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第二話〜剣人と優華

 そんなこんなで、転校生の美女との幸せ・・・・・というよりは、不思議な会話のひとときを終えた後、学校のチャイムと共に授業が始まった。

 俺は授業中、彼女のことがどうも気になってしまい、ついついチラチラと彼女の美貌を盗み見てしまう。たまに目が合うと、彼女はニコッと優しい笑顔を返してくれる。彼女の本性を知らなければなぁ、そんな風にため息を吐きつつ、俺は昼休みまで彼女を眺め続けた。


 うわ、俺気持ち悪。


「まお・・・・・桜助さん、私一緒に昼食を取る人がいなくて。良かったらご一緒しませんか?」

 弁当箱を片手に持ち、彼女は俺にそういった。別に俺じゃなくても、彼女を知らないクラスの生徒達なら、一緒に食べたいと手を上げる人はいくらでもいるだろうに。まさか、俺に気があるとか・・・・・・いや、そんなわけがない。何せ、こんな顔なんだから。逆に、なんで俺なんかと食べたがるのかが疑問だ。

「俺なんかじゃなくても別に良いだろ。お前と食べたがる奴は他に一杯いると思うぜ」

「桜助さんは、嫌ですか?」

「いや、別に嫌じゃねぇけどさ」

 クラスで浮いてる俺なんかと食べるよりは、これからの彼女の学校生活のことを考えると、一軍女子達とわいわい食べた方が、後々何かと都合が良いだろう。

「じゃあ、一緒に食べましょう」

「だから、俺なんかと食べない方がお前のためだって言ってんだよ」

なんて会話をしていると、その会話を聞きつけた勇人がどこからともなくさっと現れ、嬉しそうな顔でリーズさんを歓迎した。

「是非3人で一緒に食べよう、仲良く! ね、桜助!!」

 相変わらずお節介な奴だ。だが、俺はこいつのそういう所にずいぶん助けられてる。きっと、こいつはいつも一人になりがちな俺のために、リーズさんと俺を仲良くさせたいんだろう。

 全く、つくづく良い奴だ。

 俺は別だが、勇人と一緒なら別に大丈夫だろう。そう思い、俺は3人で弁当を食べることを承諾した。

「あ、ありがとうございます!!魔王様!!ぁ・・・・・」

「だからその呼び方辞めろって」

「あっははは、流石桜助」

「うるせぇ、笑うな!!」

 その日の昼飯は、なんだかいつもよりおいしかった気がする。でも、そんな楽しい時間は、あいつの登場と共に一瞬で消え去った。

「くくく、魔王って、お前転校生からも馬鹿にされてるとか流石だな」

 いかにも嫌な奴感を漂わせて登場したこの男の名前は、遊佐剣二。言ってしまえばクラスのカーストで一番高い奴だ。こいつの影響力の前では、流石の勇人もクラスの空気に成り下がる事しかできない。

 何せ、こいつは頭の中の倫理に関するネジがぶっ飛んでいる。遊びで暴力を振るう。学校中の女子をとっかえひっかえ。人が苦しんだり、悲しんだりしている様子を喜ぶような奴だ。俺のことを魔王と呼んで、周りから馬鹿にされるような空気を作ったのもこいつだ。

「ね、転校生も良くあんなブスとつるめるよね。あたしなら無理だわ。もしかしてB選って奴?」

現在の剣二の彼女、弓削優華。優華が彼女になってから、剣二は女子に手を出すのを辞めた。所謂本命の彼女という奴だ。だが残念な事に、優華も剣二が手をつけていた女をいじめ倒してその座についた(剣二はそのことを知らない)ので、結局剣二の残虐性が、性格の良い彼女によって強制されるというシナリオにはならない。

「おい、辞めろって、ブスとか本当のこと言ったら魔王が傷つくだろ?」

「ギャハハハハハ」

 なんて、二人は下品な高笑いを上げて、いつものように俺をからかってくる。こうなるから、リーズさんは俺と一緒に昼食を食べない方が良かったんだ。こうなったら、俺はもうほとぼりが冷めるまで、惨めな気分でじっとしているしかない。

「この二人は、どこまで……なんで言い返さないんですか?魔王様」

「そうするのが一番の得策なんだよ。これ以上酷い目に遭わないための」

リーズさんは、さっきのような、と言うより殺気のような恨みたっぷりの鋭い目つきで、二人を睨み付けている。

 俺のために、そんなに怒ってくれるのは正直嬉しかった。

だが、あいつらに目をつけられて、不登校になった生徒を何人も見てきた。

俺は、勇人がそれとなく守ってくれたおかげでなんとか学校に来てるが、あいつがいなかったら、俺は今ごろ家で異世界転生アニメでも見て、現実から目を背け続けていたことだろう。顔が怖くても、なんやかんや俺なんかと関わってくれたリーズさんが目をつけられるのは、何としても避けたい。ここは嫌だけど、俺が目立ってあいつらの注意を引くしかない。

「いやー、やっぱ転校生からも魔王って言われちゃったかー」

 俺は、無理矢理作った笑顔で、煮えたぎるような悔しい思いを抑え込み、涙をこらえ、プライドを全て捨て去る。

「は?何そのノリ。キモ」

「お前、調子乗ってんだろ」

 ああ、終わった。

 俺がそう確信した直後、剣二はゆっくりと俺の側に近寄ってくると、母親が作ってくれた俺の弁当を取って放り投げ、顎にアッパーを一発。

「ウェーイ」

「ぐあっ」

 席から立たされると、腹にパンチを一発。ももかつを一発。俺は抵抗も出来ず、情けなく地面に崩れ落ちた。

「なるほど。状況を察するに、やはり私はこの世界に早く来すぎたようですね」

 ぼそりと、彼女はそう独り言を言った。

 俺は彼女の中二病スイッチが入って、変な気でも起こすんじゃないかと不安になった。勇人もそれは感じていたようで、剣二達に目をつけられてる俺に変わって、彼女が何かを言い出す前に辞めるよう、勇人は忠告しようとした。

「リーズさん辞めた方が良い、あいつらに刃向かっても良い事なんかーー」

 勇人の奮闘(奮闘?)も虚しく、リーズさんは剣二たちに面と向かってたてついてしまった。

「まお・・・・・・桜助さんは、貴方たちよりよっぽど高貴で気高い素敵な方です。私に人間の外見の善し悪しは分かりませんが、私から見れば貴方達の方がよっぽど醜く見えます。人の容姿をあざ笑い暴力を振るう。いつまでもそんなくだらないことやっていないで、自分たちの内面の醜さを気にした方が良いのではありませんか?」

 ・・・・・・かっこ良かった。自分が情けなくなった。今まで、そんな風に面と向かって俺をかばってくれる人は誰もいなかった。勇人でさえ、そんなに表立って反論はしてくれない。俺も、こんな風にハッキリとものを言える男になりたいと、そう思った。

そして、自分が情けなくなった。

 剣二は言葉を発すること無く、リーズさんの胸ぐらを掴んでガンを飛ばす。

「あ?」

俺は・・・・・・俺の事を受け入れてくれたこの人の前で、いつまで情けなく這いつくばった姿をさらすんだ。今日こそは俺だって、やってやる!!


 俺は震える拳を握りしめ、油断した剣二の後に一発、アッパーのお返しをかました。


 かに見えたが、俺の拳は剣二の顎一センチ手前でつかまれて止められていた。

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