ、オレも彼らと精神年齢が一緒だったら孤独を寂しいと感じて皆んなの輪の中に入ろうと考えただろうが、中身中年だと子供の考えていることは分からず、そもそも話しかけたくもない。
恐らくだが、ショアは孤独が苦手なのだろう。そういう、心理的作用がいまの行動につながっているのだろうな。まあ、ただ何も考えてないだけかもしれんが
ショアとリアを見ていると、子供は案外、大人をよく見ている。
オレのイメージだと、子供はいきなり突拍子もないことを言ったり、変な行動をして大人を困らせたりするもんだと思っていた。
オレの行動や発言も変えた方がいいのか?
う〜ん。悩ましい...。
しかも、まだ空気を読むのを間違えるため、たまに大人を困らせている場面もある。
非常に難しい。やはり天然には敵わない。演技のみだと埋められない溝があるな。
オレの親は「少し変わったやつ」程度に思っているから、子供の行動範囲内に入っているのかな?
もし、自分の子供が大人のような振る舞いをしていたら、気味が悪い。「本当に自分の子か?」とも考えるだろう。
この世界がどういう常識なのか分からず、普通に気味が悪いだけで殺される可能性もあったため仕方なく子供の振りをしている。
決して、最初の滑り出しのテンションを間違えて、異世界転生に舞い上がり過ぎたのが原因だとは考えたくはない。
次の日から、ショアとリアという二人と同じ机に座ることになった。
どうやら子供は一つ返事で友達になれるらしい。大人からするとかなり羨ましいな...
カイは、そんな村での日々を過ごしていく。




