第二十六話~余波
両刃剣の落ちる先にいるルーメは、俺が彼女を助けることを知っているかのように、その場から一歩も動かなかった。
「くっ、全く」
何考えてんだか。信じてたとしても、逃げるくらいは一応しろよな。
まあ、良いんだけどさ。
俺はいとも簡単に両刃剣に追いついて手に取ると、遅れて俺に攻撃を仕掛けるメトスの渾身の一撃を防いだ。
「お前、結構しつこいなぁ!」
一撃を防ぎはしても、地面へと叩きつけようとするメトスに、空を飛ぶことができない俺は落下するばかりだ。そうならないよう、俺はすかさず足下に黒い魔法陣を作り出してえ、再び空に足をつく。
そして、両刃剣と接触した鎌ごと、メトスをメモントリの花園へと投げ飛ばす。
すると、メトスは頭からメモントリの花園に突っ込んでいった。
だが、土埃一つ上がっていない。そのはずなのに、メトスが落ちた場所だけ、メモントリの花は潰されている。
「頭から突っ込んだんだ、目も覚めるだろ。そろそろ正気に戻れよ」
地に伏せるメトスに向けて言い放つ。だが、メトスは機械のように何も言わずにゆっくりと立ち上がる。
「本当、俺を殺すまで止まるつもりないのかよ」
俺が再び剣を構える。
「メトス!!」
すると、先ほどまでメモントリの花園の囲いの外にあるベンチにいたルーメが、地に伏せるメトス側に歩み寄っていた。
あのベンチからメトスのところまで、数十mはあった筈。この一瞬に、一体どうやって移動したんだ。いや、お化けに対してそんなこと考えたって、意味ねーか。それより、あんな殺戮マシーンの側にいることの方が危険すぎる。
「おい!ルーメ!!危ねぇから離れろ!」
俺の叫びは、ルーメに届かない。いや、聞こえていないはずがない。それでも向かうのはきっと、メトスの為ならば、自分命を省みないからか。
直感的にそう気付いた俺は、急いでメトスとルーメの所へ空を蹴って突っ込んだ。
「メトス、目を覚まして。貴方はこんな死神じゃないでしょ?」
体を起こしたメトスの頬を撫で、慈愛の眼差しを向けるルーメ。
だが、そんなルーメに対し、メトスはその手に持つ大鎌を振り下ろした。
「くっ」
鎌の刃が、ルーメの体に接触する。そしてゆっくりと、刃はルーメの心臓へと進んでいく。
「やめろ!!」
だが、考えなしに突っ込んでいったのが駄目だった。
メトスは突っ込んでいく隙だらけの俺に目がけて、ルーメに突刺そうとしていた鎌で俺の胸に強烈な突きをお見舞いしようとした。
「くっ!」
間一髪で両刃剣でガードした物の、渾身のメトスの突きは俺を遙か彼方へと突き飛ばす。
「ぐぁっ!」
魔王の体になって初めてだ。こんな情けない声を上げたのは。余りの速度で体勢を立て直しきることができず、おまけに足じゃなく、頭から吹き飛ばされているから、魔法陣で地面を蹴ることもできない。いや、頭に出すことはできるんだろうけど、首がポッキリ行きそうだ。丈夫なこの体なら平気かも知れないが、もし駄目だったときに、こんな判断ミスで命が一つ消えるのはしょうもなさすぎる。
どうすれば、一瞬で頭に思考がよぎり、結論が出るより前に、俺はフローラル随一の高さを誇る時計とうの6の数字に突っ込んでいた。
ドゴーンと、とてつもない轟音と共に、時計塔のレンガが地面へと落ちていき、下にいる人々がパニックに陥る。
「あー、くそ」
頭のてっぺんの不快感に顔を歪めながら、直ぐさま立ち上がり、ぶち破った時計の6の数字からひょこっと俺が顔を出すと、メモントリの花園の方から死神が俺を追いかけてきており、俺の胸を目がけて鎌を振りかぶる。
「やべっ!」
同じように、俺は再び両刃剣を構えて胸を守ることしかできない。だが、メトスは振りかぶった鎌を振り下ろす事なく、俺の鎌に向けて強烈な蹴りを叩き込んだ。
「どぅわぁっ!」
両刃剣から伝わる、強烈な衝撃としびれ。気付くと俺は再びメトスに蹴り飛ばされたことで、時計塔を貫通。更にそのまま市街地へと突っ込んでいき、着地の衝撃で巨大なクレーターを作った。
「あー、痛って」
人の作った建造物と違って、あの威力で地面に叩きつけられると、流石に痛い。
「くそ、あいつ」
時計塔の方から、メトスは俺のことをじっと見つめている。
「中々やりきれない、結構やるな、くそ」
立ち上がり、ふと辺りを見回すと、数十mにも及ぶクレータに飲み込まれたいくつもの建物が、瓦礫とかしていた。
「ま・・・・・・じかよ」
今ので、何人死んだんだ?
直後、とてつもない轟音と共に俺の目に入ったのは、ポッキリと折れて倒れ行く時計塔を背に、こちらへ迫るメトスの姿。
下には逃げ惑う人々。時計塔が落ちれば、間違いなく彼らは下敷きになる。
「くそ!」
俺は、一瞬のうちに既に目前まで迫っていたメトスの一撃を間一髪で飛び上がって躱し、足下に黒の魔法陣を作って空を蹴り、倒れ行く時計塔へと向かった。
そして、時計塔の落下する軌道の途中で、慣性の法則で進む俺は、体勢を変えて、再び魔法陣で作った空の足場を踏ん張り停止。
とっさに両刃剣をその場で捨て、そのま、落ちた時計塔の先端を、両手で持ち上げる。
「ふんぬっ」
とてつもない重さだろうと、下っ腹に力を入れて気合いを入れたが、案外持ち上げて見るとそれほど重くもない。
魔王の体は、よっぽど怪力みたいだ。
上空から、人々がいなくなるの今か今か確認している最中、声が聞こえる。
「何あれ、魔物?」
「きゃー!!魔物よ!!」
気付くと、リーズによる俺の変身魔法は解け、姿は魔王ありのままの姿へ戻っていた。
皆が、畏怖の目を向けている。俺の、紫色の肌に。俺の、巨大な日本の角に。俺の、巨大な牙に。
「くそ、助けてやってんのに!」
メトスは無防備になった俺に、問答無用で襲いかかってくる。
まずい、まだ下の奴らの避難は完了してない。めちゃくちゃな方向に逃げ惑っていて大混乱。まともに逃げれないのかこいつらは。しまいには、腰を抜かしている奴らもいる始末。ここで時計塔を手放せば、間違いなく使者は増える。でも、俺が手放さなければ結局、胸を貫かれて命を失い、一瞬意識を失ってる間に、きっと時計塔は地面に落ちていく。
豪速でこちらへ向かってくるメトスを睨み付けながら、俺は叫ぶことしかできなかった。
「くそ、くそー!!」
だが直後、メトスの目の前にピンクの魔法陣が現われる、だがメトスはその魔法陣を意に返さずに通り抜け、俺の元へと向かってくる。
あと少し、あと少しで時計塔が下ろせそうなのに、このままじゃ間に合わない!
メトスは鎌を振りかぶり、俺目がけて振り下ろした。
くそ、こんな所でまた命一個無駄遣いかよ!
前にコメントが楽しみと言われたことを思い出したので、これからは後書きに何かしら書こうと思うのですが、後書きあると世界観に浸れないと思う方もいらっしゃると思いますし、こういうのはどちらがええんでしょう・・・・・・っていう後書き。




